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砂海鉄鋼機バドリーラ  作者: 大石次郎


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46話 ガーキンの切り方

閃光! 最悪っ。ガチの交戦だとまずターゲットまで近付くのに四苦八苦して、護衛機の俺達のパックを使い切ってしまい、その後囲まれてしまった。


ミコなんて目を付けられて相手のS型機にガッツリとパック攻撃されて距離を取られてた。


マズいマズいマズいっっ。


焦ってる間に、バドリーラは相手と相打ちのようになって閃光を放ったいた。


「嘘だろっ?!」


「落ち着いてっ、アリムVが自爆しただけ! 回収できるっ!」


だがまだ4機バッズIVバーニアンが張り付いてた。


閃光が消えると煙を上げ、一部結晶化した右脚と胴体だけになったボロボロのバドリーラが落下してゆく!


下方は蟲達が爆発と光に一旦退いてすり鉢状になっていたが、すぐに戻りだしてる。落ちてるバドリーラに反応もしていた。


「邪魔っ!」


俺は有線熱弾ボットが1基しか残ってないマナ・リーラIII改を救援に向かわせようとしたけど、1機

墜としても邪魔されるっっ。


そこへ、こっちもボロボロなミコのマナ・リーラIV改とビンのナラシンハIIが援護に来てくれた!


「ザリデ!」


「よしっ」


俺とアンゼリカはこの場はミコ機とビン機に任せて強引に抜け、最大加速で落ちてゆくバドリーラに迫る!!


「アンゼリカっ、投げる!」


「ちょっ?!」


蟲の殺到に間に合わないからっ、俺はレイライフルを捨てて残りの有線ボットを掴んでバドリーラに向けて投げ付けた!


「ぅっっ!!」


アンゼリカは必死でボットのスラスターを制御してバドリーラに有線を絡めて捕獲っ。


「取ったぁ!! 姫! 生きてるっ?!!」


有線越しに呼び掛けながら、最後の電磁爆雷をガスや電磁波に構わず追いに掛かる蟲達に撃ち、バドリーラを引き上げ撤収に掛かる! 撤退信号弾も撃つ。


蟲は激昂しても追える限度があるし、追い付ける物じゃない。

俺は機体にバドリーラを抱えさせた。応答はないがコクピットに生命反応はある!


「生きてる!」


「まだ!!」


護衛機を展開しつつ一定距離で観測していたベアドーIIIが、護衛機に守らせたまま接近して砲戦を挑んできたっ!


「なんだよっ、観測してろよ!」


「もう決闘じゃないですからっ、撤退信号弾も知ったことじゃないでしょう!」


有線ボットはバドリーラに巻き付き、レイライフルと電磁爆雷はもうなかった。


ミコ機達の位置までまだ距離があるのと、ミコ機達も満身創痍だ。こっちはバドリーラを抱えて重い!


ベアドーIIIは執念深く艦砲を撃ち続けて距離を縮めてきたが、不意に減速反転して下がりだした。


高高度からロニーが率いるエアグライダー隊が接近したからだ。


ベアドーは戦闘艦じゃないからデータを持ち帰れないリスクの方を重視したんだろう。


「助かった···」


「世話の焼ける姫様ね」


俺達は途中でミコ達とも合流し、ロニー隊の護衛で母艦まで中破したバドリーラを連れて帰還できた。


忌蟲剤ガスのせいで大急ぎで除染と換気が必要だったが、取り敢えずバドリーラの周囲だけはドームシートで囲って衛生を確保した。

居合わせてる全員が保護スーツ等を着たまま見守る。


「カメラが死んでるけど、機体の誘爆と中の汚染は大丈夫そうだ。でも両腕の反応がないぞ? サティー後で任せる! ゼリキャン、ハルバジャン、開けんぞ?!」


「「「了解!」」」


作業イカボット達にロックを解除させ、座らせたバドリーラの結晶のこびり着いたコクピットを強化スーツを着たハルバジャンに開けさせるジェム姐さん。


中では両腕が結晶化したエルマーシュ姫が気絶していた。


「姫しゃまーーーっっっ!!!」


ブルーナさんが号泣してメディカルスタッフのサティーを押し退けて駆け寄ろうとして、シークレットサービスの主任にとっ捕まえられていた。


「アレって」


「うん。持ってかれそうになったんだな···」


俺とアンゼリカは、十中八九自分達が次に乗ることになる今は壊れてるバドリーラを見上げていた。


_________



俺のダイナーはそれなりに繁盛している。


バーガーショップの下働きを辞めたばかりの、配給タグ時代は合成ビールと酒のアテになるようなフードパックをそのまま出すだけの店だったが、安かったから客入りはよかった。


だが客層が荒れて当局から目を付けられだすと移転して、合成肉のホットドックとナゲットそれから芋が安く手に入らなかったから芋粉でポテトカウチを作って出す店を始めた。

単価はさらに落ちたが当時は停戦景気でよく売れた。西部の質のいいラコーカが上手く仕入れられたのも利いた。

俺が一推しした本格ジェルマは安い店に場違いだったようでさっぱりだったが。


それから結婚してからは金が必要になったから、いくつか仕事を変えて、その頃はまだあった公社系の不動産管理局の支部で8年も働いた。


妙なもので、俺は当時のことは家と仕事以外の知人のこと以外はほぼ何も覚えていない。別にヤバい仕事をしていたワケじゃなかったが。


漠然と時は過ぎて、俺は外見も戸籍上の年齢も中年になりつつあった。


だが貯金は溜まった。『バーガーショップで3年は働く』オリジナルが求めた活動報酬は果たしていたが、結果がコレでは虚しい気もした。


俺は天然ビールを出し、ラコーカやジェルマも出さないではないパブを始めることにした。


店名は『シティドッグ・ウッドトレイの店』。


大手でもないのに安さだけでやっていける時代でもなかったから、気安い空間で、手頃に飲み食いできることに注意して店を切り盛りした。


ちょっとフードメニューに力を入れ過ぎたのかもしれない。気付くとパブではなくダイナーになっていた。


忙しさと不動産屋程儲からないことに妻を業を煮やして子供と出ていってしまったが、仕方ないさ。


俺は俺の仕事を続けた。


今日も利益率はともかく店は繁盛してる。


「···今日未明。東部連合ネルバナ自治大州、特別軍事施設でテロが発生しました。被害は微小であるものの、特殊なガス等の流出が認められ、周囲の立ち入りは制限されています。首謀者のクローン兵解放戦線を名乗るテロリスト集団構成員ハバード・レッドカフスは現地で速やかに射殺されました。一部で首謀者が特別軍事施設に所属していた、との報がありますがフェイクニュースです」


店舗契約で設置とチャンネル指定が義務付けられてる店の実体モニターのニュースで、合成キャラクターが入力された通りに空虚にニュースを読み上げていた。


「アリムシリーズの後継、アリムセカンドシリーズの開発は頓挫した。ハバードの婆さんの最後のお勤めだ」


今の今まで稀に来る客だと思っていた男が唐突に表情も声色も変え、天然肉のバーガーにかぶり付きながら言い出した。


「そう···ですか」


冷や汗が出る。久し振り自分がなにか自覚する。


「お前の兄弟はもう生まれない。コストに見合わなくなってきたしな。東部も細るさ。おっと、今のは忘れろ?」


「はい」


男はバーガーを食べ切りジェルマを飲んで立ち上がった。


「ガーキンを厚く切り過ぎた。天然物だからって、あんまりはしゃぐなよ?」


「はい」


男は今は価値の下がった配給タグを山盛りカウンターに置き、離れた他のカウンター客を困惑させて退店していった。


俺は呼吸を整え、タグと男の食器を回収すると、いつもの店主の顔に戻った。


「オーナー、あの人知り合いかい? 何度か見掛けたが??」


他の客が聞いてきた。


「いや、古い時代の人間さ。もう来ないよ」


俺は厄払いに、カウンターの客全員に好きな飲み物を1杯奢った。


相変わらず無駄に本格的なジェルマは誰も頼まないな。

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