知っている
知っているようで知らない人に連れられ改札を出た私は、そのまま駅前にある服屋へと連れ込まれた。
私はなにが起こっているのかまだ頭の整理がつけられず正にされるがままとなっていた。
「ここでちょっと待ってろ」
返事をする間もなく試着室に押し込まれる。
なにをするのかすら分からないほど、私の脳内は先程の光景に支配されていた。
「ほらこれ」
「え、なに…」
手渡されたのは白いブラウス。
装飾や柄などはなく至ってシンプルなものだった。
「なにって、着替えろ。そのままじゃ出歩けないだろ」
その言葉で思い出した。そう、私の制服はさっきの人のおかげで所々に血痕が赤々と染み付いてしまっていたのだった。
「…うん」
小さく頷いて試着室のカーテンを閉める。
脱いで見て改めて分かったけど、正直これはひどい。セーラー服の特徴とも言える大きな襟には色こそ目立たないがしっとりと濡れていて、そのしたの白い布地にはまだ乾かない血がべったりとついていた。
確かにこれはこのまま着続けるのは無理だね。
渡されたブラウスに袖を通すし、ボタンを留める。裾はスカートにはしまわない方がいいだろう。汚れてしまったセーラー服は鞄の中に入っていたビニール袋に入れ鞄にしまった。これで大丈夫だろう。
そっと試着室のカーテンを開ける。そこで初めて見た知っているようで知らない人の全体像。
「あ…」
声に聞き覚えがあるわけが理解できた。知っているようで知らない人は、私のクラスメイトだった。