表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/31

23.ひまわり

「孝寿」

「おう」


 佐々木夜に告白するのだとほのかが言った数日後。昼飯を終えて部屋で寝転がっていたら、ほのかが顔を出した。

 ほのかの顔にはなんにも浮かんでなくて、悲しいとか辛いとかそういうのも、嬉しいとか楽しいとかそんなものも、なーんにもない。

 ノックもせずに部屋に入ってきて、俺に断りなんかいっさい入れずに、ドカッと俺が寝っ転がっていたベッドに座った。

 きっとろくな話じゃないんだ。聞きたくねーなー。でもそういうのをわざわざ俺にだけ言いにくるから突き放せない。一番ろくでもないのはたぶん俺だ。


 手に持っていたマンガを横において、のそのそと起き上がる。ほのかに並んで座って顔を覗く。


「なんだよ」

「フラれた」

「そうかよ」


 そりゃそうだろう。夜が川瀬以外の女子に興味を持つわけがない。


「あんまり驚かないんだね」

「夜がお前に興味を持つと思えないし」

「ひどい」

「いや、お前だってわかってただろ」


 そう言うとほのかはむすっとして、うつむいてしまった。


「わかってたよ。わかってた……つもりだったんだけどなー……」


 ほのかは後ろにぱたんと倒れ込んだ。

 我慢大会かなにかだろうか。ほのかはお気に入りだと言っていた、水色のひらひらしたスカートをはいている。そんで寝っ転がるから、膝から太ももの半分くらいまでが見えている。

 触りたいなーとか、横に俺も寝っ転がりたいなーとか、いろんなよこしまな気持ちを抑えて目をそらす。

 よこしまが悪い気持ちなら、たてしまはいいのかとか、そういうバカなことを考えて気をそらす。


「ちょっとくらい、気にしてほしいじゃん」

「そっか」

「ダメだったけど」


 それっきりほのかはなにも言わない。白い太ももを目に入れないように、ほのかの様子をうかがうと、手で顔を押させている。

 あー、ヤダヤダ。


「ちょっと待ってろ」


 部屋を出て一階に向かった。居間では姉貴がポテチをかじりながらテレビを見ていた。


「あー孝寿。どう? ほのかちゃんとイイ感じ?」

「最悪だよ」


 そう吐き捨てて机の上の花瓶から花を一本抜き取った。


「ヒュー、ロマンチック!」

「うるせえ!」


 クソみたいな姉貴の野次に怒鳴り返して部屋に戻る……前に洗面所でタオルを掴んで濡らしていく。

 俺はあいつのなんなんだよ!

 心の中で悪態を吐きながら部屋に戻った。ほのかは先ほどと同じ姿勢のまますすり泣いていた。


「お前はさあ、ほんとさあ」


 ほのかの顔にタオルを投げた。ひゃっと声が上がって、ほのかは飛び起きた。


「なにすんの」

「タオル。そのひどい顔拭いとけ」

「ひどいのは、そっちの言い方じゃん」


 ぶつくさ言いながら、ほのかは顔を拭いて、目を冷やした。


「あとこれ」


 できるだけほのかの顔を見ないようにしながら、持ってきたヒマワリを差し出した。


「なに、これ」

「居間の机に置いてあったんだよ。んで……なんだ。ほら、お前は、笑ってる方がかわいいだろ。だから……てのも変だけど。いいからもらっとけよ」


 ぽかんとするほのかにヒマワリを押しつけた。


「バカじゃないの」

「ああ、そうだよ。ほんとに俺はバカだ」


 そう言ってやると、ほのかはやっと笑ってくれた。

 うん。やっぱりお前は笑顔が一番かわいいし、俺の中ではお前がいつだって一番かわいいんだ。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

この作品が面白かったら、☆を★に変えていただいたり

ブックマークやお気に入り登録してくださると、

作者がとても喜びますので、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ