龍神の力2
レイは今までで一番ドクドクと波打つ心臓をどうにか落ち着かせようとしながら布団の中で1人物思いにふけっていた
クリスがただの少女(出逢った時は少年と思っていたが)ではないことくらい分かっていた
だからあの時に無理やりにでも家来にしたのだ
今更だが思った以上にただ者ではない
あれだけの精気と魔力を他人に送り込み尚且つピンピンしている等有り得ない
レイは初めてのキスは心から惚れた女性とロマンチックな場所で自分からすると密かに夢見ていたのに余りに突然に年下の少女に奪われてしまったことを認めたくないというか
あの舌遣いからして向こうは初めてでは無かったような気がするのがショックだった
一体何なんだあの娘は!?
俺が龍の姿を曝したところで天界へ入るには天界の民の了承を得ねばならない筈だ…天界…まさかアイツ…!?
レイは幼い頃に乳母がしてくれたお伽話のような天使族の話を思い出していた
天使族の皇女は天界において龍神様に恋をした龍神様もまた皇女に恋をしていた
神様と天使の恋はタブーだったが2人は気持ちを抑えることが出来ず愛し合って密かに子供を産んだ
だがその事は天界を司る王にすぐにバレてしまい皇女は泣く泣く子供を連れて下界へ追放された
皇女を失った天使族は余りの悲しみに百年間泣き続け遂には滅びてしまった
何年も月日だけは流れ下界で暮らす皇女もついに亡くなってしまった
心優しい皇女は誰を恨みこともなく死ぬ直前まで下界の民の幸せの為に全力を尽くしたという
皇女の意志を受け継いだ娘は自らもその強靭な魔力を生かし民を救い続けた
やがて娘は偉大な魔法使いとして民から讃えられ今も世界の片隅で最愛の孫娘とともに幸せに暮らしている
何年も時を経て天の王は天使族の皇女を天界から追放したことで天使族を滅ぼしに至ったことを深く反省し
最後の希望である孫娘に天界族の姫君としての称号を与えこの世界最大の保護を与えた
天界族の姫君は…お前なのかクリス?
だとしたら自分はとんでも無い失態を起こしている
天界族の姫君を無理に自分に付き従わせるなどあってはならない事態だ
龍神様がこの愚かな自分を認めてくれる筈がない
ここまで何も気がつがなかった自分の失態に己を呪いそうになる
なんと愚かでちっぽけな存在なのだ自分は…悔しい…やはりあの時ライではなく自分が死ぬべきだったんだ…不意に涙が溢れ出してきた