~おはよう~
両親の見送りも終わって。これからすることといったら
もはやゲームしかないだろう!
さっそくオレは自室に戻り自分の9インチの小さい豆テレビ(とオレは呼んでいる)からゲーム機を取り外す作業に取り掛かった。
別に自室でやってもなんら問題はないのだが。この豆テレビでやると
目が疲れる。グラフィックスの細かいところが見れない。なによりも。敵を倒しているのに爽快感がまったくないという3点揃ったすばらしいテレビだ。
ある意味いつもゲームやってるのがこのテレビだったからこそ「ゲームは一日1時間」という過酷なルールも乗り切れたのかもしれない。
これから移動しようとしているリビングには去年買ったばかりの大きい、確か・・・40型だったか・・・な。よく覚えてないけど、とにかく大きくて、映りの綺麗な液晶テレビがある。
正月のとき、あっちのテレビで3時間だけゲームをしたことがあったけど。ゲームが違うんじゃねぇか!?っていうくらい画質の差にびっくりしたのを鮮明に覚えている。
と、考えているうちに最後のコードをひき抜いた。
さあて、行こうか。両手いっぱいにゲームとゲーム機、枕やらを抱えてのろのろとリビングに向かい、セッティングを開始する。
こういうとき家のテレビはビデオデッキとかあんまり繋いでないから助かる。
よし。コレでOK。電源ぽちり。
うんうん。映りもいいな。さすが新しいテレビだ。
ソファにすわりコントローラーを手に取ろうとしたとき、脱衣所のほうからうるさいアラームが聞こえてきた。
・・・・・・洗濯機だ・
なんで、なんで出かけるのに洗濯機かけていくんだよ!
ああ、めんどくさい。
でも今放っておいたらオレ絶対夜まで何もしないよな。夜になったら洗濯物干しちゃダメだっていってたから夜になっても干さないだろうな。
明日になったら洗濯物の存在自体を忘れていそうだ。
・・・・・帰ってくるころには確実にカビてるだろうな・・・。
あ、そういえば、洗濯物に制服もつっこんどいたんだった。一度カビた制服を着るのか・・?ううむ。それは御免被りたい。
と、なるとやるしかないよな。
渋々洗濯機に洗濯物を取り出し干しにかかる。
うう・・・リビングから聞こえるゲームのオープニングがオレを誘っている!
まぁ。でもゲーム途中だったらもっとむかついたかもな・・。シャツやズボンを干しながら、冷静に考えてみると。
ゲームの邪魔になる要因をいまのうちに排除してしまえばいいんではないのだろうかと、思えてきた。
邪魔になりそうなもの・・・。
うーん。掃除?いや、これは昨日やったしOKだ。
洗濯・・は今やってるな。
食事はインスタント使うから時間はとられないだろう。
じゃ、時間とられそうなもの・・・。と考えると、思いつくものがひとつあった。
恵太だ。
恵太というのはオレの、一応兄貴にあたるヤツだ。
一応というのは・・・・おれの兄貴はオレが生まれてすぐに交通事故にあってしまって以来今日までずーっと昏睡状態なわけで。
おれにとって恵太が兄貴というのは教えられているけど。オレにとっては話もしたことがないわけで。
全然兄貴とも思えないのである。ひどいといわれるかもしれないけれど
オレにとっては置物のような存在に近いかもしれない。
現在恵太は自宅で点滴(詳しくは違うらしいんだけど、オレにとっちゃいっしょにしか思えない)で一日2回の栄養補給してすやすや寝てらっしゃる。
恵太の世話っていうのはソレのことである。
洗濯物を干し終え。さっさと恵太のごはん(なんだろうな)のパックを冷蔵庫から取り出し。さっさと取り替えて来てしまおうとチューブの先を消毒しながら恵太の部屋に向かう
「恵太~めしだっぞ~♪」
まぁ聞こえてるわけないけど。俺は犬にご飯でもあげる気持ちで恵太の部屋のドアを開けた。
でも。オレの目に入ったのはいつものように寝続ける恵太の姿ではなかった。
「う・・・・おにいちゃん・・・だれ?」
眠たげに眼をこすりながらベッドに恵太は 座って いた。
おれは予想外のアクシデントにただただ硬直するのであった。