西ワハン要塞戦 3
母艦のバルタンIII改に戻るとバドリーラは、速攻でゼリキャン婆2人と普通にS型機の整備覚えちゃってるジェムから再調整と補給を受けます。
私とザリデはサティーから簡易メディカルチェックを受け、培養兵の私は流動食の経口調整剤をジョッキ一杯飲まされ(最悪!)一旦休憩。
上級パイロット用の待機室で下着みたいな格好で、戦闘配備中だから私はソファにベルトで軽く固定して寝てます。
トイレから戻ってきた部屋着みたいな格好のザリデがバスタオルを雑に投げてきたから被ってあげる。
いくつかある実体モニターでは戦況やドックの様子を確認できました。
「ポリカネード飲むか?」
「調整ゲルでお腹ダボダボですから」
「うへぇ。···お?」
モニターに警告表示共に東部のS型機が表示されました。
すぐにブリッジとも映像通信が繋がる。
「ルーラ、しばらく指示を頼む」
「了解です」
端に秘書官が映り込んでますね。ふふん。
「2人とも、当たりだ! ルドラデリのS型機だ。パックを使い果たし単騎で突っ込んできたっ。前段でロニー機が墜とされたが脱出缶は使えたようだ。今、回収に向かわせている」
「大丈夫なんですか?」
「S型はバドアトンですね。少なくとも今の私は交戦したことはないです。パイロットのラルヨーシュシリーズは嫌な女ですけど」
「アンゼリカ、女のパイロットと全員仲悪いな」
「なにか?」
キッと睨むとザリデは顔を逸らした。ポリカネード飲んどきなさいなっ。
「ロニーのことは回収隊に任せる。相手のS型、バドアトンか。ヤツは明らかにバドリーラ狙いだな。艦護衛はハルバジャンとビンだが、今は継続してミコ機にもガードさせてる。お前達の準備が整ったら入れ替わりでミコは一旦下げて休ませる。機体も限度だろう」
「「了解」」
通信が終わると同時にどんどん更新されるバドアトンのデータがモニターに表示されだした。
「ロニー心配だ」
「ここまで要塞に近付いたら蟲もいないし、ボットやドローンも正常なら脱出缶は攻撃しないですから」
「俺達でS型に勝てるかな?」
「私が西部のS型を倒す為に開発されてたこと忘れてませんか? まぁデチューンされてるけど」
「ん〜、腹パンパンならトイレ行っといた方がいいぞ。バドリーラ借り物だし」
「···哀しみしかないわ」
ホントにね。
私は調整剤の鎮静効果もあってなにもかも億劫になり、チュンが用意したらしいテーブルで固定されたパイロット用のサンドウィッチのランチパックの容器をなんとなく見てたら、いよいよ艦がバドアトンに攻撃されだして大きくゆれ、ベルトで思い切りお腹を押さえられました。
「うっっ」
さっさとトイレにゆくことにしました。ラルヨーシュⅫ! やっぱり嫌いですわ。
_____
損耗したミコのユニクスIIと、ハルバジャンのタロスIVバーニアン改とビンのナラシンハII改、および艦護衛のタロスIIIバーニアン改隊を主体として、バドアトンの強襲に善戦はしていた。
が、随行艦以外の船団は要塞への突入を優先し、東部のドローンとオートボットは崩壊した広域シールドの外側の敵を攻撃する指示だったらしく、結果的に周囲の残機をリュウグウクランの船団で引き受ける状況になってしまっていた。
ガーラン艦長は元々お義理であった上に、直属のヒロシ局長から『可能なら、機会を上手く作って要塞直接攻撃から離脱するように』と指示されていた為、西ワハン要塞への進行は早々に取り止め、温存していた迎撃ドローンと地表オートボットの大半を船団単位で放出させた。
状況が改善するとまずは光信号で乱れた船団の配置を整理し、艦砲援護を成立させると、整備とパイロットのクールダウンの済んだバドリーラ・リヴァイブを出撃させ、代わりにミコ機を下げさせた。
『高火力、高機動、実戦、未習熟』
ミコ機はそれだけバドリーラに伝えて着艦した。
「相手も不慣れっぼいぞ?」
「すぐ慣れますよ。そんなもんだからっ!」
ハルバジャン機とビン機を無視して、3条偏光熱線を撃ちながら突進してきたバドアトンにザリデとアンゼリカは2条熱線を撃ち返しながら対峙した。
「零号!」
バドアトンが歓んでいるのが伝わり、ラルヨーシュⅫは高揚した。
バドリーラが新たなパック装備を解放する構えを見せ、バドアトンがより発光して臨界機動の兆候を見せると同時に、上空、高高度に400基の中型ボットの反応が忽然と出現した。
4式試作自爆シールドボット群であった。さほどの精度ではない光学迷彩と弱電磁界の二重のステルス特性で奇襲を成立させていた。
スプライトガスの過剰散布が行われていることを前提とした兵器。
シールドボット群は錐状のレイシールドを前面に展開すると下方へと加速しだした。
50基はリュウグウクラン船団に向かい、それ以外は方々の艦隊を狙う。
流星のように振り注ぎだすボットに、西部艦隊とリュウグウクラン船団は戦慄した。
(やばっ、パック通るか??)
(4式自爆ボット! 爆薬は極小気化弾っ)
(Dr.マルキ! 単騎で好きにさせると思ったらっ)
ザリデはバドリーラにシュミレーションさせ、アンゼリカとラルヨーシュⅫは互いに顔をしかめた。
「アンゼリカ!」
「···そうね」
バドリーラは電磁爆雷と閃光弾を纏めてバドアトンに放ち、そこにハルバジャン機とビン機が攻勢を掛けると高度を上げ、コンテナを開け直した。
ザリデは機体制御、ロックオンはアンゼリカが担当する。
鉄鋼機用のパックであったが、電磁爆雷を先行させ、通常弾とクラスター弾で50基全て撃墜した。一部不完全ながら凄まじい爆風が起こる。
バドリーラはハイレイシールドとバーニア及び重力環制御でどうにか持ち堪えた。
「キッツいけど、切り替えよう!」
「左腕性能落ちましたからねっ」
リュウグウクランの船団はかなり煽られ、隊列が崩れ互いに艦砲援護する体制が崩れた。爆風で東西ののドローンは吹き飛ばされ、地表ボットも転倒する等して混乱が起きていた。
一方で全ては墜とせなかった西部艦隊全体の被害は相当な物で、3割は撃沈され、ドローンとボットだけでなく両軍の有人機も吹き飛ばしによる混乱が起きていた。
全体としては狙われた西部の軍の被害が甚大で時間差で各所で達成されていた広域シールド突破の優位が帳消しにされた形となっていた。
「くっ」
吹き飛ばしの影響で無理に骨を繋げた左腕がまた折れたビンはバドアトンの有線熱弾ボットを1基落としている間に2発撃ち込まれ中破し、ハルバジャン機に庇われながら後退した。
(めちゃくちゃにされたが、整理はついた!)
「零号! アンゼリカっ、どこだ?!」
思念と共に吠えるとアンゼリカとザリデも応えた。
「ここですわ!」
「脱出缶用意しろよっ!」
降下してきたバドリーラは12基の有線熱弾ボット、迎えるバドアトンは残存の5基の有線熱弾ボットを放ち合い、相殺し、互いにハイレイライフルを撃ち合い、シールドで弾き合った。
_____
零号との激しい撃ち合いが続く。
「はぁはぁ」
薬剤は使わない。バドアトンが受け付けないから。変な感じがする。見られてる? バドアトンでも、零号でもない。
零号はパイロットのデチューンに合わせて機体も汎用化されてる。なんか不恰好になってるよ。練習機じゃないんだから。
観測する限り、徐々に上がってるけど出力は想定の6割強。パックと有線ボットは使い切ってる。パックありきで重いレールガンをオミットしたのはミスだね。
バドアトンにテレパスアタックは効かないはず。あとはハイレイランスと、なんのつもりか? 緩衝ビッグクローを装備してる。
「鬱陶しいな」
演習やシュミレーション、データ取り目的の簡単なミッションと違い、変なことするヤツが多い。噂のミコ・ヒダの有線ボットと狙撃精度も異常だった。
「はぁはぁ」
ここまで無駄に消耗した。というか動き変だな。踊るような無駄な動きが多い。隙をついても反応する。アンゼリカVIのサポートか? 大体コイツが一番意味がわからない。洗脳された風でもなく、反逆者気取りでもない。
「気に入らない」
バドアトン、零号との交戦だけじゃない。やっぱり相手のパイロットの思考に関心を持ってる。
私に飽きてるのか? やがて私を喰うくせにっ。
(···シュ···ヨーシュ)
(っ!)
思念? テレパスアタック?? いや、船、ヤツらの母艦からだっ。母艦に思念兵器を?? ···違う。人だ。サイキックか培養兵の類いがまだいるのか?
(ラルヨーシュ)
姫だ。やはりモガリアの姫を積んでるのか! とんだ棺桶船団だっ。
私は嗤う。機体も使わずバドアトン越しにテレパスアタックか。化け物めっ。
私は無視と決め、こちらが状況で不利を取られるのも時間に問題の零号との交戦に集中し、バドアトンに微粒子物質をバラ撒かさせた。
「もういい、大した物でなかったな!」
バドアトンの機体特性は散布した微粒子物質の念動力操作と触媒化っ。このガスの中では相手は制限を受け、こちらの認識力は高まり、駆動部に物質を潜り込ませ損傷させることも···
(?!)
いきなり発光現象を起こし最大出力で突進してきた! 初見だろ?! ガスで取り込む前に緩衝ビッグクローとヴァルキリーメイルの併用でハイレイシールドを破り実体シールドに組み付いてきたっ。
組まれたままふっ飛ばされる!
「なんかヤバそうだが、なんもさせないぞ!!」
「特に賛同してませんからねっ」
電磁界を解除してハイレイランスを打ち込む構えの零号っっ。
シールド装備の左腕を自爆指定でパージしてその炸裂と同時にハイレイライフルと偏光熱線とクラスター弾を連射してやる!
左腕とビッグクローを失いながら例の踊るような動きで爆炎から飛び出てきて同じ射線に2連射してくる! どっちの読みだ?! 1撃目は帯電ガスの集約で防いだが、2撃目で左胸部に撃ち込まれた。
(ここまでだ)
「くそっ」
バドアトンが勝手に電磁爆雷をバラ撒き、ガスを盾にしながら撤退の構えを取った。
私は怒りに任せて去り際にヤツらの母艦の、姫の気配を感じた位置を撃ち抜いてやろうとしたが、
(ダメだよっ!)
古風なドレスを着た、幼い私? の幻像が私に叫び、撃てなかった。
「···オリジナル、か?」
交錯時、ガスで駆動部を少し削ってやっていた零号は追跡する余力はないようだった。
当惑することばかりだ。
(面白かった、か?)
「え?」
バドアトンに問われ、自分がメットの中で笑っていることに気付いた。嘲笑でもなく、機嫌が、いい。
「ふ、ははっ、訂正するよ。ラボの外は···刺激的だ!」
私と入れ替わりにエアグライダーとバッズ系機体が追撃に掛かっていた。あの船団の余力なら追い払うことはできるだろう。
要塞の方は既に西部艦隊の残像勢力に取り付かれだしていた。
見れば、こちらの母艦のクマリエはさっさと要塞の先のワハン回廊方面に離陸し、信号弾を撃ってきていた。Dr.マルキらしい。
「またな、零号」
私は要塞守護の自軍を全て無視し、向ってくる西部軍機は蹴散らし、薄情な母艦へと帰投していった。




