14話「モーニング」
「七里……?」
目を覚ます。いつもここから目を覚まし、着替え、会社へ行く。自分のベッドだった。
「……七里?」
もう一度名前を呼ぶ。しんと静まりかえった部屋。閉め切ったカーテンの隙間からは朝日が射し込んできている。
「鳥がビーチクバーチクベランダのテラスの上で鳴いていてうるさい。朝食は焼き鳥にしてやろうか」
そんなことを寂しさ紛らわす為に言ってもよけいに寂しさがつのるだけだった。
「七里……」
戸を開けてリビングへと行く。……いい匂いだ。卵焼きとウインナーとベーコン……焼き鳥の匂いがする。
「あ、おはようございます」
「……おはよう」
良かった。僕は安堵のため息をついて洗面所へと向かった。鏡を見ると目の下にくまができていた。こんなに疲れた顔を昨日出るときはしていただろうか。
さっさと顔を洗って髭を剃る。冷たい水が温かい水になるまで時間がかかるのだが、今日は七里が使った後だからなのかすぐに温かい水が出てきた。
「台所、借りましたよ」
「うん」
「今日はいい天気ですね」
「そうだな。昨日雪が降りそうだったのに」
テレビに目をやるといつもの見慣れたNHKのアナウンサーの姿はなく、別のアナウンサーが喋っていた。チャンネルを替えようとしたら七里が「この後占いやるんですよ」と止めるので仕方なしにそのままつけた。
その間にも七里はてきぱきと朝食の準備をしていた。
「このスズメ、おいしいですよ」
「うん、おいしそうだうぇ?!」
「そうですよね。今朝玄関の前で死んでいたので拾ってきました」
「おいおいおいおい! 待ってくれ! 本気で言っているのか!?」
本気だとしたらこの女は相当常識のない奴だということになる。だが彼女は笑って「冗談ですよ」と言った。ならいいんだけど……。
――さて、本日の占いです。この占いの本で占いますね。あ、この本は売らない。なんつってー!
「いつもこんなんなのか?」
余りに酷いシャレと静まりかえっているスタジオの様子を見てつぶやく。
「はい、そうですよ。彼、ダジャレ好きで毎日同じシャレばかり言うんですよ」
すぐにNHKに替えようと思ったが何とか抑えることができた。
七里がやっと準備を終えて席に着いた。目の前には今までに見たことのないほどの豪勢な朝食がテーブルに所狭しと並べてあった。母親は今までこんなの作ってくれた覚えはない。だけどなんか懐かしかった。
――しし座です! 本日は快調! 会長さんは更に快調! ししししっっと笑いましょう!
寒い。食卓は温かいのに凍りそうだ。なにやってんだよ。
「あははは! 今日もおもしろーい!」
「嘘だろおい!」
七里の意外な一面を見ることができた。――そんな和やかな朝食だった。
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明日からは本気だして書いていきたいと思います。
目標はクリスマスが終わるまでに完成です。




