12話「温かさ」
「ふぅ、いい湯だったな」
「ええ……」
風呂から上がった(もちろん一人で入った)僕らはテーブルを挟んでお茶を飲んでいる。灰色のごつごつした湯飲みに緑色の液体が入っていた。
「温かい……」
両手でそれを持つとほんわかと熱が手のひらに伝わってくる。
「なぁ」
思い切って訊いてみる。
「はい」
「やっぱり、明日も一緒にいられないの?」
「……それは――」
七里は視線を湯飲みに落とした。僕も彼女の持っている湯飲みをじっと見つめる。
「――できません」
ぼそりと静かな部屋に彼女の声だけが響く。
「なんでできないんだよ」
「それよりも、今を大切にした方がいいと思いますよ、私は」
サクッと心に矢が刺さる。そうだ、もう時間がない。
「もう、寝よっか」
お茶を一気にすすった。味がしない。
「一緒の布団で――」
「さー、七里はベッドで寝なよ。僕はソファーで寝るからさ」
「えーっ」
立ち上がる。
「っ……!」
まただ。あの公園の時と同じような感覚。
ガタリと手をテーブルにつく。そしてそのまま気を失った。
――薄目で見たそのとき、七里はどこにもいなかった。
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