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砂海鉄鋼機バドリーラ  作者: 大石次郎


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71話 啓示のバドアトン

互いに出力増し増しのボットでボットを狙ってドカドカ撃ち合いつつハイレイライフルも撃つ! バドアトンはまだ粒子をいくらか纏い少しずつ増やしてるっ。


これが手が付けられなくなる前に集束砲を撃って散らすが、繰り返しでラチが明かない···


(ザリデ、敵陣なのでチンタラしてられません!)


(合点!)


互いにボットが7割は減って、距離が中近距離ぐらいに否応なく縮むとどっちもライフルはクィックショットモードに切り替える。


ここまで近付くと熱弾が掠りだすっ。こっちはハイレイシールドで弾くが向こうは黒い粒子で捌ける。


「うっっ」


「お子様のクセにですっ!」


粒子生成能力は段違い! 狙い難い集束砲もクィックショットの撃ち合い中じゃやり辛いっ。


(アンゼリカっ、この距離ダメだ!)


(思ってました、詰めましょ!)


「よっしっ」


「おりゃー!」


ボットを全て相殺させたタイミングで黒粒子には効果薄めの2条偏光熱線を一応牽制で撃ちながらハイレイシールドを構えて一気に突進するっ。


(下手クソめ)


罵倒思念付きで、ほぼ全弾クィックショットの熱弾をハイレイシールドに当ててくるっ。エネルギー障壁が削られ、展開器にも負荷掛かりまくるっ。


それでも近付けた!


「ほ!」


「あい!」


俺がフットバーニアを効かせて急方向転換し、アンゼリカが拡散モードの集束砲をバドアトンの粒子に撃ち込む。


咄嗟に黒い粒子を集めて固めてきたが、9割方消し飛ばせたっ!


ライフルからハイレイランスに持ち替える! 相手は斧状の熱刃武器に持ち替えたっ。


(動画で学習しました。土下座にも色んな種類があると知りなさい!)


(その機体は降りた方がいい!) 


(なんの代償もなく神機を行使するお前達こそ異様だ!)


機銃を絡めて熱刃と熱刃を打ち合う。


そろそろ周りのその他の敵の囲み直しも整いだしてるが、結果的に陽動にはなったようでこの辺りの相手の防衛線が綻んで、後方でリュウグウクラン以外の艦団も突出しだし混沌としてきてる。


改めて互いに出力を高め合い、発光を増す。


(バドリーラ!)


(カミラビの分も仕事しなさいっ)


バドアトンがいきなり黒い粒子を再噴出させてきたが、この距離なら重力波で打ち消せそ···んっ?!


吹き飛ばした粒子の一部が錐状に集まり重力波の中を急加速して抜けてきて、集束砲を砕いた。ヤッバっ。


重力波を切り、ハイレイランスで粒子の錐を斬り払う。


(死ね!)


熱刃斧に加えて両足からも熱刃を出し、バドアトンは連撃で斬り掛かってきたっ。


次、黒粒子を大量に撒かれたらキツい!


バドリーラのサブアームを全て展開して熱刃を出し対抗する。


「「うぁああーーっっ!!!」」


バーニアの出力を上げて、打ち掛かった。


_____



やや時代掛かった農家風の平服で、シェル内で自生する植物で作られたらしい合成ではない箒で軒先を掃除する。


家事サポートドローンに偽装した護衛ドローンを1基付けているが今の所、ただ退屈に田舎暮らしの真似事をするだけだ。


ここは宙域の治安の悪化や無益な駆け引きに辟易して自治色の強い火星圏へと離脱を決めた、公社系小規模スペースシェル・イソラVII。


「田園地帯の環境再現が過剰だな···」


元々は別荘地シェルだった経緯があるらしいここは人口は20万人程度。私のいる農産区画はむやみに森や草原や丘が多く、非効率的だった。


海賊どもは勿論、ラスタ・ヨンゾ一味の生き残りは逃走の過程で少しずつ散り散りになっていったが、ラスタと副艦長。他20名程がこのシェルに流れ着いていた。


私のA級安定化デチューンはもう済んでいる。取り立てて、目的は、ない。


「···そして、クドい」


オフロード使用のモービルカーで農夫の格好をしたラスタと、ここまで付いてきて居着いた物好きな宇宙海賊の男が、私と副艦長の家の前に乗り付けてきた。


「よっ、ラルラ。下宿先の婆さんがチェリーパイを焼いたから持ってきたぞ? 天然物だぜ?」


「ここじゃ珍しくもないがよっ、大将!」


「だなっ」


「「ははははっ!」」


「···副艦長は書斎で株価と格闘している。持って行ってやったらいい」


「副艦長ときたもんだ」


「お前も食べんだよっ、ラルラ!」


強引に中に連れてゆかれる。


「面倒だなっ、大体家に来過ぎだぞ? 潜伏しているということをわかっているのか?」


「そんときゃそん時だ! お~いっ、パイ持ってきたぞ? 不正取引はそこまでだっ!」


「調査の賜物と言ってもらえますか?」


副艦長も億劫そうに2階から降りてきた。


「···っ!」


ふと、感じた。戦ってるな、ヤツらと。


「どうした? ラルラ」


「なんでもない。蜘蛛と目が合っただけだ」


「やだっ、どこ? だから田舎は嫌いなのよ!」


副艦長が血相を変えてラスタ達に面白がられる。


まぁいい、あとはそうだ。そこに残れた者の戦い。


ただ今となって、私はお前をそれ程、恐れてはいなかった気がするぞ? バドアトン。死や、敗北は誰にでも訪れる物だから···


_____



サブアーム全部と引き換えにっ、右脚を切断した!


差し引きどうだ?!


「んがっ」


「この黒粒子っ、うんざりです!!」


臨界起動後は斬り払っても斬り払っても、涌いてくる! 重力波も加速硬質化攻撃してくるからダメ。集束砲もブッ壊された。


離れるともうやりようがないが、距離が近過ぎると向こうの斧は当て易くて、こっちのハイレイランスはデカ過ぎて当て辛いっっ。


(死ね! 死ね死ね死ね死ね死ねっっっ!!!)


XIIIはさっきから思念で死ねしか言わない。テレパスも訴えられたら裁判で絶対勝てるヤツだぞコレ!


機銃は互いに弾切れ。周囲の敵機は援護に入ろうとして、今んとこ俺達が速過ぎて入れずにいる。


ミコ以外の自軍鉄鋼機もこのエリアではだいぶ押してきてる感じだが、まだ時間掛かるな···


(アンゼリカ! この距離もダメだっ)


(どの距離ならいけるんですかっ?!)


「こうだ!!」


もう一度、こっちも輝く粒子を纏って体当たりする! 粒子の総量よりパワーだっ。


黒粒子に風穴を空け、左脚も切断した。これで蹴りの斬撃はなくなり、フットバーニアも使えない!


(私はっ、私ばかりがっっ、死なない!!)


追い打ちでハイレイシールド展開器を破壊されながら、バドアトンは電磁爆雷を撒いて距離を取り、黒粒子の錐を触手のように多数出し、周囲の味方機を次々と突き刺して分解吸収しっ、それらを素材に瞬く間に黒粒子を大量生成しだした!


(あう、おおんんんっっっっ)


XIIIの思考が乱れてる。


「やり過ぎだって!」


「土下座する自我くらい残しておきなさいなっ」


と、粒子が圧縮し、数百の暗く輝く球体に変わった。なんだこのエネルギー検知?? バドリーラの暴走に慌てふためく周囲の敵機が触れてしまい、拡大消滅したそれに巻き込まれ機体を大きく抉られてるっ。


「ザリデ! フォトン爆雷ですっ!」


「なにそれっ?!」


思念でフォトン爆雷? を消しかけてくるバドアトン! 速度は遅いけどっ、数百弾ある!!


「うっはっ」


パズルゲームなら負け確な状況!


(電磁爆雷以外の実体弾で対消滅しルート取りましょう。レールマグナムは任せます)


「お、おう」


本体装備の該当弾は30発! 精度はイマイチだが、アンゼリカは齧り付きの勢いで全弾命中させてバシュッとフォトン爆雷を相殺して突進ルートを取りだした。


俺はハイレイランスの変わりに背部に格納していた1発しか撃てない近距離仕様のレールマグナムを抜くっ。


バドアトンも勘付いてフォトン爆雷の隙間からハイレイライフルで狙撃しだす。うへぇっ。


(余裕ですっ、余裕!)


迫るアンゼリカ、回避はままならないから、俺はハイレイシールドでとにかく相手の狙撃を受ける。


これ、偏光熱線でライフル落とせないかな?


(そこぉっ!)


最後の実体弾でルート上の最後のフォトン爆雷を消すアンゼリカ。


同時にハイレイシールド展開器を誘爆させられて左腕を失ったが、ずっと調整してた偏光熱線で相手のライフルを切断できた! しゃっ。


撃ち気でわかる。相手はまた残りの電磁爆雷を撒いて距離を取るつもりだ。実際、もう一度距離を詰める手立てはこっちにはない。だが!


(誘爆すんなよ!!)


撒かれた電磁爆雷の向こう、コクピットの上! 機体制御の中枢! 俺はレールマグナムを放ったっ。


電磁爆雷を掠って杭のような実弾がバドアトンの胸部を貫いた。


相手は力を失ったように見えたが、バドリーラが電磁爆雷群に突っ込む形になり俺達はあたふたしたっ。


((だぁっ?!))


あちこち削られながらその先のバドアトンに組み付く形になった。


周囲のフォトン爆雷は消えてゆく。


(···あああ、死では、あなた達に勝てないのか? バドリーラ)


XIIIじゃないバドアトンの思念が響いてきた。


それは暗く数多い、きっと救われなかった者達の声だ。

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