第1話「謎の生物だニャン!」
じりじりと地面からの熱で頭がぼーっとする。
父親である先代の魔王の仇を討つため、異世界に飛ばされた俺ーールイスは新しく新魔王軍団を結成した。
手始めにゴミ拾いをすることにした俺は己の存在の変化に慣れなかった。
今まで二足歩行だったのが四足になり、手が使えないのがとても不自由だ。
捨てられている知らないパッケージの空き缶を器用に口に咥える。
鼻を捻じ曲げるように臭い匂いに、俺は思わず吐き気を覚えた。
…く、糞う…父上から刷り込まれたせいで身体が勝手に動いてしまう…
ゴミを見つけるとわなわなと身体が震え、足が勝手に動いてしまう。
「くそー!フェニックスの野郎はどこに行ったんだニャン!」
側近のフェニックスは今朝方から見えない。ま、まさか新手の敵に…?!
ヤバイ、助けに行かなーーー
「王子!ニュースですよニュース!」
「うニャぁぁぁぁあぁぁあああ?!?!?!」
突然後ろから喋りかけられ、俺は思わず跳び上がった。フェニックスは何事ですか王子!まさか敵ですか!とか間抜けなことを言うからパンチを食らわしてやった。
こいつ、魔族の中では父上を除いてなら1、2を争う強さを誇っているのに…どこか間抜けなとこがあるんだよなぁ…
俺は目を回しているコロコロとした小さな鳥を睨む。
フェニックスはその目を気にせず、つらつらと話し始めた。
「どうやら僕たち、この異世界の動物に姿形が変わっているらしいです」
「ほうほうニャン」
抜けた所があるわりには、ちゃんとした情報収集はできるらしい。
なんで知っているのか?と聞けば、どうやらフェニックスと同じ姿のものがいたらしい。
話してみるといろいろ有益な情報を得られたそうだ。
「まず、王子は"ネコ"という動物です」
「ネコ…ニャン?」
「左様でございます。その語尾のニャンも、ネコの特徴だとかなんとか」
ネコ…聞いたことのない動物だ。人間の住む村にいたのかもしれないが、あいにく俺にはわからん。
「僕は"スズメ"と呼ばれる鳥類だそうです。結構同じ姿の仲間がたくさんいましたよ」
スズメ…?なんだそれは。
本当にここは、異世界なんだなぁ…
しみじみと考えている…すると身体が急に軽くなった。
目線がいきなり高くなる。
は?は?は?え?なに、なんだ?
「可愛いー!黒ネコだぁー!」
俺はバッと振り返る。
それはとても大きな存在だった。
軽々と持ち上げられ、地面から浮かされる。俺は冷や汗がぶわぶわと噴き出すのを感じた。
「ル、ルイス王子ーーー!!」
下からぴーぴーと叫ぶフェニックスの声がする。
見た目は、俺たちが住んでいた世界グリオナにいた人間に姿形はそっくりだ。ただ大きさが違う。こんな人間は見たことない。
「ねえねえ、私と遊ぼう!」
にこにこと笑う謎の生物の腕の中で暴れる…やっとの思いで逃げ出し、地面にきれいに着地する。
そして俺はそのまま血相を変えて足がもたつきながらも走った。
フェニックスもパタパタと俺の頭上を飛んだ。
高い壁に囲まれた道を駆け抜ける。
どうやらあの生物は追ってこないらしい…俺ははぁぁと長く息を吐いた。
「おい、なんだあの生物…」
「あれは王子のよく知る"人間"ですよ。」
「はぁあ?!あんなデカイ人間がいてたまるか!」
俺はブチ切れ、フェニックスに詰め寄る。
「残念ながら王子、僕らが変えられている動物は小動物と呼ばれる種類で…僕らが小さくなっているのです」
「なん…だ、と…」
今までの世界とは180度違う世界に、俺は既に疲労していた。
まさかただの人間があんなに恐ろしく見えるなんて…
すこし自信をなくす自分がいた。
これは一刻も早く仲間を見つけ、この世界の対策を考えなければ…どうにも耐えられない。
「よし、周りに気を配りながら人間の集まる場所に行ってみよう。何か有益な情報が得られるかもしれん」
「了解です、王子!」
俺は歩幅の小さな足でトコトコ歩き始めた。