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3 転生した独身OLは、新しい人生を歩み始める

 本日、連投になります。

 どうか、応援よろしくお願いします。

 いやあ、びっくりした、というか、後で考えると腹が立ってきた。


(〈言語翻訳〉機能なんて、生まれた瞬間に自動で発動するものでしょう? なんで選択式なのよ、馬鹿じゃない? ノーなんて選ぶ人、いるの? まあ、よほど言語習得に燃えてる変人とか、いるかもしれないけどさ……ブツブツ……)


 これは、後で知ったことだけど、自動翻訳機能が選択式になっていたのは、転生者の前世の言語がいろいろ違うから、生まれた後、前世に合わせた言語に調節するためだったみたい。


 まあ、ともあれ、一番の障害が解決して良かった。うん、いちおう神様には感謝しなくちゃね。

(神様、どうもありがとう)


 さて、では改めて、私のこの世界でのステータスをじっくり見てみましょうか。

 今はおっぱいを飲んだ直後だし、おむつも替えてもらったし、しばらくは誰も来ないはずだ。

(では、ステータス、オープン!)


******


《名前》 リーリエ・ポーデット

《種族》 人族

《性別》 ♀

《年齢》 0歳

《職業》 ???

《状態》 健康


【ステータス】


《レベル》 1

《生命力》 31

《 力 》 3

《魔 力》 100

《物理防御力》 15

《魔法防御力》 35

《知 力》 92

《俊敏性》 2

《器用さ》 10

《 運 》 ──


《スキル》 火属性魔法Rnk1 土属性魔法Rnk1

      聖属性魔法Rnk1 無属性魔法Rnk1


《加 護》 運命の女神ラクシスの加護


******


(と、まあ、こんな感じ。ふふふ……やっぱり、この世界には「魔法」があった。やった~~って感じ? うん、期待してたから、これは嬉しい。しかも、四属性持ちよ、これって、けっこうすごいんじゃない? 知らんけど……。

 あと、気になるのが、《魔力》と《知力》が飛びぬけて高いこと。《知力》は、まあ前世の記憶持ちだから、高いのは分かるけど、魔力100って、なんか、赤ん坊が持ってていいのか、少し心配ではあるわね。

 それと、《運》が傍線って何? 運がいいの?悪いの? どっち? まあ、いいわ、いずれ分かるでしょう。

 それに、《加護》持ちよ。これはありがたい。どんな加護なのか楽しみね。加護をいただくのは〈運命の女神ラミシス〉様。今日から、お祈りを捧げますね、女神ラミシス様)


 こうして、私、中里衣津美改めリーリエ・ポーデットは、新しい人生を歩み始めたのだった。



♢♢♢


 転生して半年が過ぎた。リーリエ・ポーデットとして新しい人生を歩き始めた私の日々は、今のところ順調だ。


 私の新しい家族は、かなり裕福だと思う。まだ、家の外の世界はほとんど見ていないけれど、たまにレーニエ母さんやプラムさんが、私を抱っこして〈窓から見える〉外の世界を見せてくれる。

 この家は、かなり大きな街の中にあるようだ。見える範囲の建物は、石や木を組み合わせてできた大きな家が並んでいる。下に見える広い通りも石畳で、多くの人々や馬車が行き交っている。


 やはり、こうした転生もののアニメやラノベで見るように、この世界の文明度は、地球の中世の時代あたりで止まっているのかもしれない。魔法があまりにも便利なので、機械文明が発展しないのだろうね。

 

 それでも、意外だったのが〈トイレ〉だ。

 生後半年の私は、母に連れられて初めてこの世界のトイレに入った。

「ほら、リーリア、ここに座って。おしっこやうんちのときは、こうやってするのよ。まあ、あと一年後くらいにはできるようになってね」


 母さんはそう言って、陶器製の便器に私を座らせた。驚くことに、水洗トイレだった。たぶん〈魔道具〉だろう。まあ、こんなのが使える家は、よほど裕福な家に限られるだろうけど……。でも、水洗トイレがあるということは、おそらく水道も魔道具製だろうし、街には下水道施設が整備されているはずだ。


 このように、地球の中世より明らかに進んでいる面がある。ただ、貧富の差や身分制度などはどうだろうか?早く外に出て、この世界のことをもっと知りたい。



♢♢♢


 この世界にも明確な季節の変化がある。

 私が生まれた季節は、前世で言えば、たぶん「春」の終わりごろだったのではないかと思う。それから、だんだん気温が高くなり、その後二か月過ぎた頃からだんだんと涼しくなっていった。そして、今、部屋の中は心地よい暖かさだが、窓の外では灰色の空を背景に、白く小さなものが無数に空から舞い落ちている。そう、「雪」が降っている。


「まあま、あれ、なあに?」

 私は、おっぱいを飲むのを中断して、必死にたどたどしさを演じながら、窓の外を指さしてレーニエお母さんに尋ねる。


「あれはね、雪っていうのよ。さわるととっても冷たくて、すぐに溶けてお水になっちゃうの」


 私が初めて勇気を振り絞って、言葉を発したのはひと月ほど前のことだ。まず、「まあま」、「ぱあぱ」という言葉を、なるべくたどたどしく発してみた。本当は、もうぺらぺらとしゃべることはできる。でも、焦ってそんなへまはしない。私は、今度の人生を用心深く、しかし、自由に、思うがままに生きていきたい。そのためには、しっかり考えて、不幸を招くような迂闊なことはしない。


 まあ、それでも、生後半年余りの赤ん坊が言葉を発したのだから、家族はそりゃあもう、大騒ぎだったけどね。

(だって、もう、しゃべりたくてしゃべりたくて仕方がなかったんだもん……)



♢♢♢


 こうして、四年の歳月が平和に過ぎて、私は四歳になった。

 この四年間で、特に変わったことと言えば、そう、私に弟〈ロナン〉が生まれたことだ。もうすぐ一歳になる。金髪に灰青色の瞳のとっても可愛い弟だ。将来、弟を溺愛する自分の姿が想像できるわ。


「ただいま」


「おかえりなさい、パパ」


「おお、リーリエちゃん、ただいまぁ。んん、相変わらず可愛いなあ、わが娘は」


「レビー、お帰りなさい。夕食に間に合ってよかったわ。手を洗ってきて」


「ああ、ただいま、マイハニー。ん、うまそうな匂いだな、おなかがすいたよ」

 父さんはそう言って、母さんにキスをすると洗面所に向かった。


 父レブロンが帰宅する時間は、日によってまちまちだ。彼の仕事は商人、といっても、物を仕入れて売るという普通の商人ではない。保存がきく物品を、なるべく安く大量に買い付け、それを倉庫に入れて置き、市場でその物品が品薄になり、値上がりしたタイミングで商人に卸し売りするという、いわゆる〈投機商人〉だ。


 彼は、もともと裕福な商人の家の次男として生まれた。家の手伝いをしながら学び、いずれは家を出て、他の商人のもとで働くか、独立して自分の店を持つか、あるいは行商をするかの三択の道を選ばされた。

 成人した父が選んだのは、少し変わった二番目の道だった。彼の父が交易港に持っていた古い倉庫を財産としてもらい受けると、それを利用した〝投機商い〟を始めた。

 そして、それは大当たりして、またたくまに財を増やし、父は若くして一流商人の仲間入りを果たしたのだ。



 ここまでの私の話を聞いてくださった読者諸氏は、「あれ、おかしいぞ?」と、疑問を抱かれたことだろう。

 そう、私の転生後の人生は確かに、女神クローラ様によって、「良い人生」に振り分けられた。しかし、その後の使天使のへまによって、女神アトロフィス様は「普通の人生」の転生先に私の「モノクロニクル」を持っていかせたのだ。


 でも、この転生先は、どう考えても「恵まれた」「良い人生」の家である。決して「普通」の家ではない。これはどういうことか?


 実は、その答えはもう少し後になると分かる。もうしばらく待ってほしい。



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