銀髪の男2
「俺様に断りもなく敵を目の前にして逃げるとは何事だ恥を知れ!!」
パシーンッ!!
容赦なく頬を叩いたレイの頬をクリスは思いっきり叩き返した
「恥を知れはそっちでしょ!!僕がテレポートしなかったら死んでたのはどうみてもレイ様でしょ?
アンタが本当に第一皇子ならそんな簡単に死ぬな…皇子様ってのは王になって民の幸せに貢献するまで生きなきゃいけない筈だ!!
それに兄弟で殺し合いなんて僕は見たくない!!」
クリスはポロポロと泣きながら叫んでいる
クリスが急にそんな風に泣くとは思わなかったのでレイの高ぶっていた筈の感情は急激に冷めてしまった
女に頬を打たれたのも目の前でこんな風に泣かれたのも初めてだった
何故か無性に抱き締めて撫でてやりたくなったが子供のままではとても背が足りていない
仕方無しにコイツの前では見せないようにしていた本来の自分を解き放って黙って抱き締める
「えっレイ様!?」
クリスは涙目のまま驚いたように此方を見上げて固まっている
無理もないな目の前でいきなり子供が大人になりしかも自分を抱き締めているのだから…
「確かにライは双子の弟だ俺だって好きでやってるわけじゃない…俺様に皇子がどうだのと偉そうに指図をするならば家来のお前だってそう簡単に泣くな…そっそんな風に泣かれてはいい迷惑だ…」
爪で傷をつけないように最新の注意をはらいながら片手で彼女の両目の涙を拭って髪をそっと撫でたところでタイムリミット再び子供の姿に戻ってしまう
クリスは呆気にとられた表情で此方を見てブツブツと呟きだした
「あの月夜の晩に僕を助けてくれたのはレイ様なんでしょ?
ライに肉体的幼児化の祟り魔法をかけられてるから今は本来の力が出せないけど龍神族の力と共鳴する月の夜…特に満月は力がかえってくるとか?
祟り魔法を一刻も早く解いてライときちんと戦いたいけど魔法の解き方がライを倒す意外に思いつかないとか?」
祟り魔法について訊かれてもレイは無言でいるしか無かった
「喋れないってことはそうなんでしょ?
なんだガッカリ…あの夜のイケメンはレイ様か~せっかく年上の殿方とのめくるめく素敵な恋物語を妄想してたのにな僕…レイ様じゃ肝心の性格に難ありだもんな~」
クリスはハァッとあからさまに大きな溜め息を吐いた