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友達になってほしいんだ!

 次の休憩時間、誰もが上田にかかわろうとしない中、一人の男子生徒が上田に近づくと、軽く背中をポンと叩いた。


 「よっ!転校生。

 元気ないやん。

 まぁ、色々あるやろうけど、元気出さななぁ」


 その男子生徒はそう言うと、上田ににこやかに笑った。


 「ありがとう」


 心がくじけそうなところに、その言葉。上田は自分の事をそう言ってくれるクラスメートがいた事に、すごくうれしくなり少し涙腺が緩みかけたが、そこをぐっとこらえて、微笑み返した。

 その男子生徒は上田に微笑むと、片手をあげて教室を出て行った。


 もう少し話をしたい。

 友達になりたい。


 そう思った上田が、その男子生徒の後を追おうと、慌てて席を立つ。

 教室を出た廊下には多くの生徒たちが行きかっていて、さっきの男子生徒はいくらか前を歩いている。

 廊下の生徒たちの間を縫って、上田が走る。

 廊下を走る上田に、すれ違う生徒たちの中にはしかめっ面で、上田の姿を見る生徒たちもいる。


 「ぷっ」

 「見ろよ」

 「見て、見て」


 上田の背後でそんな嘲笑する声がしていたが、上田は聞こえていない。


 「なぁ、君。

 名前教えてくれない」


 目的の男子生徒に追いついた上田が、その生徒の前に回り込んで言った。


 「俺?

 なんで?」


 その返事を一瞬、上田は意外と受け取ったが、善意に解釈し、自身の気持ちを伝える。


 「友達になってほしいからだよ。

 ねっ。よろしく」


 そう言って上田が右手を差し出すと、その男子生徒は上田の顔と差し出されている手に視線を一往復させてから、言った。


 「ええで」


 その言葉に、上田はやったぁと気持ちをたかぶらせたが、目の前のその生徒はまだ名前も名乗らないし、自分の差し出した手に、手を伸ばしても来ない。

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