25話「赤い空、最期のクリスマス」
再び、2011年12月25日
「思い出した?」
「あ……うん」
ジグソーパズルが全て、もとあるべき場所へとはめ込まれていった。
「そういうこと」
「うん……」
空が赤く、なり始めた。
「綺麗ね……」
七里は相変わらずこっちを見ない。
「七里」
「うん?」
「もう……」
「そうだね。ここが私たちの最終目的地だったからさ」
「…………」
「私は、進くんを恨んでいないよ。運が悪かったんだよね」
彼女はこちらを振り返った。目はどこか遠くを見ているようだった。
「だから、気にしなくていいよ」
「…………七里」
「えっ――」
僕は彼女に飛びついた。驚いた声が僕の頭にすっと入る。
「逝かないでくれ。頼む! 全部僕が悪いんだ、代わりに死んでやるよ」
「そんなこと言わないでよ!」
「嫌だ! 僕は七里のことが好きなんだよ! 七里を失った気持ちがわかるか!?」
「そんなの……私だって同じだよ」
「え――」
「気がついたら死んでたんだもの。受け入れられなかった。だけど長い時間をかけてやっと結論を導き出したの。進くんにちゃんと生きてほしい。私だけ想ってくれるのもすごい嬉しい。だけどね、人間死を受け入れなくちゃいけないの」
「……そんなこと……言うなよ」
胸がいっぱいになった。ずっと想い続けてきた、その想いは紛れもない本物だった。僕も、彼女も。
「だからね、私の分まで精一杯生きて。私ができなかったこと、見れなかったこと、感じられなかったこと、ぜーんぶ、進くんに託すから」
「そんなの……」
「くよくよしてちゃだめだよ。進くんすぐに落ち込んだりするんだから。お母さんのこともちゃんと受け入れて」
空が真っ赤になる。
僕らも赤く染まっていく。山が、森が、木が、全て赤く。
「じゃあ、またね。進くん。進くんならどこまでも進んでいけるよ。……シャレじゃないよ?」
「わかった」
抱き合ったままそっと告げる。
「じゃあ、最期に誓いのキスをして」
彼女がそっと、静かに目を閉じた。
「んっ……」
僕はその赤く染まった唇に自分の唇を重ねた。
しっとりと、まるで生きている人のように柔らかかった。
「……じゃあ、」
「……またね」
唇を離したとき、抱きしめていた腕から抵抗が消えた。
丁度、夕日が沈む頃、夕闇に溶け込むように彼女は消えた。
「うっ……」
その場にへたりと座り込む。
感情の堰が切れた。涙が止めどなく、溢れては顔に川を作った。
「七里……七里ぃ……」
だけど、いつまでもめそめそしてられない。
次へ、進んで行かなければ。
母さんが、父さんが与えてくれたこの名前。進。
天にいるから聞こえないかもしれないけど――
精一杯、生きて、進んでいくよ。
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