第九話 国に集まる者共
大変申し訳ございませんでしたああああああああああ!
外に向かう時、二人はジャスミンの隣に「中心部分にある白と黒のチェック柄の取っ手の上と下にトパーズが巻かれるようにつけられている、そして一番上のところには大きなダイアモンドが金に捕らえられたように飾ってあって、一番下にはルビーとサファイアが一つの宝石のような形に左右につけられてエメラルドに捕まったかのように飾ってある、取っ手からダイアモンドやルビーとサファイアの間に透明な宝石がつけられている、あのフェスティバルなどで使用されるステッキのようなもの」が、浮いていることが見てわかった。
街はすでに大騒ぎだった。
次々と家屋が破壊されていく。
そしてやっと見えたその姿は、瀬乃華と城に入る時にぶつかったあの少女だった。
騎士達が抑えようとしても簡単に飛ばされていく。
城に近い所にあった家を破壊した時、呆然としていたジャスミンを見上げてきた。
「リナリオ…!こんな馬鹿げた真似、お辞めなさい!」
ジャスミンが言った瞬間に瀬乃華は古いと感じた城の壁を蹴ってリナリオの方に飛んだ、クナイを持って。
そして目を瞑りながら思いっきりリナリオに刺した。でも違和感を感じた。そっと目を開ける。
瀬乃華が刺したともいい違いのは、モップの毛と毛の間、つまりは掃除道具の先の分け目を刺した。
「あぁ、そういえば掃除が好きとか言ってた気がする」
ジャスミンの言葉を思い出しながら瀬乃華は呟いた。
「目を瞑らなかったら出来たかもしれないのに、ビビりだなぁ」
なんて言いながら、いつの間にかリナリオは銭子の後ろにいた。
慌てて銭子は『ファイアー』と言い、魔法を繰り出しす。それは火の玉がゆっくりと相手に近づき、当たったところで一気に燃え上がる技。でもそれも竹箒が燃えただけだった。竹箒は灰になった。
やはりこれくらいの初級魔法はダメかとため息をつく銭子。
「ふん。あの暗殺者の使い手もここまでか。そんなじゃ、俺も飽きるぜ」
次はジャスミンの目の前にいつのまにかいる。
騎士が駆けつけて来た。リナリオは数歩歩いてジャスミンから離れる。ジャスミンはすぐに避難するよう言われたが、それを必死に否定している。
「リナリオには私がいなければならないのです!」
「……」
騎士たちの説得とジャスミンの言葉。
瀬乃華は、リナリオはその言葉に動揺したような気がした。
その隙を見逃さずに瀬乃華は、今度はちゃんと目を開いてクナイで刺した。見事に腹部を刺して、抉った。リナリオは後方に飛んで下がった、その時瀬乃華はクナイをしっかり握っていて、出す時にも上下に動かす。当然、動かしたことで腹部には激痛が走った。その時リナリオは舌打ちをする。
「いてぇなぁ……何すんだよ」
無理やりクナイから離れたリナリオは、特に苦痛の表情を見せることなく言ってくる。
「だったら大人しくけい…じゃない、法律取り締まり騎士に捕まれってんですよ!」
「誰がそんなふざけたことを!」
そんな会話をしていると、突然ジャスミンが瀬乃華の前に出る。
「私が、リナリオに報いを与えます。お下がりください」
その言葉は禁忌だったのかもしれない。
騎士達も否定の声を上げている。
それでもジャスミンは二人が外に出る時に見たステッキを持って、上空に回転させながら投げた。
城から出て左にいる瀬乃華にとって、右にダイアモンド、左にルビーとサファイアという位置で空中に止まった。
「鉱石攻撃魔法【奥深くの魔石】!」
そう言った瞬間に、取っ手からダイアモンドやルビーとサファイアの間にある透明な宝石が少しだけ光を放ち、リナリオが立っている地面からダイアモンド、金、サファイア、ルビーなど多くの鉱石が一つの小さな山になって突き出て来た。
が、天辺にはリナリオではなく雑巾が少しだけ中心を貫通してあるだけ。
「【自然四姉妹が使う魔法】か。この世界で今のところ使えるのはブリチェスターの女王だけって言われてるんだよな」
自然四姉妹が使う魔法という言葉は、とても二人にはわからない。
ステッキは再びジャスミンの手に戻る。
リナリオはジャスミンの目の前に立っていて、ここからお互い睨み合いがしばらく続いた。銭子はすぐにわかる、これは民を逃がすための時間稼ぎだ。
ジャスミンは民が逃げたことを確認してから、二人に言う。
「少し、もう少し、時間を稼いではくれないでしょうか」
迷うことなく了承した二人はリナリオに襲いかかる。
まずリナリオはモップで銭子に殴りかかる。
銭子はその攻撃を受けて後ろに飛んだ、でもすぐさま瀬乃華が後ろに回り支えたため衝撃は少なかった。
次に瀬乃華はリナリオに向かってクナイを三つ投げる。
それもまた竹箒の持つ所に綺麗に刺さり倒れた。
さらに次には銭子が動く。『ウォーター』と言うと、お祓い棒の三センチ程前ぐらいから勢い良く水の粒が銃弾のように飛び出して来た。
それはリナリオの方に向かう。が、またもや雑巾で防がれてしまった。
突然ジャスミンは、今度はダイアモンドが先端の方が上になって止まった。そして、また叫んだ。
「植物攻撃魔法【ツタの中の水晶】!」
すると、ガラスかと思えるほど透明で綺麗なツタがリナリオに向かって伸びた。
リナリオはその攻撃を避けたり防いだりすることは無い。呆然と立ち尽くしている。
当然、当たって、腕の部分を刺した。ジャスミンはリナリオにゆっくり近づき、腕を上げるとステッキを自分の手に戻す。そしてステッキを上げていないのにこう言った。
「自然特殊魔法【親亡き子の神】」
ジャスミンとリナリオを、まず大きく伸びた雑草が覆った。次に、そこから所々に鉱石が現れて、最後には煙と言えばいいのか、雲と言えばいいのか、そんなのが結界のように覆う。
一斉に騎士達が騒ぎ始めた。女王様、女王様、と。
☆★☆★☆★
「きゃはっ、きゃはは、ふふ……いいねぇ。久しぶりに仕事がしたい……!たとえ神でなくても仕事がしたい……!」
ここは国の入り口。
国から逃げ出して行く民達とは逆に国に入ろうとしている少女がいる。その少女は、小声で笑い、想像を膨らませ、騎士達にも怪しまれる。いや、既にこの少女は怪しいということは気づかれている。
少女は行く手を阻まれた。槍や剣などを向けられている。
「騎士さん、この先に行かせてくれないなら……放つよー?異臭」
「辞めるのです!皆さん死んでしまうのですー!」
中から一人の少女が現れる。赤のかかった金髪のおかっぱの髪で、水色のハイライトの小さい目、金の模様がある青のワンピース、そして裸足。
「あぁ、同僚のミミックさん!」
入ろうとして居た少女はミミックと呼ばれた少女が現れたことに歓喜するが、
「今はそんな話じゃないです!協力するです!」
槍などを向けられてしまう。入ろうとして居た少女はむっとした顔になった。
「まだ新手が来るのです!小鳥さん達がそう言うです!」
必死に協力を要請するミミック。
「わかりましたー……今回だけですよ?」
しぶしぶとそういうと、騎士達も槍などを向けるのをやめ、二人の少女は国の中に入って行く。それに続いていくように、突如現れた一人の少女が中に入っていた。
「行動を再開します」
虚ろな目をした少女は機械のような声。いや、機械そのものの声。
騎士達は気が付いていないのだろうか、もしくは見てない、聞いてないフリでもしたのか、その続いて入って行った少女に気がつかなかった。
国には他にも様々な者が集まっている。それを知る由など瀬乃華と銭子にはない。
だって……二人は今、とても恐怖しているから。
瀬乃華は急いで銭子の方に行き、二人は手を繋いだ。
空は快晴なのに、地面には水が張っている。それは二人の足が丁度浸かる程の高さ。国の門も閉じられていた。少し目を逸らすと、柵から外には水が出ていない。なんで、と思う。当然の反応だが。
そこから霧が出てくる。
騎士達や、ジャスミンとリナリオを覆っている結界が見えなくなる程だ。
二人は手を握っている程近い位置にいるためお互いを見失うことはなかった。数十秒、じっとしてして待っていた。そして晴れた時には。
そこは穴の中だった。違う、国ごと穴に入って来て、空なんて見えなくて、騎士達なんていなくて、でも二人を覆っている結界はあった。
手を繋いだまま、銭子は城の大広間の所に入ってった。中は水は遣っていない。開いていた大きな扉がガタンという音を立てて閉まる。そして徐々に水が溜まって行って、外と同じ程溜まった。
「これは厄介ですね。水の中では動きが鈍ります」
そんな声が聞こえて、声がした方向を向く。階段を上がった踊り場のような場所にいたその少女。
機械のような声をしている。
先程虚ろな目をして国に入って来た一人の少女のことだ。




