第1~3章
夏のある日に寝坊をした…。
私の予感は…なんなのだろう。
~第一章~
・出会い
「――くん!」
「ま―お!僕と…」
…………――
という所で目が覚めた。
時計を見ると゛08:05¨と書いてあった。
30分に電車がくる。私は久しぶりに寝坊をした。しかも…あの夢の意味が…。
いそいで支度をすると、なんとか25分に家を出られた。駆け足で行くと、ギリギリ電車に間に合った。
席に座ると目の前に…
あの人がいた。携帯に目を取られている。
よく見ると、目は切れ長の二重、スッとした鼻、整った顔立ち。無造作にセットされたシンプルな金髪とは逆に、アクセサリーが凄く派手で、とてもバランスが良かった。彼の事をじっくりみてるうちに、自分の降りる駅だった。
私はいつもより早めに電車を降りた。―…どんな人がくるんだろう。
「真央!」
友達の千沙だ。
「おはよ!」
「転入生くるってね!」
そう!転入生!私が楽しみにしていたのは転入生が来る。
という事だった。
「男!?女!?」
「真央落ち着いて聞いて!イケメンだって言ってたよ―!」
なんだ。男か。楽しみにしてたのに…。どーでもいい。
私、美月 真央。
晴れて高校入試に受かった私は、それなりの学校にはいれた。
特に夢とかない私は、皆が入っている高校を選んだ。
教室につくといきなり、
「まお―!」
「お!魁!おはよ♪」
「転入生男だってな―。美女が良かった―。」
「魁は女の子好きだね―」
「おう!」
この人は山田 魁。
ひとことで言えば…チャラ男(笑)
でもすごく絡みやすい。って感じかな!
「席つけ―!これから転入生を紹介する。入れ」
周囲がざわつく。
ガラガラッ……
「ども―。木村冷央っす」
―――…ん…?どっかで…電車の中にいた…あの人!?
「じゃあ空いてる席の―…美月の隣だ。」
っげ!最悪。何も言わず私の隣に座ると、意味深な笑みを浮かべて
「よろしくな?」
と…何かの予感が私の背中をすり抜けた。
私は授業がだるいから、机に突っ伏して寝ていた。
――…「―…央!真央!」
「…えっあっ何っ?」
いきなり呼び捨てかよ?
「俺を案内しろ。」
「へ?なんでうちが?」しかもなんでこんなエラソーなわけ!?
「ねぇん、レオくぅん、私が案内してあげよぉかぁ?」
いろんな女達が集まる。まぁイケメンだしな―。
「俺は真央に頼んでんの。黙っててくれる?」
女達は黙って帰って行った。そしてレオはこっちを睨んでくる。
「わ…わかったよ。案内するよ!」
うー怖いなぁ。全部の案内が終わった後、
「なぁ、…あの約束…覚えてっか?」
―…約束?
少しの沈黙の後、
「やっぱ忘れてんのかよ。」
「ごめん。で…でも!言ってくれれば…」
「バーカ。お前が思い出すまでいわねぇ。…その変わり、ヒントをやるよ。」
「ヒント…?」
そう言ってポケットから取り出したレオの右手には、
少し小さめの貝殻がのっていた。
「貝殻…?」
「そ♪1つ目のヒントはコレ。」
全然思い出せない…。モヤモヤする。
「まだわかんねぇのかよ。」
はぁ。とため息を尽きながらうんざりしていた。
「2つ目のヒントをやろうか?」
私は二回頷いた。
「じゃあ俺と付き合え」
少しの沈黙が続いた後、
「なんでそうなんの?」
私が言うと、
「じゃあ一生モヤモヤしてろ。」
そう言って去っていった。
何よそれ。ずるいし…。
家につくと新着メール10件の文字。恐る恐るメールを見ると、
¨あんたさぁ、レオくんとしゃべりすぎ。まじうざい。
゛¨うざいからレオくんに近寄らないで!
゛¨死ね死ね死ね死ね死ね…゛
何このメール。10件全部が嫌がらせのメールだった。
レオのせいで…。
次の日。学校に着いて、レオに声をかけた。
「何―告白―?」
とケラケラ笑っていた。その周りには、うちに痛いほどの視線を送る女達。
まぁ今はそんなんどーでもいい。
うちがレオと付き合えばヒントがもらえて、思い出すかもしれない。
=思い出したらレオと付き合ってる意味ないから
…別れれば一件落着!
と…1人でかんがえた。
「つ…付き合っても…いい…よ…?」
つぶやき気味でそう言うと…
「まじ!?そんな事言われると思ってなかったから…びびったわ。」まぁそれで…
一応付き合う事になった。
次の日。
千沙が
「真央は手が早いね―?」
と笑いながら声をかけてきた。
「何のこと?」
「転入生と付き合ったんでしょ―?」
あぁ…情報はや!!
ん…?なんか視線が…。
周りを見渡すと、睨んでくる女、女、―…魁…!?
いやいや、魁がうちの事睨むわけないしね。有り得ない有り得ない。
「で!?」
「あ…うん、まぁ。」
「おめでとー!!!」
千沙は自分の事みたいに喜んでくれた。千沙のそーゆー所、好きなんだよなぁ…
まぁ無理やり付き合ったからあれだけど。
「まお」
「…ん」
レオだ。
「お―?噂の彼のご登場かぁ?」
千沙はうちをひやかす。
レオは口パクで、
「ひ・ん・と」
と言っていた。
そうそう!ヒント教えて貰ってなかったんだ!
いそいでレオの所に行くと、誰もいない理科室に入った。
「で、2つ目のヒントはコレ。」
そう言って取り出したのは…
貝殻で作った指輪だった。
私の消えていた記憶がよみがえる。
「思い出したか?」
…。
私が幼稚園に入っていた頃、小さい頃好きだった男の子がいた。
そのことは仲が良かった。
家が近かったからっていうのもあるんだけど。親同志がとても仲がよくて、一緒によく話をしていた。
その間、2人で、砂浜に行った。あの時、
「まーおちゃん!」
「なーに?」
「大きくなったらさ?」「うん」
「僕と結婚してください!」
少し照れながらも、れーくんは私の手にはブカブカな手作りの貝殻の指輪をくれた。
そしてれーくんとお揃いの指輪を付けて、
2人だけの結婚式を開いた。
しばらくしてれーくんは、親の転勤で引っ越して行った。
泣いていた私にれーくんが
「大きくなったら必ず迎えにくるからね!」
「約束だよ…?」
「うん!約束!」
そう言ってゆびきりをした後去っていったのだった。
「れーくんだよね?」
「大正解♪」
そしてレオは真剣な顔になって、
「俺と結婚してください。やっと見つけた、真央。」そしていつの間にか涙目になっていた私を強く抱きしめて、
そのまま唇を重ねた。
~第二章~
・知った事実
やっと思い出した私は、モヤモヤが消え、充実していた。
そう、レオの家はたまたまうちに近かったから、電車で一緒に通っていた。
付き合ってもうすぐ1ヶ月がたつ。
今の季節は秋。
あれが始まる季節。
私は、あんな事が起きるなんて、想像もしていなかった。
ピピピピッピピピピッ♪
ん…もう朝か。
起きるのがだるいなぁ…
急いで支度をする。
こんな毎日だ。
1ヶ月前と違うのは…
―ピンポーン♪
「おはよ―真央!」
「おはよ。今日来るの早くない?」
レオが迎えに来る事だ。
「そりゃ文化祭の準備だからな♪」「今日からだっけ?」
「おう」
すごくだるい。
文化祭とかどうしてやらなきゃいけないんだろう。
電車に乗ると、席は満席状態。
仕方なく2人でたっていると、メールが届いた。
こんな朝から誰だろう。
と思って見てみると、知らないメアドだった。
メールには写メが貼り付けられていた。見てみると、
うちとレオが電車に乗るときの写メだった。
そのときはあまり気にもとめなかった。
学校につくと、
「真央!おはよ―」
千沙が話しかけてきた。
「おはよ!」
「文化祭の係なにやる―?」
「あ―。お化け屋敷か喫茶店だよね。」
「うん!」
どうしよう。別にどっちでもいい。
「喫茶店やろ?真央メイド服似合いそうだし!」
「えΣメイド服着るの!?」ありえない。
うちがメイド服とか吐き気が…
おろrrrr…
「絶対やだ!」
「じゃあ男子しかいないお化け屋敷行くの?」
うっ…。究極の選択。
「じゃあ喫茶店で。」
「決定―!」
なんかこんなような事が最近多い気が…。
文化祭の準備が始まって、メイド服が渡された。
ミニスカのピンク色だった。
いろんな所にフリルがついていた。
確かに可愛いよ?
けどうちに似合うはずがない…。
千沙のメイド服はうちのと黒の色違いだった。
千沙は似合うんだろうなぁ…。放課後になってレオと帰っていると、
「真央メイド服着んの?」
「うん…。やだから見ないでね?」
「は?見ねぇわけねぇだろ。早くみてぇわ―。
」とケラケラ笑ってる。
「レオ最低!」
私が背中をバシッと叩くと
「んだと!?」
といって私の頬をつねる。
「いひゃい」
レオはお腹を抱えて笑っている。
レオといると楽しい。
いつの間にか私は、レオを大好きになっていた。
家に帰ってベッドに滑り込む。
ピロロロロ~♪
魁からの着信だった。
「もしもしー?」
「よっ!真央、転入生と付き合ってんだってー?」
「ああ、うん。」
今更なんだろう。
「おめでとーな!」
「ありがとー♪」
「ただ、あの転入生…やめた方がいい。」
え…
「何故?」
「アイツ、ふたまたかけてる。」
そんな…嘘だよね?
「そんなの嘘だよ…」
「こないだ綺麗な女の人と歩いてた」
「そんなはずない!」
ッピ。
勢いで電話を切ってしまった。
レオが?
綺麗な女の人…?
好きだったのは私だけだったの?
頭が痛い。
今日はもう寝よう。それで明日レオに聞こう。
わたしは嫌な気持ちのまま、眠りについた。
次の日、
いつものようにレオが迎えにきた。
「おはよ、真央!」
「おはよ。」
「んだよ、元気ねーじゃん。」
「そんな事ないよっ」
なんとか誤魔化して学校についた。怖くて聞けない。
もし、レオがふたまたをかけていたら。私は捨てられるかもしれない。
もしもその相手が友達だったら。
千沙だったら…。
私は、何もなくなる。
そう思うと、知らないほうがいいのかなって。
こんなに悩んだのは
…何年ぶりだろう。
気付いたらもうお昼の時間になっていて。
「真央!お昼一緒に食べよ!」
千沙が誘ってくれた。
「うん」お弁当を広げて食べようとした時、
ピロロロロ~♪
メールが鳴った。
開くと、また知らないメアドで写メが添付されていた。
その画像をみた瞬間…。
私は倒れた。
目を覚ますと、
保健室だった。
「起きた?」
私の横に
…魁がいた。
「うち…どうしたの?」
「真央は倒れたんだよ。
携帯、この画像どしたの?」
そう言って見せられた写メには、
知らない景色に綺麗な女の人とレオがキスをしている写メだった。
私は何もかも失った。
その場で私は…泣いた。
大声で。
信じてたのに。
どうして私に結婚しようって言ったの?
どうして…今まで仲良くしてたの?
わけわかんないよ…。
泣いている私に、魁が抱きしめてくれた。
「レオなんかやめて、俺にしなよ。
絶対真央を泣かせないから。」
私は何も言えなかった。
文化祭当日。
あんな事があったにも関わらず、私は元気に振る舞っていた。
レオに何も言われてないから。
知らない振りをしておけばいいと思った。
それでレオと付き合えているなら、私は自分を守るために…知らない振りをした。
メイド服を着て喫茶店をひらいた。
お客さんがいっぱい入ってくれた。
レオ達が入ってきて、
「いらっしゃいませ♪」
「おっ!やっぱ真央が一番可愛いなー」
「だよな―」
「おめぇら、俺の女だからな?」
「わかってるって!」
そんな会話をしていた。
紅茶を出した後、レオ達が帰って行った。
その時、綺麗な女の人が入ってきた。
私と同い年ぐらいの。よく見ると…写真のあの人だった。
私は見間違いだと思い、紅茶を出した。
すると、
「ねぇ、レオいる?」
ガチャンっ!
思わずカップを落としてしまった。
「すいません。」
「ねぇ!聞いてる?レオ探してんだけど!」
「お化け屋敷にいると…」
「ありがと」
そう言ってどこかへ走っていった。
やっぱり、あの人だったんだ。
ははっ笑える。
今まで何やってたんだろ。
お化け屋敷って言わなきゃよかったかな?バカみたい。
「真央!いいよ。ここはまかせて!いってきな。」
千沙が言う。
「でも…」
「モヤモヤすんでしょ!?ちゃんと聞いてキなよっ!ほらっ」
千沙に背中をポンっと押されて一歩前にでた。
「千沙、ありがと。大好き」千沙に全力の笑顔をむけて走った。
お化け屋敷につくと、声が聞こえてきた。
「レオ!大好き。」
「沙耶…」
あの女の人とレオの声だった。
私はもう限界だった。
ガラガラッ
「レオ…ふたまたかけてたんだね。
さよなら。
幸せになってね?大好きだったよ。」
後ろからレオが
「ちょっとまて!違うんだ!」
と言っていたけど、無視して、その場から離れた。
走って走って走りまくった。駅の前についた時、自分がメイド服だという事に気付いた。
とても哀れで、汚くて。
近くのベンチに座り込んだ。
すると五人組の男の人達に声をかけられた。
「君1人?コスプレ似合ってるね。」私は掴まれた腕を振り払って逃げようとした時に、
口を塞がれて、車に乗せられた。
私はなにをやっているんだろう。
人生の希望が無い私は、誘拐犯に「殺しても…いいよ?」
と言った。
私は…まぶたを閉じた。
~第三章~
私は、誘拐されたのだった。
「殺してもいいよ?」
私が言うと、誘拐犯は困った顔をした。
1人の男が震えた声で
「なぁ‥あれ‥なんだ?」
車の後ろの窓ガラスを見て、男達は唖然としていた。
振り返ると…
無数のバイクが車を追いかけてきていた。
車は猛スピードを出して逃げようとするが、バイクとの距離がどんどん縮まっていく。
そして、誘拐犯はとうとう諦め、私を車から下ろして猛スピードで帰って行った。
「真央、ごめん」
「え?」
振り返るとそこには、無数のバイクに跨がった男達の真ん中に―…
レオがいた。
「なんで…レオがいるの‥?」
レオは少し困った顔をして、
「俺は、真央と会ってない期間にいろいろあったから。ごめん」
いろいろってなに?それで゛浮気゛を片付けちゃうの?
「もう‥もう別れたんだからほっといて!」
「俺は別れるなんて言ってねぇ。」
何様のつもりよ‥浮気しといて別れないとか‥もう‥
私が言うと、誘拐犯は困った顔をした。
1人の男が震えた声で
「なぁ‥あれ‥なんだ?」
車の後ろの窓ガラスを見て、男達は唖然としていた。
振り返ると…
無数のバイクが車を追いかけてきていた。
車は猛スピードを出して逃げようとするが、バイクとの距離がどんどん縮まっていく。
そして、誘拐犯はとうとう諦め、私を車から下ろして猛スピードで帰って行った。
「真央、ごめん」
「え?」
振り返るとそこには、無数のバイクに跨がった男達の真ん中に―…
レオがいた。
「なんで…レオがいるの‥?」
レオは少し困った顔をして、
「俺は、真央と会ってない期間にいろいろあったから。ごめん」
いろいろってなに?それで゛浮気゛を片付けちゃうの?
「もう‥もう別れたんだからほっといて!」
「俺は別れるなんて言ってねぇ。」
何様のつもりよ‥浮気しといて別れないとか‥もう‥
「じゃあ説明してよ!過去に何があったのか。」
「俺、中学入ってから真央をすげぇ探した。
だけど全然情報が掴めなくて、友達に聞き回った時、1人の奴が真央の事知ってるって言っててさ。
教えてって頼んだら、三丁目の有名な“BUMP”っつ―グループを潰せって頼まれて。
やってみたら案外楽しくて、気付いたら“BUMP”の頂点に上り詰めてた。つまり頭って事。
そんで、真央の事を探すっていう一番の目的を忘れちってさ、
ある日、BUMPの仲間と電車乗ってたら、むっちゃ可愛い子がいてさ、気付いたら恋してた。
そんで、そのこの名前を呼んでる奴が、真央って言っててさ―。やっと真央にあう約束思い出して、慌てて転入って感じ」
「じゃああの女の人は誰なの!?」
レオは少し俯いて
「あの女は‥元カノだ。」
元カノ‥?
「いつ付き合ってたの?」
「真央を好きになってた時。」
「‥?好きなのに他の人と付き合ったの?」
私は頭がついていかない。ちゃんと勉強しておけばよかった。
「脅されたんだよ。」
レオは顔をひるめた。
「脅されたって‥?」
「付き合わなきゃ、大事な人を殺すって。」
なにそれ。なんでレオがそこまで追い込まれなきゃいけないの?
最低だよ。
「なんで元カノが会いに来たの?」
「“やり直さないか”って‥」
バカじゃないの?
「別れ方が‥悪かったから‥かな。」
「別れ方‥?」
「全部俺が悪い。」
レオは自分を追い詰めていた。
「ごめんね、レオ。もう聞かない。」
「わりぃ‥1人になりたいから、帰るわ。」
そう言って無数のバイクが一気に帰って行った。