06話「外へ」
「ねね、まだ八時ですよ。どこか行きません?」
七里が僕に詰め寄ってきた。顔が近い。その顔は確かに生きている人の顔だった。どこもおぼろげなところなんてない。そして微かに懐かしい彼女の香りがする。
「いいよ、どこに行きたい?」
鞄を持って立ち上がる。
「えーっと、とりあえず外にでましょう」
「わかった」
僕はコートを羽織ると彼女と一緒に外にでた。がちゃんと鍵を閉めてふぅとため息をついた。
外は静かだった。遠くで犬の鳴き声がするくらいだ。そして肌を刺すような冷たい風が時節僕らに吹き付けてくる。空を見上げると何も見えなかった。そう、曇っているのだ。
「なんかどんよりした天気ですね」
「そうだな……雪でも降るかな」
「えっ、やった! ホワイトクリスマスですよ」
「はは、去年はからっと晴れてたもんな」
彼女の表情からふっと笑顔が消えた。なにかぶつぶつつぶやいている。
「どうかした……?」
「あ、いえ。なんでもないです」
「んじゃあ、どこに行く?」
「公園行きません? ほら、ミドリ公園」
「なんでミドリ公園なんだい? 電飾ツリーもないよ?」
「だからいいんですよ。人気がないじゃないですか」
「あ、あぁ……そうだったね」
すっかり現実を忘れてしまっていた。どこか心が締め付けられるように痛む。
「それじゃあ、レッツゴー!」
「おー……」
寒さにガタガタ震えつつ僕らは徒歩23分の公園へと向かったのである。
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