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第一話 武人(バスターズ)





 世界は23年前、突如として現れた(ロン)によって支配された。龍はあらゆる街や村を壊し、何十億人と言う人々を焼き払った。

 その人の何百倍もの大きな体、そしてそれに合った強大な力。 人に危険をもたらす災厄として人々は戦った。しかし、従来の剣や銃といった武器では龍の強固な鱗によってはじき返されてしまう。 そして人々は龍を倒す為の武器を作り出した。その龍の鋭い牙や爪、賢殻な鱗や翼などから作られた武器が滅龍剣(ロン・クルセイバー)

 しかし、龍の素材はそうそう手には入らない。決死の思いで何人もの腕効きの武人が龍に挑み、多くの犠牲が出た。その何人もの犠牲を出して、ようやく手に入れた龍の素材。 しかし、やはり取れた数は少なかった。 

 その数少ない龍の素材を用いて、何人もの武器職人がその技術を使い七本の龍滅剣を作り出した。

 その刃は強固な龍の鱗、硬い肉を切り裂き、龍の一撃を防ぐ事の出来る強靭さ。 その七本の龍滅剣を託された、今では伝説となった七人の武人達は龍に挑みその命を落とすも龍を撃退した。世界からその姿を消した龍は、月日が流れた今でも強く人々の心の中に根付いている。 そして、唯一龍と渡り合える龍滅剣は七人の武人達と龍との戦いの後に、龍と同じく世界のどこかに消えた。

 龍の再来に備えて世界政府はある一つの組織を立ち上げた。何人もの腕利きの武人を集め、何人もの武器職人を集め、何人もの世界を知る知識を持つ者を集め、龍との再決戦の為にを備えた組織。 だが、龍との遭遇までのその間は街や村の近辺に出没した怪羅(リン)を討伐するのが仕事。それが、『クルノセイズ』




◇◆◇◆◇◆




「てか、こんな組織作るんなら龍滅剣(ロン・クルセイバー)探して、七人の世界で一番優れた武人(バズターズ)を集めればいいんじゃね?」

「お前はバカか?滅龍剣は23年前の龍と伝説の七武(セブン・バスターズ)との戦いの後にその姿を龍と一緒に消した。それを今までクルノセイズが探さなかったと思うか? この23年間探し続けて、一本も見つかっていないんだ。だから私達みたいな武人を集めて、怪羅(リン)を討伐させて腕を磨かせてるんだ。何時再来するかもしれない龍の為にな」

 

 男が丸テーブルに突っ放し、女がどこか気品のある姿勢で、紅茶の入ったカップをグイと口元に当てる。

 この二人、端から見ればカップルに……は見えない光景。男の方の容姿はまあそこそこだが、女の方は完璧だ。容姿で決めるのはあれだが、女の方が完璧すぎて男とはどうも合っていない。

 その男の名はクロス・セイント。

 少し白い肌の持ち主、深く強い意志を持っていそうな紅の瞳。 前髪が今にも眼に入りそうなぐらいにまで伸ばした、漆黒の髪。そして、容姿は平凡の中でも上の中と言った所。だが、どうもやる気がなさそうに見える。

 服装は少し濃いめの青く膝辺りまである両腕から下まで黒いラインの入ったコートに、下もセットなのか似ている同色系。 余程青が好きなのだと思えなくもない。だが、そんな17~19代の青少年は背に自分の身の丈程もある大『剣』を背負っていた。

 それはまだ鞘に収まったままだが、鞘の形からも分かる普通の剣の形とは違った異様な剣。 白くもあるが、鈍い光を放つ鞘に鞘の隙間から見える黒い剣。そして特徴的なのがあちこちに突き出している棘のような物。隙間は、それを抜けるようにしているのだろう。

 そして、女の方は男とさほど歳も変わらない美人。レイナ・クロイツ・サーデイン。

 その辺を歩くだけで、声を掛けられるであろうその美貌は男だけではなく、同姓の女ですら惚れてしまいそうな程だ。

 クロスとは違って、白く透き通った滑らかな肌に容姿は特に特徴はない。だが、特徴がないと言うのは容姿が整っている証拠だ。

 クロスの紅く強い瞳とは逆に、どこか沈んでいそうな蒼の瞳。金色(こんじき)の質のよさそうな腰辺りまで伸ばした髪を後頭部の近くで結んでいる。

 服装は、スタイルのいい体にピッタリと張り付くように合った黒の長袖の上から、その大きな胸の辺りまでしかない白いベストを着ている。

 下はその白くすべすべな長い脚が見える、膝のちょい上辺りまでの黒に白のラインの入ったスカート。そして、やはり黒色と言ったロングブーツ。 クロスのロングコートと違って動きやすそうな服装だ。

 だが、どこか女の子らしさと言うのが感じられない色合いでもある。

 そして、女も男と同じく剣を持っていた。男のように背にではなく腰にぶらさげていて、騎士と言った感じに見えなくもない。

 その剣は、普通の剣のそれの大きさだが、柄の部分の上には触っただけで突き刺さりそうな鋭い棘がある。しかし、男の持っているのとは違い、鞘の部分は普通だ。

 そんな、物騒なものを堂々と持っていても周りは何も言わない。

 それどころか、皆が皆二人のように平然と己の武器を持っている。剣、銃、鎚、槍、鎌、爪、とそれぞれだ。 それも、ここがクルノセイズの支部だからだ。 

 周りがコンクリートとレンガと言った、普通の木造建築の家と違って強固な作りになっているクルノセイズ『オリアル支部』から皆、怪羅(リン)の被害にあっている街や村に出向いて怪羅から民を守る。だがそれは、武人達の腕を磨く修行の一環でもある。 来たる(ロン)との決戦を待ち構えての修行を。 

 そして、この二人もここクルノセイズ、オリアル支部に身を置いている武人(バスターズ)である。

 ここオリアル支部には、そんな修行と民を守ると言う武人達の情報交換の場でもある。新種の怪羅、襲われた村の場所、他にも色々だ。

 

「はあ、やだなあ今から行くの……」

「文句を言うな、これも民を守る為。それに、今月の家賃まで使ってしまったのは誰だ?」

 

 レイナの言葉にクロスは「う……」と、痛い所をつかれて表情を歪ませる。それに、追い討ちをかけるようにレイナはクロスが使ってしまった今までの必要以上の金をスラスラスラと口から、何かの呪文を言うかのように言う。

 その呪文を聞くなり、クロスはバッと立ち上がる。


「よし行こう!すぐ行こう!」


 そう言って、クロスは元気よく出入り口へとズカズカ向かっていく。それにレイナは「はあ……」と短いため息をついた後、男について行く。

 


◇◆◇◆◇◆



 怪羅(リン)。それは、(ロン)(しもべ)とも呼ばれている存在。 23年前の龍の出現と同時に、怪羅(リン)は現れた。最初は龍の鱗が剥がれ落ちてそれが姿を持ち、それ自体が固体となり生命となった。それが怪羅、龍に似てはいるが龍程力は持ってはいない。だがそれでも人の数倍のでかさはある怪物。従来の鉄などで出来た武器では、ギリギリやれるかどうかと言う所。その怪羅は、龍が世界から姿を消した今でも、独自に新たな生命を生み出し増殖。今では世界のどこにでも存在する『物』として人口よりも数を増やしている。

 そのせいで、街や村に住まう者達は毎日怪羅に怯え過ごしている。そして、怪羅に襲われたら武人(バスターズ)にまかせてすぐに逃げる。それが、今の世界の規則(ルール)だ。


「なあレイナ……今回怪羅(リン)に襲われた村ってのは、ここから歩いて何分掛かるんだよ。かれこれ、三時間は経ってるぞ」

「黙って歩け、クロ」


 クロ、レイナがクロスを呼ぶ時のあだ名。クロスってのが、名前なの苗字なのか分かりにくい名前だと言う理由でつけたあだ名。クロ……どこかのペットにでもつけてそうな名前だ。

 そのクロとレイナは、オリアル支部を出てからクロの言う通り三時間以上歩き続けていた。二人は、クロノセイズ支部の存在する大きな街、オリアルからそれ程遠くはない小さな村。リハエルに向かっていた。

 最近の怪羅は、人が住んでいる街や村をよく襲う。この事について、クロノセイズの支部長より上の者達は、龍が現れる予兆なのかもしれないと予測していたりもしている。


「お、あれ……か?」

「そうだな、リハエルの村だ」


 レイナのその言葉を聞くなり、さっきまでどんよりしていたクロの顔はどこかキリっと引き締まる。レイナも先程と変わらないように見えるが、その蒼の瞳はリハエルの村をしっかりと見つめていた。

 今から怪羅(リン)と命のやりとりをするのだ、気持ちを引き締めないとすぐ殺されてしまう。もしかしたら、今この瞬間に道の端に広がっている森から飛び出してくるかもしれない。

 そう、もうここは奴等のテリトリーになっている。 村人は、既にオリアルの街に避難していて、人の気配はお互いからしかしない。

 先程よりも一歩一歩をしっかりと踏みしめて、村に近づいていくクロとレイナ。


「グウォオォォォ!」

 

 怪羅の凄まじい雄たけびがどこからか、二人の耳に聞こえてくる。 


「俺等に気づいたか?」

「さて、どうだろうな……」


 ここでようやく二人は、己の剣を取り出して構える。

 クロの剣は、鞘からは抜かれずにそのまま右肩に担がれる。 その鞘の形状からして、それでも十分に戦えるクロの大剣。鞘にから飛び出している剣の棘に、鞘自体にもついている鋭く尖った棘。 

 レイラの剣は、手元の以外はごく普通の剣。だが、その刃は黒く太陽の光を受けて光っている。手元の棘と同じく触るだけで斬れてしまいそうなまでに尖れたそれは、怪羅をも一太刀で一刀両断出来てしまいそうだ。

 二人は全感覚を研ぎ澄ませ、ゆっくりと村へと足を運ぶ。

 村に入ったその時、クロとレイナに粘りつくような殺気が向けられた。


「来るぞ、クロ!」

「分かってるさ!」


 突如二人を射す太陽の光が遮られ、大きな影が二人を包み込む。

 

 ドスン!


 鈍い音と共に二人の背後に着地したそれを、二人は振り返り確認する。

 その姿は、クロやレイラの数倍は大きく、四足歩行に目元から頭にかけて伸びた角が特徴的。背にはクロの大剣にもある棘に似た物が湾曲して二人に向けられている。

 真っ黒なそれは、獣と違って毛並みなんて物はなくその強靭な肉体がむきだしになっている。所々にある刃物のような鱗が黒く光る。


「また、こいつかよ……ついこの間倒したじゃねえか」

「グダグダ言うな。ヤツから眼を離すなよ、あいつは動きが速い」


 レイラの助言にクロは、へいへいと気を引き締めたまま返事をする。 そして、ギュッとその自分を覆いつくす程の大剣を握り締める。


「また抉ってやるよ。お前等のその、牙や爪から取れた素材を使って作られたこの滅怪羅剣(リン・クルセイバー)でな」

 

 そう言って、クロは自分の持つ滅怪羅剣を右手で持ち、唸る怪羅に向けて今からお前を殺すと、言う覚悟を持って鋭い殺気を向ける。


「グルルルルル」


 その殺気に反応したのか、クロを警戒して唸る怪羅(リン)

 

「よし、いつもどおりで行くぞ」

「おう!」


 レイラに勢いよく返事をしたクロ。真正面から、自分の何倍もの大きさのある怪羅に突っ込んでいく。

 怪羅はそんなクロに大きく前足を振り上げる。


「やべっ!」


 とっさに急ブレーキをし、後ろに地面を蹴って飛ぶクロ。 ドシャアンと、先程急ブレーキをした所が怪羅の前足が叩き落される。

 あのまま突っ込んでいたら、あの凄まじい力に潰されていた。そう思うと、背中に冷や汗がツーと流れる。


「今度こそ、お前の肉抉ってやるよ!」


 大きく息を吸い込み、グッと息を止めて再度怪羅に突っ込むクロ。巨大な滅怪羅剣を後ろ下、斜め45°に引いて歯を食いしばる。 

 再び突っ込んできたクロに、怪羅はもう一度大きく前足を振り上げ勢いよくクロに向けて振り下ろす。


「はぁぁ!」


 吸い込んでいた息を一気に吐き出すのと同時に、怪羅の自分に向けて振り下ろされる前足に向けて下から半月を描くようにして大剣を振り上げる。

 グジュウッと鞘が怪羅の前足の裏を抉り、突き刺さった鞘からその大剣を振り抜き勢いよく刃の部分で前足を切り落とす。


「グギャァァ!」


 クロに怪羅独特の青い血がビチャっと飛び散る。前脚の半分を切り落とした後、すぐにまた怪羅から距離をとり頬の青い血を裾で拭いふき取る。

 前脚を切り落とされた痛みに、一瞬怯む怪羅。だが、怪羅は前脚を切り落とされたぐらいだと死にはしない。確実に絶命させるには、頭を落とすか胴体を両断するしかない。

 つくづく化け物地味ている。


「そろそろ、か?」

 

 前脚の半分を失った事で、少しは動きが遅くなった怪羅。だが、まだそれでもその巨体にしては早い動き。その四本脚での俊敏な動きから繰り出される一撃一撃を今までの経験を生かして、ギリギリで避けるクロ。

 二十分程、避けては隙を見つけて斬る、避けては隙を見つけ斬るの繰り返し。だが、それでは疲れをしらない怪羅にとっては何の支障もない。 

 その中で、クロは小さく呟いた。その意味はレイナにある。 怪羅とクロの殺し合いの最中、レイラの姿が何時の間にか居なくなっていた。

 しかし怪羅は今クロへの怒りでいっぱいだ。レイナの事など気にしてはいない。


「ほら、もっと来いよ。化け猫が」


 大剣を担いで左手の人差し指でクイクイと曲げて挑発する。 怪羅はまるでその意味が分かったかのように、吼えながらクロに突っ込んでくる。

 だがクロは焦らない。


「まだだ、まだ…………ここ!」


 怪羅と自分の距離が、6m程まで詰まったのを見て横に走りだしたクロ。 急に敵が移動したことによって、怪羅は急ブレーキを掛けようとするが、その自分自身の巨体さとその勢いづいた突っ込みで止まれない。 だが、クロはただ避けただけではなかった。

 半分しかない前脚が通りすぎたのを横目で見て、肩に担いでいた大剣を体を回転させてその遠心力で勢いづけたまま両手で、後ろ足に向けて思い切り振るう。


 ――ドォグゥジュゥゥゥ


 肉が切れ、骨が折れ、血が飛び出し、後ろ脚が前足動揺切り落とされる鈍い音。しかし、今回は足の半分ではなく人間で言う脛の部分から脚切り落とされる怪羅。

 

「グァアオォォォアァァァ!」

 

 怪羅とて痛みは感じる。後ろ足が切り離されるその痛みに叫ぶ怪羅。勢いづいたその巨体は体制を崩して、その場に倒れ込みながらもズルズルと地面を滑り、一軒の家に衝突する。

 だが、前脚半分。後ろ脚の切断。それ程の事をしてもまだ立ち上がって、クロに物凄い眼つきで睨みつけてくる怪羅。

 だが、後ろ足がないせいで今は三本脚で立っている状態。しかも、左の前足の半分もない状態。 素早くは動けはしないだろう。


「終わりだよ……もう……」


 ――ズシィン


 クロがそう言った瞬間に、怪羅のその大きな頭が地響きをたてながらゴロンと転がり落ちる。


「まったく、前脚斬れた時点で()れよな。レイナ」

「そう言うな。あの程度の動きのロスでは難しかった」

 

 嘘つけ、と心の中でボソっと呟くクロ。 さっきのあの一瞬で怪羅の頭を体から離したように、レイナの腕は折り紙つきだ。それに、クロとスタイル違ってはいるが、血を一滴も服につけていないのだから尚更すごい。


「はあ、にしても……この村、復旧すんのに時間かかるだろうな」


 切り落とした前脚から大剣の鞘を回収しながら、怪羅によって滅茶苦茶にされた村を見て呟くクロ。 木造建築の民家が怪羅によって見るも無残に壊されて、土地は爪あとなどで荒れて、村人の何人かの食われたであろう体をよそに腕や足と言った部分だけが落ちている。

 普通の人ならば見ていて吐き気がしてくるであろうその光景。 だが、こんな光景をいくつも見てきた二人にとってはもう慣れてしまった事だ。


「帰るぞ、クロ」

「おい、待てよレイナ。俺今日結構がんばったんだぜ?少しぐらい休ませてくれよ」

「帰って、自分の部屋のベットに寝転がって休め」

「休む場所、自分のベット限定かよ……」

 

 二人は、怪羅(リン)によって襲われた村での仕事を終えた。来た道を日帰りでまた辿りオリアルに帰る二人。 ちょうど、さっきまで眩しかった太陽が沈みかけて夕日が二人を茜色に照らす。

 今回の仕事で、村は多少の犠牲はでたがとりあえずは救われた。 そしてまた、(ロン)との決戦へ向けて二人は一つ強くなった。

 これは、そんな武人(バスターズ)達の物語。

 





ども、初投稿の作品です。 

とりあえず、一話はどうにか戦闘シーンまで持っていきたかったもので、詳しいクルノセイズ、滅怪羅剣なんかの説明は次話で分かると思います。

で、どうだったでしょうか? 感想などを頂ければ嬉しいです。アドバイスなどで、ここをこうしたらもっと良くなるなどのコメントもガンガン言ってください。

 それでは、これからよろしくお願いします♪

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