銀髪の男1
理不尽だ…僕が女の子だって知ってる癖になんでこんなに扱いが酷いんだ?
いい加減に呪縛を解けよ糞ガキ~なんて口に出せたら楽なんだけど出せない自分を呪ってやりたい
歩き疲れたという自称皇子をおんぶして歩くのは初めてではないがウンザリしている
コイツの命令に逆らえないのだから仕方が無い
レイの長い黒髪が僕の襟元にまで引っ付いて正直ウザイ
そろそろ降りろと言おうと思えばどうやら彼は寝ているらしい…どうりでやたら重い気がしたんだよね
丁度休めそうな大きな木をみつけて僕は腰を降ろし隣にレイもそっと降ろした
コイツも黙って寝てれば可愛い顔してるんだよね…龍神族ってみんなこんな整った顔してんのかな?
なんて考えていた矢先だった
「そこで寝ている少年はそなたの知り合いか?」
銀髪の青年が話かけてくる今日は翼を出していないようだが僕にはあの月夜の青年にしか見えなかったので急に現れた彼に胸が高鳴るのを感じた
「そうだけどどうかした?」
男はこの前みたいな優しい表情ではなく間違いなく同じ顔の筈なのに酷く恐ろしいオーラを放ち微笑んでいる
「ソイツは龍神族の中でも忌まわしき存在…俺はソイツを完璧に消す為にこの地にきた大人しくしていればそなたに危害は加えな…!!」
上手く言えないけど凄く嫌な感じがして相手が言い終わらないうちに気がついたら僕はレイを抱きかかえていた
「悪いけどレイ様を守るのが僕の役目だから…」
キッと睨んだ僕を見て男はクスクスと可笑しそうに笑っている
「驚いたな…俺の祟り魔法如きで知能まで堕ちたのか兄上は…こんなチンケな娘を従わせたところで何が出来…!!」
気がつくと腕の中にいた筈のレイが男に飛び付いて首元に手をかけていた
「ライてめぇいきなり出て来て余分なことまでペラペラ喋るなよ?俺様の前に自分から出て来るとは好都合じゃねぇか…テメェが死ね!!」
「その姿で俺に力が適う筈無いだろ…そんなことも分からないのか愚かだなレイ!!」
男はレイの頭を鷲掴みにして何やら呪文を唱えだした
僕は慌ててレイを男から引き離すと同時にテレポート呪文を唱える
「チッ…」
男の舌打ちとほぼ同時にレイの不満そうな目がこちらを睨みつけているのが目に入ったが気にしない