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砂海鉄鋼機バドリーラ  作者: 大石次郎


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66話 盤古のオドカグヤ

Dr.モノヅカがカグヤ氏のハッキング能力を思念の電子記号化て解釈して開発した無線大型ドローン、これ使えるわ。


「もろた!」


熱刃ドローンと熱弾ドローンに護衛させたシールド展開の自爆反応弾ドローンで、今んとこは形だけ第3射の構えをしとるジャバウォック砲の1基を誘爆させたった。

大型ドローンの残基は4基! ここで、


(ジガII!)


(来たぞっ!)


「来やった。ふっ」


零号と、対空パック盛り盛りのユニクスIIがそこそこはおる東部機群を抜けてくる。


ウチはヒューっと咳き込みの気配を感じ、薬剤の濃度を上げ、ユニクスIIにはドローンを2基当てて東部艦隊の方へ引き離した。あんたはええねん。


(警告。君の猶予は8分余り)


「結構あるやん!! カッコつかんわっ、アハハ」


オドカグヤに応えながら、ウチは機体を零号と対峙させた。


_____



ジャバウォック砲の1基破壊に勢い付いた東部軍の一部が、ジョレオ書記案で上書きされた作戦に基づき緩衝機構を持つ揚陸艦を中心にエルフィンゲート内部に鉄鋼機や白兵戦ドローンを突入。


イズミ司令官は「話が違う!」と、ポーズだけでなく本気でジャバウォック砲の第3射の放出準備を始め、充填出力を感知した従来案に従う東部艦隊に衝撃が走りだしていた。


ラスタ艦隊と海賊艦隊と合流したシーマ改艦隊は、混乱を考慮し旗艦隊の護りを固めるという名目でかなり下がり、さらに海賊艦隊はだらしなく拡がるような陣形を取ってジョレオ書記艦隊に隣接し、光信号で抗議及び罵倒をされていた。


「長かったですね」


「結局は政争の駒だ。生き恥でもある。だが···アルサミオ800万の民にせめてもの慰みを」


直系の艦以外は既に他の艦隊に預け、わずか3艦になっていたラスタ艦隊は紛れていた海賊艦隊から飛び出し、ジョレオ艦隊に切り込みを始めた。


察したスレイマン提督は申し合わせておいた西部艦の一部に光信号を撃ち、効果の薄そうな自艦隊の端への攻撃を始めさせそれに大げさに対処し、ジョレオ艦隊への対応を遅れさせた。


「何者だ?!」


「···?? ラスタ・ヨンゾ艦隊です!」


スレイマン案でもジョレオ案でもジャバウォック砲の1射か2射の違いはあれその被弾宙域への配置で始末される手筈であった。明らかな資料と報告の改竄を理解するジョレオ。


「亡霊めっ!!」


ズーIVが全てのドローンと鉄鋼機と共に放出された。高機動パックの鉄鋼機隊は全機決死の構えでドローンと共にズーIVを守る。


(零号。バドアトン。昔の私。一段低い人の争いに塗れたが、ここが今の私の最大戦力ということだ。···しかし気に入っている!)


全ての味方機を犠牲に装飾華美な怪鳥のようなジョレオ艦まで抜けたズーIVは、全ての対艦パックと無理から装備されたレールガンで艦を撃ち抜き、沈めた。


海賊艦隊は一部が敵と判定され攻撃されたことを理由に威嚇艦砲に加え閃光弾と電磁爆雷を多用し撤退を開始。


ラスタ艦隊は海賊艦隊の威嚇に乗じて急旋回で下がり出し、閃光弾範囲まで来ると再旋回して向き直り、脱出ランチを海賊艦隊の方に射出しながら無人で残存ジョレオ艦隊に突進を始めた。


「光が綺麗だ···」


武装と追加装甲を損耗しながら下がってきたズーIVも、脱出缶を射出後、自爆した。


東部公式ではここで逆恨みを重ねたラスタ一味は壊滅。ラルヨーシュⅫについてはヤズルカン戦で生体調整の不具合で廃棄されたと記録の改竄が行われた。


_____



集束砲を撃ち合う! バドリーラ・リヴァイブも右肩に装備していた。


互いにパックは使い切ったけど、向こうはやたら高精度の無線大型ドローンが1基残ってるっ。


と、ドォッッ!! 最後の1門のジャバウォック砲が放たれ、多く東部軍が一撃で散っていった。被弾しながら無理に撃ったから砲台は誘爆してゆく。

エルフィンゲート内部では突入された部隊にかなり暴れてる気配だ。護り、薄くない?


(死に過ぎ、殺し過ぎだってば)


(ザリデ集中!)


オドカグヤは尻尾の放射熱線とクィックショットレイライフルの連射に、大型ドローンの有線熱刃ボットを重ねてきたっっ。キッツ!


「んがっ」


重力波はオドカグヤに効かないから関連機構を外して機体は前より軽い。でもって、緩衝ビッグクローを外すともっと軽くなるぞ?!


俺はアンゼリカにサポートしてもらいつつ、ビッグクローを熱刃ボットではなくその有線の束を狙って放つ! 俺だって最近は勘良くなってるもんねっ。


有線を掴んで引っ張られ、一方向に釣られた大型ドローンをきっちりハイレイライフルで仕留めた。けど、


「っ!」


ほぼ同時に右肩の集束砲を熱弾で撃ち抜かれた!


(おあいこやで?)


くっそ〜。


(···ザリデ、残り時間は少なそうです。寿命で勝つのは不本意! ジガIIに、最大最速最強の私達を見せてあげましょうっ)


「合点!!」


なんか、艦隊の後ろの方もガチャガチャしてるっぽいしなっ。


「「バドリーラ!!」」


機体を臨界起動させる! 熱刃装備のサブアーム4本と有線熱弾ボット全基を露出っっ。


(上等やっ!)


オドカグヤも発光し、凄まじい出力で熱刃を展開させる尻尾を逆巻かせた!


互いに熱線と電磁爆雷と集束砲とハイレイライフルを織り交ぜながら撃ち合い、加速するっ。


(オドカグヤ、オドカグヤ! 見えてる? あんたは自分がなんの反証かはっきりわかってなかった)


アニメ主題歌を歌う声と一緒にジガIIの思念がこちらにまで響いてきた。


中距離になるとクィックショットレイライフルと有線熱弾ボットの撃ち合いになる。


(あんたとこの間見た零号のコピー武装を見てわかる。少なくとも、初号は人を否定する者。いや、人を許さん人の意志の機体や。あんたはそれが恐ろしゅうて、哀れで、きっと現れたんや)


クィックショットレイライフルと熱弾ボットが相殺すると、近接戦に移行し、オドカグヤはハイレイキャリバー二刀流と熱刃尻尾と機銃。バドリーラはハイレイランスとサブアームと機銃で応戦する!


(···人を許さん。ようわかる。こんな生きモンおらんよな。苦しみに名前を付ける為だけにおるようやで、ホンマ。そやかて)


互いに機銃が弾切れになると牽制し難くなってより激しくぶつかり合うっ。


(見て。ウチ、こんなに戦えてる。ここで戦ってる皆も。野生の動物と変わらへん。皆、生きたいねん。名前のついた苦しみなんかちっぽけや)


オドカグヤの両腕を砕き、こっちはサブアームを全部千切られた!


(カグヤ氏、ウチ、眩しいやろ)


歌が途切れ、彼女の叫びが聴こえた。俺とアンゼリカも泣いちまいながら叫ぶ。


ハイレイランスを誘爆させながら熱刃尻尾を引き裂き、分解微粒子ガスで無力化を図ろうとしたら拡散仕様にできた集束砲でガスを消し飛ばされた。


(···同意。今回の君も、この上もなく)


オドカグヤの光が消え動きは止まったが、バドリーラもエネルギーの使い過ぎで発光現象も収まってしまった。それでも! ハイレイキャリバーを抜いた。シールドもある。各種特殊弾も少々。偏光熱線は展開器が焼き切れてんな。


(戦闘を継続しない。パイロット、ジガIIの生命の停止を確認)


「「え?」」


確かに、急に静かになっていた···


(本機体は自爆シークエンスに入った。警告する。その機体。零号は集合意識体である。仲介する情報体を確認できるが、その本質は、観測者である)


「はぁはぁ、観測者?」


「ふぅぅ、じゃあ初号、バドアトンは? ジガIIの言う通りのモノだというのですか?」


(初号は···おそらく···)


オドカグヤは自爆し、激しく消し飛んでいった。


_____



情報の混乱もあり、エルフィンゲート内部は一時3割を東部軍に制圧されたが、叛逆によるジョレオ書記の暗殺騒動により開戦から4時間半後には東部軍は撤退していった。


エルフィンゲートに甚大な被害を与えたものの、ジャバウォック砲3撃による東部艦隊の損耗は2撃目まではかなり選別されていたとはいえ看過されず、なによりジョレオ書記暗殺の責任を問われ、スレイマン提督は木星方面に飛ばされた。


「まともにやれていれば勝てない要素はなかった」


と周囲に漏らしたというスレイマン提督はこの後、生涯木星圏から出ることを許されなかった。


イズミ司令官はこの戦いの負傷を理由に退役することになったが、ストレス症との噂が絶えなかった。


彼女のその後の消息は曖昧で、地上で父の紹介でカーキャラバンの有力者の元に嫁いだとも、月で古典宗教に入信し福祉活動に勤しんだとも、火星資源公社に就職し官報誌で4コマコミックを描き続けたとも噂されたが定かではない。


そして···


「ナハっ! XIII。XIII。甚だ不完全だが、エルフィンゲート戦でのオドカグヤの戦闘データが手に入りましたよ? さっそく反映させよう」


「了解」


暗いコクピットの中でDr.マルキからの通信にラルヨーシュXIIIは顔を上げた。


バドアトンの脳波感応器が反応し、わずかに輝きだす。


ラルヨーシュXIII達は衛星軌道上の東部拠点アイゼンガルドIIに来ていた。


「ちょっと零号の行方を掴みかねているから、じっくり調整しましょうね! 君は実に耐性が高い」


「···了解」


「じゃ、ね」


通信は切られた。


メット越しのラルヨーシュXIIIの人相はすっかり変わり、幼さは消え、早くも体組織の劣化の兆候が見られ、その目には冷え冷えとした殺意だけが残っていた。


劣化と引き換えに、数ヶ月の訓練と調整によりラルヨーシュXIIIはⅫを上回る戦闘適性を獲得していた。


(バドアトン、私は零号に勝てるか?)


(···XIII。やっと、我々に近しい君に出逢えた)


暗い思念の問い掛けに、バドアトンもまた暗い輝きで応えた。

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