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第十七話 再開した姉妹

ゴールデンウィーク最終日。明日はテスト。もうやだ。

瀬乃華はその声はどこか懐かしいと感じる。でも思い出せる声とは少し違う。こう、少し低くなってる。

銭子はその人物の方へ向かうが、瀬乃華は立ち止まっていた。


「おい。瀬乃華。何ボヤッとしている」


階段の上の、声からして少女は少しだけ奥に進んでいる。呼ばれてハッと思い、足を前に進める。

……モヤモヤする。心が、モヤモヤする。思い出さなきゃいけないと思う。今、考えることと考えることを放置するのと、天秤にかけている。お願いです神様。どちらの選択をしたらいいのか教えてください。

階段を上がった時には、既に彼女は数メートル先に居て、後ろ姿しか見えない。


ビッグテール。結んでいるのはゴムではなく片方から片方へ後ろで垂れている白のリボン。背中が開いて、その代わりに三つの黄色の紐が編まれている。そしてふんわりとした、先のにレースが付いている黄色に模様があるワンピース。腕には金の腕輪がいくつか。足には何もない、裸足。


腕輪が、一歩進める度ジャラジャラと音を立てて静かな通路を騒がしくする。

埃や蜘蛛の巣がこの廊下を進む。灯はロウソクのみ。少々不気味に思える。暫し進むと、何やら声が聞こえる。歓声と、笑い声が主にある。

ここは何なのか?それは入って見なければわからない。

少女は止まった。扉が右にある場所で。振り返らずに、言葉を告げる。


「この部屋の先が、お前達の行くところ。私はこの先の部屋に行く。瀬乃華、来たいなら来い」


結局顔を見せないまま少女は行ってしまう。が、瀬乃華はここでついていかなければ、と思い銭子に言う。


「ねぇ銭子ちゃん。私、あの子の方に行く」


銭子は頷くと、扉に入って行く。瀬乃華は、扉に入っていったのを確認してから走って少女の後ろをついて行く。走って行くと、一つの扉に少女が入って行くのが見える。正確的には、見えた時には手だけ見える。


☆★☆★☆★


銭子が入った扉。そこはカジノだった。人々が喜び、泣き、怒り、歓声を上げたり、様々な人がいる。


「あ……え……?」


ギャンブル、とは聞いていた。でもまだ十二の銭子にはギャンブルというものは刺激が強すぎた。

その中に、髪型と目だけ見覚えのある人物が一人。


「イアイメさん、また勝ちましたね」


お淑やかでゆっくりとした声は言った。イアイメ?そう、心の中で思う。聞き覚えがある。


「ありがとう、美麗。おや、そこに居るのは」


見覚えがあるその人物は、完全に浮いて居る銭子を見る。それとともに注目が集まり、数秒の沈黙の後銭子に対する言葉が溢れてくる。


「おや、イアイメさんにお客さんですね」


美麗、と呼ばれたお淑やかでゆっくりな声の女性。イアイメと呼ばれた見覚えのある人物は手招きする。一歩、また一歩と驚愕しながら進む。いや、まさか、あなたは……。


「久しぶり。銭子。私のギャンブル場にようこそ」


セミロングの髪に、茶色の黒ずくめ。ダイアモンドのネックレスを首に下げて、胸部分に透き通った黄色の布のリボン。半袖、幅が狭いロングスカート黒いワンピース。腰ほどから白黒のマントが垂れて、床に着いている。すみれ色のハイヒール。足首に輪が三つ巻かれている。頭に小さな鎖がある。


「ち、違う、そうじゃない」

「何動揺してるの。私は私。わかるでしょ?」


一歩近づいてくる。


「違うよ。絶対、そう、絶対違う!」

「じゃあ確認しよ?」


また一歩近づいて。

……怖い。


「来ないで……」

「もう中学生だから怖がらないの」


また一歩。また一歩と。そして銭子は後ずさり。

……怖い、怖い。


「さすがにいじめすぎたね」


イアイメは笑う。その様子を見て銭子は胸を撫で下ろす。でも、イアイメが次に言い放った言葉に銭子は絶望する。


「まぁ、私は生前咲子だったのは事実だけど」


絶望のどん底に引き戻された気分。家宮咲子(いえみやさきこ)。銭子の実姉であり、銭子の誕生日が近いある日、買い物に行く途中銭子を庇い車に轢かれて死んだ。

自分の耳を疑った。そんなことあるはずないと。自分に言い聞かせる。お姉ちゃんの訳無いと。


「いいよ、その驚いてる表情好き。私はイアイメ。このギャンブル場の王者だよ」


……あぁ、そうだ。思い出した。夢の中でこの時の下準備をさせられたんだ。そこの美麗って人に。


「挑戦、してみる?」


威圧がかかった言葉。あぁ、また恐怖が込み上げてくる。こんな時前向きな瀬乃華ちゃんならどうしていたのだろう。


「やってやるってんですよ!」


そんな荒い声が遠くから聞こえるような気がする。あぁ、そうか。私と違って勇気があるんだな、瀬乃華ちゃんは。

でも、自分が出した決断は__。


「やらない」


やる、と言える程の勇気は全く無い。あぁ、なんて私は惨めで愚かなんだろう。漫画だったら瀬乃華ちゃんに勇気付けられて「やる」って言う展開になるけど、『現実は非情』なんだ。そんなことあるわけない。


「いいんだよ。そうやって勇気が無い言葉も好き。ふふっあははっあはははは!」


お姉ちゃん__イアイメの笑い声がギャンブル場に響く。恥ずかしさが、ある。


☆★☆★☆★


続けて扉に入ると、そこは、現代で言うならばクラブのような場所。少女を探す。居た、舞台の上。

目を丸くして、呆然とする。黒ずくめの目。そう。目を見て確信した。彼女は私の妹。人を殺してから自分も自殺した少女。桜井麗(さくらいうらら)。階段のところで妹かと疑ったが、まさか本当だったとは。いや、そっくりさんか?世界には三人そっくりさんがいると言われているから。いいや、違う。確信できる。だってそっくりさんだって自分に言い聞かせてもその確信は消えないから。


「瀬乃華。私が分かるか。昔、私をいじめてた奴を殺し、警察に捕まるのが怖くなり自殺した私のことを」


口調も違う。全部違う。いや、髪型と目だけは同じ。その言葉は瀬乃華の心を貫く。こんな形での再会だなんて、嫌だった。


「昔は麗と言ったな。だが今は違う。今は『アル』という名前なのだ。この名前はららのアールから取ってアルだ。我ながらかなりのネーミングセンスだと思う。瀬乃華の意見が聞きたい」


所々表情を変えながら喋る。これも麗の性格。


「あれから全くの相変わらずのネーミングセンスだと思う」


横からいつも「こんなキャラ名はどう?」と言っていたっけ。懐かしいなぁ。


「ふむ。あれから全くか。もう二年も経っているのだ、もっと磨かねばな」


アルは言葉を続ける。


「しかし、ここで華麗なる踊りを身につけた。だから私はここで踊り子をしている」


客たちの話し声がする中、アルは日本の舞のようなものを踊る。十秒、三十秒、一分、三分と経ち、十分程

経ち一切終わる気配がなかったその踊りも終わる。観客達は歓声を送る。凄い。私が小説家として輝いている時、麗__アルは踊りで輝いていたのか。


「凄いね。アル。私にはできない」

「そうだろう。だが、踊りよりも皆が楽しみにしていることがある」


舞台の光が強くなり、客達がいる場所を照らすスポットライトは消える。舞台に運ばれてきたのは……。


「これから今日のメインイベント、裏切り者ロール・ヴァルナの身体を賭けた勝負をしてもらう。戦闘をしたいのは誰だ」


身体がボロボロになり、服はボロの布切れのスカートのワンピースとなったロール・ヴァルナ。

客達は一斉に手を挙げる。


「瀬乃華。お前もやるか!」


瀬乃華は、思い切り息を吸って。


「やってやるってんですよ!」


荒い声でそう言った。負けるかもしれないけど。せめてもの努力はしたいのだ。

誤字脱字等ありましたら指摘お願いします。

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