腐えろ!デスガール!!
目が覚めると全くもって知らない墓場に居た。
フム。全然状況が理解できないぞ? それに記憶が曖昧だ。となると、こう言うときは大抵その日を振り返ることで思い出すことができるのが定番の流れだ。さぁ! 振り返りタイムだ!
いつものように高校へと行き。同じ陰キャ腐女子仲間と隅っこで暮らし、それから家に帰って風呂入って飯食って......そうそう! ワタシの今一番推してるオリジナルアニメ映画 『ヴァンデミック』 のCPイラストを嗜み・・・
・・・ここから曖昧だな。何をしたんだっけ? ナニはしてないはずだが〜女の子にナニとか言わずなや! はい。え〜あっそうだ。ワタシの好きな絵師さんがネップリを開始したから買いにコンビニへと向かったんだ。
その道中でもワタシはキラアキの二次絵を嗜んで目の前から来たトラックに轢かれ、死んだ。
そう、死んだ。死んだのだ。ワタシは既に死んでいたのだ!!
っておいいいい!!!!死んどるやないか!!!
待て待て待て! ま〜てマテ。死んだ! え、ワタシ死んだの? あっれ〜でも生きてるよ! 生きちゃってますよ、ワタシ。えぇ困るんだけど!
「ってかここ、どこだよ〜!!」
墓場で叫ぶ女子高生、そうワタシが居た。
「うわッ本当にいるじゃん。勇者の力ってヤツ?」
「そんな力ないと思うけど」
墓場を囲む森の中から二人の男が出てくる。どうやら片方は勇者らしい......ん? 勇者? 勇者ってあの勇者か。そうか、勇者か。勇者・・・いや、勇者?
「あっあのえっと、あっユウシャ! 勇者なんですか?」
ふぐぅ。男の子と話した経験が皆無なせいで口が回らない。いや、女の子相手にもなんだが? つかパンピー陽キャには無理なんだが? あ〜ほんと、マジで。この世界が悪い。全部この世界が悪いわ。うんうん、彼氏さん厳し〜ワタシだったらそんな思いさせないのにッ! キラーン!
「ゾンビが喋った? んなことあるのかよ。て言うかお前のこと知らないモンスターがいるなんてな。勇者サマよ」
「歴代の勇者に比べればまだまだだよ。知らなくて当然」
「ハッ! 歴代最強のクセに何を言ってんだが」
アカン。完全に蚊帳の外だワタシ。え〜と、何を見せられているのカナ? 取り敢えず、尊ぇ尊ぇぞ。勇者に対して、しかも歴代最強に対して気軽に冗談を言える暫定ライバルキャラ。その冗談を真面目に答えるちょいポンコツ系最強勇者? いや尊すぎるだろ。推せるわ〜
「ヨダレ垂らしてる」
「何アイツ、キモ!」
キモいと言われてしまった。あのね、オタクと言うのはキモい者なのだよ。寧ろキモいと言われて愉悦すら感じるね。とか言えたらワタシも脱陰キャ、まではいかなくとも下の上にはなれたのかな? トホホギスだぜ。
「あっあの、ワタシその多分アレなんですよね」
そろそろ聞きたいことを聞こう。大方予想はついているが、確認は大事だ。異世界転生ってヤツなのかどうか。
「ワタシ実は人間で、いやあの今はモンスターかも知れないんですけど、その異世界転生ってヤツだと思いましてね。ヘェヘ」
果たしてここは異世界なのか!
「異世界転生、ああ偶にある現象か。君が言うならそうなのだろう」
ビンゴ! 陰キャの予想を侮ることなかれ! こっちは日々常々妄想してんだヨ〜ン! 陰キャの妄想総合時間を舐めるな!
「異世界転生ねぇ......まっそれを言われてヤルこと変わらねぇけど」
“ヤル” こと?
「例え君が異世界転生した元人間であろうと今はモンスターだ。ゾンビのモンスターだ。僕たちがやることは唯一つ。人類を守る為、人類の敵の君を排除する。勇者としてニンゲンとして。モンスターである......ゾンビである君を排除する」
「要するにお前は今からオレらに殺されるってわけだ」
・・・は? え、待って。本当に待って。殺される? 何で? 理由は言ったろ。ゾンビだから? そもそもワタシってゾンビなんだ。あれってことはモンスターだから。僕って言った。一人称僕なんだ。人類の敵、ワタシが。排除? 排除ってなに? 殺さっ殺されキョロ? される。オレなの納得。転生は事実。え、死ぬの...... ワタシ殺される?
「あっ! 逃げんな!」
そりゃ逃げるでしょ! 勇者は剣を抜いたしライバルはどこからかデッカイ斧出したし! 殺すって言われて逃げない人居る?
「あっちは確か......」
「ああ最悪だ 《魔女の森》 だ」
・・・天使の森? いや、今はそんなこと気にしてる場合じゃない。彼らは確実に殺すつもりだ。逃げなきゃ殺られる。逃げな、逃げなきゃ死ぬ。
何でだよ。ワタシは普通の人間で・・・・・・今はゾンビだけど。元は人間だよ。普通の人間。華はないけど高校生だし。スクールカースト下の中の陰キャだよ。下の下の陰キャ腐女子仲間と隅っこで暮らす陰キャだよ。普通の、普通の人間だよ。腐女子だよ。
「夜明け前で元気ねぇてのに、しつけぇな。このままじゃ逃げられる。トドメは任せたぜ」
何で? なんで殺されなきゃいけないの? まだ人も殺してないし、てか何もしてないのに。ただ生きてただけなのに。何もしてないよ。転生する前だって何もしてない。ワタシは普通の・・・・・・
「いい加減に止まれ!」
その言葉にワタシは振り返る。足を止めて振り返る。無視して走れば良かった、なんて一瞬の後悔をしても意味は無い。空気を斬り裂く轟音。トラックが隣を走ったときと同じ感覚。轟音と共に風が体を押してくる感覚。恐怖は感じず危なさも感じない。当たるわけがないと決めつけつつも、本の少しだけ道の内側に移動する。その経験が活きたのかな? 巨大な斧がワタシの心臓より少し右に、胸の中心に刺さっていた。
ワタシの体重よりも遥かに重い斧によってワタシは体勢を崩しその場に仰向けになって倒れる。
痛みは無い。死んでいるからだ。血が流れる感覚はある。痛みも無く流血して行く。鼻血と同じみたいだ。血の温かみも感じない。ただ死ぬ。死を感じる。漠然とした死への恐怖が一気に襲いかかる。二度目の死。トラックに轢かれた時は何も感じなかったな。一瞬だったし。嗚呼、違うな。何も感じなかったんじゃない。何か感じる前に死んだんだ。神さまは優しいね。何も感じさせずに死なせてくれるんだから。でも今は、この世界には神さまはいないのかな? いるわけないよね。だって、ゆっくりと死を感じながら死なせるなんて酷いもの。そんなの神さまだって思えない・・・・・・違うか。ワタシがゾンビだからか。元々死んでるもんね。死体だもんね。そりゃ死を感じやすいか。
「なんで」
ワタシは血で濁った声で誰かに言った。
なんでワタシはこんな目に遭わないといけない。
どうしてワタシは殺されなくちゃいけない。
何もしてないのに。普通の女の子なのに、何でなんで。何も悪いことしてないのに。何も......
.........してるか。同じ腐女子なのに彼女たちを下の下だと思ってる。心では彼女たちを見下してる。私も陰キャなのに見下してる。私は上だと思ってる。彼女たちとは違うって。そもそも私は普通じゃない。人と話せないし。文化祭だって休んだ。前日の準備に居たからって何も手伝ってないのに居たから当日は休んで良いと自分でルール作って休んだ。文化祭を休んでBLを買いに行ってた。学校行事をサボってBLを読んでる私に自惚れていた。
私は腐女子じゃない。腐女子と言うキャラを手に入れたかった。何も無い私でも何かに成れると思ったから。逆張って男女の恋愛物は苦手だとか言って男男を読んだ。そうすれば腐女子と言う地位を手に入れられたから。何にも無い私が腐女子に成れたから。
だから見下していたんだ。どこかで思っていたんだ。腐女子を見下していたんだ。私より劣っていると思いたかったんだ。そうして私は自分を守っていた。
なぁんだ。私ちゃんと悪い子じゃん。殺されても文句は、文句は・・・・・・
・・・・・・文句はあるだろ。悪いことしてた。悪い子だった。でも死にたくない。殺されたくない。
腐女子のキャラが欲しかった。でもBLは好きだった。ちゃんと萌えてたし、二次創作漁りまくってた。
観たいアニメもまだ残ってるし、まだまだBLを追い求めていたい。
まだ死にたくない。死にたくないから死にたくない。
死ぬとか怖いし。死ぬこととか死んだ後のこと考えたら寝れないし。まだ死にたくない。死ぬのが怖いから生きていたい。
「やっと追い付いた。ほぼ死にかけってけど。勇者サマ、頼んだぜ」
「ごめんね。僕の使命だから」
死にたくない。何か、何かないのかワタシ。異世界だぞ! ずっと妄想してたろ。朝起きてから寝るまでずっと妄想してたろ。陰キャだろ。陰キャなら妄想しろよ。妄想で負けんな。あ〜くそ言葉が力になる世界みたいに妄想が力になれば、何て悩んでる暇なんかない。妄想しろ。妄想だけが取り柄だろ。
生きるんだろ。死にたくないだろ。どんだげ悪い子だって思っても、腐女子がBLがキャラ付けの為だったとしても!
ワタシはそんなワタシが好きだ!
「......ワタシ?」
勇者の剣がワタシに刺さっていた。ワタシの体から出てきたワタシに刺さっていた。
「引け! この土壇場でスキルを開花させやがった。これだから転生者は」
ライバル男の言葉によって勇者がワタシから遠ざかる。ここぞの言わんばかりにワタシの体から出てきたワタシが斧を抜いてくれる。斧に引き裂かれた胸がみるみると塞がって行く。そっかゾンビは不死身だもんな。そりゃ治るか。それに、ゾンビは増えるもんだ。増えて増えて増えまくる。
「この腐り野郎が」
口悪いねぇ〜まっライバルはその手のキャラが多いよね。いやいや、今はんなことどうでもいいな、どうでもよくはないけど、それよりも案件がある。この増えたワタシには意思とかあるのか? いつか乗っ取られたりする? そもそもワタシがオリジナルである根拠とか......ないな。ないならあとでいいや。ワタシの体から出てきたことが大事だ。ワタシはワタシ。ワタシから出てきたワタシもワタシだろ。だから・・・
「増えるぜワタシ」
ワタシは胸からワタシを出す。先に出してたワタシも出す。
「増えんなよ! 腐ってんのに!」
「おっやァあ! ゾンビは嫌いかい?」
なんだこのキャラ。ハイになってるのか? ワタシらしくていいじゃん。腐女子だって演じれたんだ、悪役も演じてやるよ。
もっと増えて増えて増えまくれ!
もっと腐って腐って腐りまくれ!
増えろ腐れ増えろ腐れ増えろ腐れ増えろ腐れ
腐れ増えろ腐れ増えろ腐れ増えろ腐れ増えろ
「腐えろ! デスガール!!」
森がワタシで埋め尽くされていく。そこらのゾンビ映画よりゾンビいるんじゃない!
「ぁああっハハハハハハ!!!」
死にかけてたからだろうか? やっぱハイになってる。
「クソきめぇ!」
「多すぎる」
勇者たちも焦ってる焦ってる。それじゃあ焦り顔も見れたことだし、逃げますか。ワタシまだ殺す覚悟とかないんで!
「逃げまぁ〜す!」
「逃げんな!」
言ってろ言ってろ!
「君は......一体何なんだ」
一体何だってそりゃアンタ。一体全体ワタシは......ワタシは・・・・・・
「腐女子です! しょたおにが好きです! しょたおに最高! それから、ワタシは......デスガール。しょたおに推しの腐女子! デスガールDEATH!!」
ワタシながら安直すぎたか? さっきノリでデスガールって言っちゃたし。それでいいや。
「デスガール......腐女子」
んん、よし! 良さそうだな! 事故紹介じゃなくて自己紹介もできたし、逃げまぁ〜す!
そうしてワタシは走る。兎に角走る。走りまくる。走って走って走る。
どれくらい走っただろう。森から出れるまで走った。出たのはいいけど、ここどこだ。てかもう明るくなってきたし。あ〜そう言えば言ってたな。夜明け前だとか何だとか。それじゃあアレは朝日か。思えば日の出を見るなんてなかったな。夜はカーテン閉めてたし、初日の出も行かなかったし。
そっか。明日が来たんだ。今日は昨日に、明日が今日になったんだ。ワタシにも明日があるんだ。
今日も生きてやる。死にたくないから生きてやる。明日がある限り、ワタシは生きてやる。だってワタシには、ワタシには明日ガッ
「ァァァァアアアァル!!!」
日の出に向かって踏み出した足は中に在った。どうやらここは崖だったらしい。
オチで落ちるとかサイテーだな!
って言っとる場合かァァァァアアア!!!




