21話「社長の」
七里が参高峠で車ごと転落したという連絡は、後日、七里の両親からもらった。
とても辛そうに、泣きながら話してきた。
僕はなんて言ったらいいのかわからなかった。僕が殺したも同然だから。
七里の遺体は谷底に転落したらしく、引き上げが困難な状態らしい。
七里なしでの葬式が行われることになった。年末年始は忙しいので落ち着いた頃にやるそうだ。
その後社長から電話があった。
「聞いたよ……」
社長はいつでも社員の気持ちを汲み取ってくれる、とてもいい人だった。
その優しさが、時によっては痛いときもある。
「社長、僕が殺したんです」
「…………」
「僕が携帯に電話なんてかけたから――」
「それは相手のご両親に話したのかい?」
「……いえ」
「なるべく時間を開けない方がいい。すぐに会って話しなさい。それは君が一番よくわかってるだろう? 時間は待ってはくれない。最期に話したくても話せなくなる。――それが死っていうものだ。君は彼女に伝えたいことがまだまだあったはずだ。だけど今一番伝えなくてはいけないことは何かな?」
「……わかりません」
「……そうか。まぁ、知らない方がいいってこともあるしな。私の意見は参考程度にしてくれ。だけどいつか、伝えるんだぞ。きっと、後悔する」
「……わかりました」
「じゃあ、今はゆっくり身体を休めなさい」
その声はまるで本物の父親のようだった。
「あの」
「何だ?」
「報告します。先日、25日、両親が他界しました」
「……そうか。式は?」
「あげません」
「そうか。わかった。今が正念場だ。しっかりやりなさい」
「ありがとうございます」
「それじゃあ」
「失礼します」




