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砂海鉄鋼機バドリーラ  作者: 大石次郎


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69話 転戦

デッドウェイト化しないよう緩衝ビッグクローは外し、偽装用の追加装甲をバドリーラに装着させてく。


「まぁ今は試作型のS型機があちこちで運用されてるみたいだから、1月くらいは転々とするなら誤魔化せる気もしないでもないぞ?」


「だいぶあやふやだよね」


ジェム姐さんは偽装用の塗装を塗り替え中のバルタンIII改の無重力のドックで、こちらをグイっと見上げてきた。ん?


「オイラはバドリーラは月に預けて、お前達はミコとオババ2人と火星に行く方がいいと思ってるぞ?」


「まぁ、その」


宇宙まで上がってきて暴れてるらしいバドアトンをほっとけないのもある。


でも、それだけじゃなくて、地上の衛星軌道を2人で周回した、あの夢のイメージが現実のバドリーラと繋がってる気がしてる。


いっちょ噛みで首を突っ込んで、途中でとんずらするのも違う気がしてたし、色々半端だ···


「ザリデ! ゼリ・キャン婆達が呼んでます。C級負荷のシュミレーターで合わせるようですよ?」


作業イカボッドに捕まって、制服のアンゼリカが滑降してきた。


「ああ、じゃ、行ってくるから」


俺も再浮上するイカボッドに掴まる。


「死ぬ程のことじゃないって、わかっとくんだぞっ?」


「了解!」


俺達は新作らしいシュミレーターに向かった。ゼリとキャンデはリュウグウクランがバドアトンの捜索を始めることが本決まりしたらあっさりしたもんだ。


とにかくリュウグウは塗装を塗り替え、識別信号を再取得したりしたリュウグウクランの小艦隊とビルボベース選抜の4隻の小艦隊でアステロイド帯を抜け、ちょっと情報が古い感じだけどバドアトンらしい機体が東部シェルを襲おうとした木星系ゲリラを壊滅させた宙域を目指した。


_____



調整槽を出るとメディカルドローンが溶液外に出た私を改めて診断しだした。念入りだ。いつまで持つか疑われているんだろう。


「···」


だが、今日は調子がいい気がした。着る意味が疑問な、布の少ない調整待機着を一応着る。


立体表示させた診断結果はかなりよかった。気のせいではなかったか。


と、近くの端末にDr.マルキからメッセージが入っていた。動画だ。まだるっこしい、舌打ちしたい。


仕方がないので開く。


「バドリーラの捜索に手間取りそうです。アステロイド帯にも既にいないようですね···当面は回復優先で若干性能が落ちても身体を安定化させます。問題ありませんよね? 行き倒れじゃ拍子抜けですからねっ、ナハハハっっ!!」


···しばらくは持つか。確か次の私はまだ胎児だ。ミッションが数年後になって散々データを取られた零号自体が型遅れと判断されてはバドアトンの開発が見切られることになりかねない。少なくとも鉄鋼機としては。


「気に入らない」


死と壊滅が、この時代、私だけで完結するのは気に入らない。


今ならわかる。歴代の私の苦痛が。バドアトンが観測し続けた、この世の苦しみが。


私達はまだなにも体現できてない。


「今の計画は? また月に戻るんじゃないだろうな?」


クィンモール基地は引き継ぎがゴタついていて最悪だった。情報を端末で探る。


私の艦隊は次は木星系ゲリラの本営艦隊の1つを討つ計画らしい。連中は過激派船団とガス盗掘商船団に二派に分かれていた。


「また、木星の木偶人形とガスマフィアか」


なんの足しにもならない宇宙海賊狩りや武装マフィア狩りよりかはマシか。


(バドアトン、またしばらく御用聞きだ)


(構わないが少し食べ過ぎた。吸収構造を改良している···)


(そうか、大事にしたらいい)


思念の接続を切る。


育ってはいる。


「ふふ」


愉快だった。とても。


_____



やっぱり装甲が重いバドリーラ・ディスガイズ!


「よっ」


重いなりに機体を捌いて、完全に宇宙戦に振り切ってるのと妙に長距離航行機能に拘りがある、中型エアグライダーと鉄鋼機の中間みたいな形状の木星ゲリラの主力機ネオ・ユノー2機を、新装ハイレイライフルのクィックショットモードで中破させて脱出缶を使わせる。


母艦を狙われてるから後で西部の本隊に大人しく回収されてくれっ。


俺達は捜索の流れで、どうもバドアトン運用艦隊はなんだかんだで東西公社区別なく弱めの拠点を荒らし回ってる木星ゲリラ対策をやらされてるらしいから、結果的にそれを追う俺達も西部や公社の木星ゲリラ対策にあちこちで参加する形になっていた。


(ぬっ、デカいの来ますよ! S型のエアグライダー!!)


木星ゲリラの艦隊の旗艦らしいのから、S型の重エアグライダーと随伴機2機が出撃してきた。


(S型っ、モガリア系以外で初だな!)


(大したことないですよ。宇宙戦機で、技術や予算やパイロットの質が微妙だと重いエアグライダー型になりがちです。簡単ですからっ)


(Ⅻさんのズーは手に負えなかったけど?)


(アイツは手練れですし、鉄鋼機戦で上がり切らないタチですから!)


上がるかどうか論、来た。


でもって、相手のS型重エアグライダーからハイレイカノン砲2問の狙撃も来た!


随伴機はガードより挟撃狙いで2方向から周り込んでくる。


『姉、行く』


『注意、自機』


光信号を打ち、ミコのユニクスII改とすっかり復帰してるビンのプロトナラシンハIIIは随伴のネオ・ユノーの改修機2機の対応に向かう。


バドリーラはだいぶ大型の相手の有線熱弾ボットも加わった連射を凌ぎながら間合いを取る。


(重グライダーは大体そうですが正面のシールドが固いです。後ろは取り難いですし底面は普通避けるので、上か横から行きましょう。S型でもⅫほどの反応はないですから)


(んじゃ、こういうのどうだ?!)


電磁爆雷で正面に壁を作りつつ、フットバーニアを効かせて向かって斜め下に横っ飛びする!


俺はいい感じに壁造って跳ぶだけっ。後はアンゼリカに丸投げだ。


(跳びたいだけでしょうに!)


ちょっと怒っちゃいつつアンゼリカはノーマルショットモードのライフルで、底を晒すの嫌って下方に逃げた重グライダーの側面のシールドの弱い点を撃って浅く抜いていくらか被弾させシールド展開器を壊し、既に撃ってる2撃目でシールドのない面を大きく削って中破させ、脱出缶をスコーン! と使わせた。


ミコも1機墜とし、ビンも1機撃退して下がらせた。


今の重グライダーが切り札だったらしく、木星ゲリラ艦隊は腰が引けた形になった。ここで、ベニとノース3位が護衛してるリュウグウクラン艦隊から後退信号弾が出た。深追いで悪目立ちするな、ってことだ。


「S型の缶は拾って公社艦にパスしよ。西部艦だとヤバいだろうし」


「優し〜。中身が女だったら公社艦に投げて渡しましょ」


「投げないし···」


俺達はミコ機とビン機と合流し、缶も拾って塗り替えられてるバルタンIII改に帰投していった。


_____



東西公社で取引があったらしく、東部はガスマフィアの方の本営艦隊を狙うことになった。


連中は宇宙空間に孤立した集団である為、艦隊自体が本営だ。ただあちこち小型拠点の占領もしているが統治実体はおざなりで、決起はプロパガンダに過ぎず、おそらく本体は木星圏に留まっているというのが東部の読みだ。


ま、どうでもいい。ゲリラ系艦隊の方が戦力はあるが、ガスマフィアは圧縮ガス缶を搭載していて危険。つまりバドアトンに適任ということ。


(億劫だ。任せよう···)


元々停滞気味バドアトンは任務内容に関心が湧かないようだ。出力は低く、私の五感、身体性、能力適性も仮の安定化で8割といった所。


「制限付き訓練だな。確かに···私も億劫だよ!」


乱戦後、陽動隊と突入隊が連動して、突入を成立させる。バドアトンは突入艇のノトスIVに大型ドローン2機と乗り込み、それに続く。


当然向こうの部隊も反応してくるが、深く入った所でこちらの強襲艦がシールド艦と強引に前線を押し上げ、さらに陽動。


相手の陣形が乱れると、私はノトスIVで突入隊を追い抜いてガス輸送艦群に迫る。


(撃たれない前提の密集ぶりだな!)


猛烈な艦砲と護衛機群の迎撃反応は用済みのノトスIVから離れ、大型ドローンのシールドを盾に鈍い反応のバドアトンの出力を上げ、黒の分解粒子を展開! 数百の錐状部位を造りだし、加速しレイシールドに打ち込みシールドを侵食させ、内部に粒子を侵入。砲台、シールド展開器、接続部位を分解し全てのガス缶だけを奪い、粒子の闇に隠した。


後は闇で用済みの艦隊を包み込むだけだ。


「安心しろ、今は満腹だとさ。普通に解体してあげるよ」


一手間掛かったが、周囲にも十分闇は満ちた。自軍も防衛線を抜け始めている。


私は売れば足しになる不正なガス缶を割らず誘爆させないよう配慮しつつ、粒子越しに伝わる恐怖と憤怒と絶望を味わい、射程内の敵の全てを闇に回帰させた。

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