1.オレ、強制転校するらしい
「ふぅ、いい朝だな」
オレ、黒田 鉄は清々しい朝を迎える。
今の季節は春、そう、新しい生活が始まる季節なのだ。
「今日からオレも高校生か…」
壁にかけているハンガーから制服を取るとそれに着替える
新しい制服の匂いに気持ちを高ぶらせながらルンルンで準備をする
「フフフ、高校デビューってことでワックス使っちゃうかぁ~」
昨日急遽コンビニで買ったワックスを思い出しながら自分の部屋から出て下の階へ向かう。
どうやらオレ以外まだ誰も起きていないらしい。まぁここに住んでいるのはオレともう一人しかいないが…
洗面所へ向かい髪型をセットしようとする。
「どんな髪型にしようか…いや、そもそもオレ髪セットするなんて器用なことできねぇな」
もうオールバックでいいか…
ワックスを大量に手につけ勘でべたべたとつけていく。
「これってドライヤーとかで乾かしたほうがいいのか…?」
…なんか髪痛めそうだしいいか…。
ガララ…。
「あ、姉さんおはよう」
扉を開けてきたオレの姉さんはパジャマ姿のままずかずかと入ってくる。
「ああ、おはよう」
…なんかめっちゃ見られてるな。
「ね、姉さん?そんなに熱い視線を向けられると困っちゃうよ…」
ちょっとモジモジしながら言ってみる。
「お前、その服」
「あ、これ?いいっしょ、このスタンダードな学ラン、今日からオレの青春ライフが始めるんだぜぇ~、彼女とかも出来たりして…ぐへへ」
「お前は何を言ってるんだ、寝ぼけたこと言ってないでちゃんとした制服を着ろ」
そう言いながら姉さんは洗面所から出ると姉さんがいつも着ている制服と似たような服を片手に戻ってきた。
「ほら、お前の新しい制服だ。さっさと着替えてその変な頭を直せ」
何を言ってるんだろうこの人。
オレの制服は確かに今着ているこれのハズだ。
この前だってオレの幼馴染のみっちゃんと学ランダサいダサくない論争だってしたんだ。
そうか、姉さんとうとう頭やっちゃったんだな…。
姉さんの通っているとこは科学と魔法の最先端を誇る学園だと聞いたことがある。
姉さんは意外とバカだから頭でもいじくられたんだろう…。
「グフゥ!!!」
憐みの視線を姉さんに送っていたら急にお腹をパンチしてきた。
ほう、これがDVってヤツですか…というかクリーンヒット過ぎて痛い死ぬ。
「さっさと準備しろ」
姉さんはオレを気にする素振りもなく歯を磨き始めた
「あ、あれ、姉さん朝食は?」
お腹を押さえながら声を出す
あ、動きが止まった。やはり抜けているとこあるなウチの姉様は。プークスクス。
おっと目の前に姉さんの足g
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「だぁ、べぇさん、ヴぉれがべぇさんの学園ヴぃ入るのっでぼんどう?」
姉さんと朝食を食べながら聞く。
なんだか顔が埋まっているような気もしなくもないがきっと気のせいだろう。
それよりも、だ。
姉さんの学園の制服であろうものを着せられるということはそれ即ちそういうことなのだろう。
「ああ、言ってなかったか?今日からお前は私と同じ魔科学園に通うことになっている」
「魔科学園ねぇ…あそこって確か魔法の才能がほぼ必須じゃなかったっけ?」
魔法科学現人学園は魔法を得意とするものを優先的に入学させ、魔法の補助、また対策を得意とする科学に精通している者は魔法が使えずとも入学できると聞いたことがある。
…が
「オレそんな魔法なんて使えたこと無いし、頭の方も平均より下ぐらいだぜ?」
とてもオレが行けるようなとこではない気がするが
「問題ない。ちゃんと許可は貰ってある」
「いやいやいや、誰に貰ったんだよその許可、というかオレの意思は?オレのみっちゃんとの青春ライフは?」
「お前は何も気にするな。あとそんな寒気が走るものは無い。ごちそうさま」
なん…だって…?
オレとみっちゃんが中学卒業の時にした約束である「同じ高校に入ったらデート」という約束が果たされないということッ?!
なんということだッ!!
オレは席を立ち、そのまま姉さんの元へ駆け寄る
そして迷うことなく姉さんの足にしがみつき頬ずりする。暖かい。
「姉ちゃぁぁぁぁ~ん、そりゃぁあないよぉぉ~、こんな直前でそんなん言われてもボク困っちゃうぅ~!!!あ、姉さんちょっと足太くなった?」
瞬間、視界がブレた。
あれ?大丈夫?これ。
オレの首360度ぐらい回ってない?
「いいから来い」
姉さんから有無を言わさぬ圧を感じる…
「へい」
やはり弟っていうもんは姉の奴隷でしかないのか…