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第二話 修行から、依頼

翌日。

やっとのこと特訓が終わった。瀬乃華は常時鍛えていたから数時間で終わって問題なかったが、仙子が問題だった。


お祓い某に掛けてもらった魔法は、回復とバリアを張ることができるようになるものとのこと。


これもRPGなどでよく見かける魔法を使うことと同じらしくマジックポイント(略してMP)がどれだけあるかなど調べられた。仙子にはMPは少しあるらしい。

手取り足取り鍛え上げられた。とにかく訓練、訓練、特訓、特訓、修行、修行!と、いう感じでヘトヘトになるまで動いたりした。

MPは少し上がり、秒単位で少しずつMPが減っていっても三分は持つぐらいになった。


体力も頑張って鍛えた。

体力がない理由としては学校にもまともに行ってない家ではとにかく巫女の仕事、終わったらすぐに原稿を描いて、学校の課題を終わらせる、そしてまた原稿を描き始めるというなんともハードな一日を過ごして、休む時間といえば、睡眠をする時間ぐらいだった。


そんなこんなで、朝になるまでやってた。


ついでにもう一つ、瀬乃華のことを言えば、人間なのに人間を超えた身体能力があった。光並みの早さに、ロールが地の魔法で作り出した壁も超丸男(まるお)兄弟みたいな壁キックで易々と登った。


「よしっ!ま、こんなものだろ。もっと頑張ったら回復とバリア以外にも魔法使えるようにしてやるし、強化もするからな!」

「異世界に来たらまず身体能力を確かめるのも基本ですよね!」


ヘトヘトで眠そうな仙子に対しロールはまだまだ元気だ。勢いのいい声が銭子を励ます。瀬乃華は楽しそうだった。

中に入る。二人を引っ張ろうとする(やから)を蹴散らす。怖い眼差しと圧倒的威圧、さらに可愛い印象に似合わない言動をして、なんとか満席から二つ席を空け二人を座らせる。


「それじゃ、早速請けてもらいたい依頼がある」


ロールは指を鳴らす。すると、テーブルに紙が貼られた丸い板が置かれる。

仙子この板に見覚えがあった。


「あれ?これって、品運ぶ台じゃないですか?」


仙子の言葉にロールは目を見開き驚く。瀬乃華は、よく観察してるなぁと会話を聞きながら周囲の見慣れない人物たちを観察して思った事を心の中でまとめていた。


「いや……あの……なんていうか……」


次に他客の声もあって頑張って聞き耳を立てないといけないほど小さな声で「台が足りなくて……」と聞こえる。


「ま、まぁ、とにかく受けてもらいたいのはこれだ。読み終わったら裏も見ておけよ」


無理矢理話題を変えると、すぐに厨房の方に行って料理人を手伝いに行ってしまった。

瀬乃華は周りを見ていたこともあり視界にロールが目に入り、顔は恥ずかしそうにしていたことに気がつく。二人は紙に書かれた内容に目を通す。


それで、以下依頼内容です。

実は私あのモンスターがうじゃうじゃいるというミル峠で人間が迷わないようにするという仕事をしてるんです。万が一入ってしまったら私も入ってなんとか助け出すんです。

最近、ミル峠に入ってしまい、いざ行こうと思えば丁度入り口付近にゴブリンの群れが巣を作ってしまい、ゴブリンがなかなか通してくれないんです。それで巣を潰しに行こうと思えば、戦闘に気がついた強力なモンスターが来てしまいそれで撤退するしかないんです。大人数で行くのが問題だと思うのですが、そうでもしないと巣を潰すというのは難しくて。

まずはゴブリンの巣を潰そうと思うので、こんな依頼を受けてくれる人ははなかなかいないと思いますが、一番近い酒場の常連冒険者さんに、この依頼をお願いします。


瀬乃華は板をひっくり返す。すると、こんな内容が書かれていた。


サナ・マーハーヨーギン

性別 女

職業 騎士

種族 ?


「種族のところがなんかハテナマークになってる」


と銭子は純粋に思った言葉を口に出す。が、瀬乃華は。


「何だか面白そうじゃん、このままにしとこ?」


と言い、微笑みを見せた。

少々もやもやするところもあるが、早速二人は荷物作りに取り掛かった。


☆★☆★☆★


荷物はとりあえず着替えと武器だけ。ロール曰く「依頼主がキャンプセットと食べ物を出すのが礼儀」らしい。

二人は多いような少ないようなの荷物を持ち、現代でいうタクシー乗り場、異世界でいう馬車乗り場に行く。そこまではロールもついてきてくれた。


「それじゃ、行ってきな」


馬車の荷台に乗り馬車が出発する。ロールは最後まで見届けてくれていて、二人はなんだか安心感が湧いてくる。

目的地はミル峠近くにあるローゼン崖の下にある村。そこにサナは住んでいるらしい。

馬車で半日程らしいので、着くのは早くてもになるんだとか。


その間、瀬乃華は今までのことをネタ帳にまとめた。異世界に到着した時の感想、酒場で修行をしてみた感想。最後にこれをどんなネタに使えるかという案だ。仙子は瀬乃華がどんなネタにできるかという案を出す手伝い。


「仙子ちゃん、この異世界を出たらどうしよ?」

「うーん、私の予想だと、テレビとかで話題になるだろうな。そしてインタビューが絶えなくて…最終的にはまた仕事かな」

「えっと…それを見通すと、異世界でも現実世界の生活リズムをしないとね」


一通り書き終えると瀬乃華は『小説家の心得』という自分で作った、自分の小説の書き方を簡単にまとめた文のようなものを心の中で思い出す。


(一つ、情報収集は絶対、一つ、体験をしたらそのことをまとめる。一つ、文をデタラメに書かない。一つ、見直しは十回)

「瀬乃華ちゃんの小説家の心得って、少しだけ改良したら漫画家にも使えるよね」


仙子が瀬乃華の顔をじっと見つめていた。何を思っていたのかわかったのだ。

幼馴染の瀬乃華と銭子はお互い、状況と表情を見れば大抵何を考えているか分かる。


例えば今だって、今の状況は暇で暇でしょうがない時だ。そしてさっき瀬乃華の心得の一つ、『体験したらそのことをまとめる』をした。最後に表情、一見真剣な表情。その表情の細部を見ると、上を向き、眉を潜め、口が上がっている。だがなぜテンションの高い低いが激しいのかは未だにわからない。


ガタンッ!

そんな音がした。刹那、馬の鳴き声が大きく響く。


「あはははは!ほらほら、さっさと荷物全部よこしな!」


女の声が次に響いた。二人は急いで馬車を降りる。場所はただの平原だ。

そこには二人の男女がいた。


なぜか二人とも現代の人のような格好をしていた。

さっき運転手に声をかけたと思われるのは、綺麗な黒髪で、現代の服が特徴的な女の人。

そしてもう一人、ボサボサの髪で同じく現代の服が特徴的な男の人。


「り、リリスじゃねえか!俺の……」

「あーらら、やっぱり西洋のこんなところにまで知れ渡ってるかー」


リリスと呼ばれた女はそう呟いた。運転手の男性は「俺の」というところまでしか言わずに言葉を止める。


「しょうがないしょうがない。ん?」


もう一人の男は瀬乃華と仙子に目を向ける。二人は見られた途端、警戒心を強くした。相手は驚いた顔をしている。


「ねぇ、今回は撤退しない?」

「え?」


リリスも二人の方を向くと、納得した顔をする。


「あー。そうだね、撤退しよっか」


リリスと隣の男は平原を走りに走ってどこかに過ぎ去っていった。


安堵して馬車の中に戻ると、運転手の「ありがとう」という声が聞こえた。

二人は嬉しそうに微笑んでから、仙子は寝始めて、瀬乃華はその見張り的なことを始めた。


☆★☆★☆★


馬車は再び走り出した。

だが、その馬車をさっきの男女と、もう二人の男女が見ていた。


「それは、大変だったね。"『青』と『白』"が何も知らないで異世界転移っていう話は本当だったとは」


落ち着いた表情の少年は言う。


「……本当……?"『青』と『白』"が……」


糸目で猫耳がある少女は言う。


「それもそれでいいけど、本来の目的忘れてないわよね?」


リリスと呼ばれた黒髪の女の人は言った。


「おっと、これはこれは、三合会(トライアド)幹部様?」


挑発するように、リリスの隣にいた髪がボサボサの男の人は言う。


「死にたい?ま、さっさといくわよ。私たちの名に恥じない完全完璧怪盗テクニック」


そのリリスの言葉を後にして、四人はその場を後にした。

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