05話「ディナー・トーク」
「お帰りなさい、慧」
「……は?」
言葉を失った。目の前には正座で七里が座っている。笑みを浮かべながら続ける。
「お風呂にします? ごはんにします? ……それとも……」
「おいおいおい、いやいやいや待て待て待て」
「えっ? 七里七里七里、ほしいほしいほしいよーぅ?」
「いやいやいや、なんなんだよ! っていうか、「よーぅ?」ってなんなのさ!」
「ふふっ」
彼女は笑うと黙って僕に返事を促した。
「わかったよ。ご飯にしよう」
「えーっ、そこ『七里がいいよ』っていうところでしょ?」
彼女は笑いながらキッチンの方へと姿を消した。
僕はふぅとため息をついて靴を脱いだ。隣には彼女の靴がある。泥や草などがついてひどく汚れていた。
「早くしてくださいよ。もう温めてあるんですからね」
奥から声がした。慌てて上がって自分の椅子についた。
「じゃあ、いただきまーす」
「いただきます」
二人でテーブルを挟んでの食事。なんだか――
「なんだか私たち夫婦みたいですよね。あ、または中学生とかが食卓に彼女を招いたような感じです。ほら、あるじゃないですか」
頬が緩んだ。
「はは、そうだな。お母さんとかがおかわりどう? ありがとうございます。とかね」
「あ、そういう経験あるんですか?」
「まさか、ないよ。憧れていたなぁ、そういうのに」
「わかります。恋人を招いた食事っていうのトクベツな感じがしますよね」
二人でチキンをつつきながら会話が弾む。この空いた空白の一年間を埋めるように僕らはずっと話した。お腹が満たされていく、そして心も満たされていった。
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