表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/31

転校生

 小谷が教壇の前に立つと、号令がかかった。


 「起立。礼。着席」


 礼を終えた生徒たちが、着席のために引く椅子の音がまだ終わり切っていない頃、小谷が話しはじめた。


 「えー。今日はみんなに転校生を紹介します。

 お父さんの仕事の関係で、急に転校してくることになった上田卓巳君や」


 その言葉に横に立っている転校生 上田がお辞儀をした。

 小谷は上田に一度軽く顎を上にあげて、合図を送った。自己紹介しろ。

 そう言う事だと受け取った上田が自己紹介を始めた。


 「今まで、横浜に住んでいましたが、お父さんがアメリカのシカゴに赴任することになり、お母さんはお父さんと一緒について行く事になったので、日本に僕だけが残る事になり、おじいちゃんの家でしばらく暮らすことになって、ここに転校してきました。

 よろしくお願いします」


 上田がそう言い終えると小山が手を上げ、指名もされていないのに、勝手に立ち上がり、発言を始めた。


 「上田君。質問あんねんけど。

 元おったとこに、彼女おるん?」


 「おおっ!

 どないなん?小山に教えたれや」


 小山の単刀直入な発言に山本が続けた。


 「そんなん聞くだけ無駄っちゅうもんやろう。

 おったに決まってるやろう。あの顔やでぇ。

 俺なんか、生まれてこのかた彼女いない歴13年やっちゅうのに」


 教室の雰囲気は一気に冷やかし状態になって、無秩序な発言がしばらく続いた。 


 「えぇ。残念ですが、いませんでした」


 みなの発言が一段落した時に、上田は何でこんな事を答えないといけないのだろうかと言う雰囲気で言った。


 「よっしゃあ。うちがもらうからな」


 小山が教室を見渡しながら言う。本気かどうか分からないが、教室内のみんなはうんうんと頷いてみせている。


 「えーっと。

 お前の席はあそこだ」


 とりあえず一瞬戻ってきた静けさの隙をついて、小谷が上田を座らせる席を指さす。

 その上田のために用意された空席の机の場所は偶然にも小山の右横だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ