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7話 エルマーシュ姫 1

ミコが保護カプセルのネクタル覚醒液に半身浸させたまま姫の身体を起こし酸素マスクを取り付けサポートドローンに測定させる。


ジェム姐さんはマスクと繋いだエア機の管理。救護資格の無い俺とブルーナさんは補助要員。


「こっち保護液いいの使ってる。姫さんの方は通常医療船室でいけるんじゃない? もう1人の人は」


「意識れべる、上昇デス」


サポートドローンが反応し、涙を一筋零して、姫は両目を開けた。早いっ。まだ液抜けてない!


「ごほっっ」


咳き込みだして、呼吸器内の保護液を出しだしたからマスクを外してまたまた俺達は大慌てっ。


「ザリデっ、吸入機だぞ!」


「吸入機ッスね!」


「いや、詰まるから自然排出で!」


「おお、ごめんっ」


「姿勢ハ100度前後ヲ推奨」


「ええっ??」


使わないの?


「言葉、通じるよね? 姫、落ち着いて保護液出して下さいね。咳は生理反応で窒息はしませんよ?」


「ごほっ、はぁはぁ···あなた、方は??」


「私はエア···エアギルドって昔からあったっけ??」


「200年以上前からあるわ」


「だったねっ。エアギルドの一味でございます!」


一味って。


「そう、ですか···。あ! ノリアムはっ?」


「こっちの、カプセルの人ですね?」


全員の注目がもう一つのカプセルに集まった。


「残念だが、難しいようである···」


「キープバッグにネクタル液入れて運んだ方がいいけどよ、液が劣化するから急いだ方がいいぜぇ?」


「ノリアム。ああ···」


姫は泣き崩れてしまい、ミコとブルーナが支えた。


ジェム姐さんの予備の保護スーツを姫に着せてミコがベルトと緩衝シートを使って背負い、ノリアムという人は溶液を入れたキープバッグに蓑虫みたいに入ってもらいジャンパー背部に緩衝ストレッチャーを取り付けて乗せ、ロニーが2人の警護に専念することになった。


帰りは最短で、シェルターフロアの外の蟲対処はハルバジャンさんの負担が増したから、俺もハンドガンで威嚇するだけじゃなくサブマシンガンを構えることになった。


ちょっと感覚が麻痺してたけど、暗い閉所でいきなり涌く生身なら手首を簡単に喰い千切られるスナヘビムシをサブマシンガンで対処するって、ヒヤヒヤもんだったっ。


_________



エルマーシュ姫はリーラIIに運び込まれると、通常のベッドで呼吸及び循環器の補助なく、点滴のみで通常のベッドで眠りに就いた。


従者と思わしきノリアムは呼吸と循環器の補助を受けながらの精密検査で、致命的で再度の医療スリープにも耐えられないと判断され、ガーラン艦長は覚醒の為の処置を指示した。


シェルター船探索隊メンバーは滅菌と検疫後に、仮眠を命じられたが、ザリデ以外は小1時間後にはブリッジに向かい「ミコ、シャワーくらい1人で入れるってっ、デヘヘ」等と眠りこけていたザリデは、


「起きろ! Hな夢見てる場合じゃないぞっ?」


「ぐはっ?!」


と船室のロックを勝手に解除して乱入してきた寝巻きのままのジェムに私物の大きな兎のヌイグルミを投げ付けられて叩き起こされた。


「遺体や文化財の回収、リサイクルパーツ等の回収をさらにしたい所だが、これ以上時間を掛けると地元の自警団やカーキャラバンの連中が来てしまうだろう。ここの自警団は反モガリア朝の系譜。カーキャラバンも甘くない」


ガーラン艦長は悩ましげだった。艦外では日が傾き掛けていた。


「シェルター船は爆破し、谷も崩壊させる。サーチドローンでの計測も補完させた。ミコはリーラで船に、ハルバジャンとザリデは作業機で谷に爆薬設置を。ロニーはエアグライダーで中型ドローンと連携して周囲を警戒。ブルーナは姫様を看ててやってくれ、起きて話の通じる相手は必要だ。頼む」


「「「了解!」」」


「ジェムは、着替えてから機体調整だ」


「了解だぞっ」


ザリデ達はそれぞれ爆破準備作業に当たった。ザリデの作業機の初仕事でもあった。


日が暮れきる前にザリデ達は作業を終え、引き続きエアグライダーのロニーと、医療船室のブルーナ以外はブリッジに集まった。


グリルポークIIは谷を見下ろせる角度を取って重力環で浮遊している。艦長は中型サーチドローンは引き上げさせた。


と、ブリッジに医療オートボットを連れたブルーナが、モービルチェアに座ったエルマーシュ姫と、モービルストレッチャーに寝かされた呼吸器を付けた目を開いたノリアムと共に入ってきた。


どよめき息を飲む、ザリデ達とブリッジクルー。


「ブルーナさんから話は聞きました。時を越えてしまったわたくし達の為に、重ね重ね、ありがとうございます。ノリアムも···」


ノリアムが目線を向けるとブルーナは察し、慎重にモービルストレッチャーの角度を上げ、谷が見えるようにして、マスクの側に固定したマイクも入れた。


「この、時代まで、届けられ、て、よかった。どうか、姫は、御無、事で···」 


「意識れべる低下デス。かんふるヲ」


「もう、いいから」


医療オートボットを止めるブルーナ。エルマーシュ姫はノリアムの手を取った。


「確認後、10秒で起動しスプライト散布」


ガーラン艦長の指示にブリッジクルーが応えた。


「正常受信、起爆機能、確認!」


「10秒指定、起動! 確認!」


「スプライト散布!」


「···起爆、3、2、1」


スプライトガス広域散布による隠蔽が行われる中、シェルター船と谷は爆破され、全ては砂漠の砂に埋まっていった。


「地面はいつでも人に平等さぁ。へへ」


エアグライダーのロニーは、隠し持っていた小瓶の酒を一度軽く掲げてみせてから飲んだ。


ノリアムは微笑んで逝き、エルマーシュ姫はそれにすがって泣き、身内の死に淡白なザリデは自分の感覚に不安を覚え、ややサイズの合っていないパイロットスーツの手首のタルみを気にしてむやみにイジり、隣にいたミコにそっと手を払われてやめさせられた。

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