4話 初仕事 2
俺は汎用リーラ・改のパイロット席の後ろに収納予備席を補強した後部席に緊張して乗り込んだ。
簡単なモニターと操作盤も取り付けられてる。
「ザリデ君、スーツの気密チェック大事だから」
メインの前部席は当然ミコだ。
「チェックする!」
作業機の2級ライセンス取ったけど、初仕事が鉄鋼機の後部席とはっ。一応2級範囲内の運用だが、ヤバいっ。
ここで、ガーラン艦長と動画通信が繋がった。
「相手は現地に張り付いてるただのオートボットだ。1回で片付ける必要もない。むしろ予測がつき難い野生の砂蟲に気を付けろ」
「うッス」
ドックのすぐそこにいるジェム姐さんとも動画通信が繋がった。
「貴重なサーチドローン1機犠牲にしたんだっ、掃討は一発で片してこい! 鉄鋼機を1回出撃させる金でいくつドーナツ作れると思ってんだっ?!」
「うッス···」
なんも思ってないッスっ。つか、ミスする前からちょっと怒られるんだよな。
今回リュウグウクランは、ここらの自警団とカーキャラバンからこの間の地震で砂漠から露出した谷から確認された高火力の中型オートボットの駆逐依頼を受けていた。
埋まってた谷から湧いたってことはなんらかの工学遺物が奥にあるってこと。
スプライトを撒きながら谷に入れて90秒ちょいで撃墜されたジェム姐さんのドローンのカメラと光学センサーによると、確かに奥になんかあった。
ドックのハッチが開いた。もう谷、というか砂漠の裂け目は見えていた。
「ミコ・ヒダとザリデ君、リーラ・改で出るよ〜」
「出ますっ」
「ザリデは初仕事だ、落ち着いてやれ」
「ちゃんとやれよっ!」
グリルポークIIの後部ハッチから俺達の機体は出撃した!
「うっはっ」
カクンっと、落ちてから中空から加速する!
「交戦中に出る時は、この時狙われたりするからね」
「そんなゴリゴリ戦闘してんのか?」
「場合によるね〜。スプライト撒くよぉ」
スプライトガスで有視界戦までは探知を阻害しながら高度を下げる。
「ザリデ君は手動で光学探知。一通り済んだら左肩部のサブバルカンで威嚇。無駄撃ちは厳禁。オートボットは反応するけど怯まないし、カウンター厳しいから」
「放置無人機の挙動は採集業やってる時も散々気を付けてたから」
「頼もし〜」
くっそ〜、お子ちゃま扱いしやがってー。早くソロで2号機乗れるようになってやるっ。
「まず射線に入る前にカマして突っ込むよ?」
「お、おうっ??」
いきなり3基背負ってるコンテナの1つから閃光弾と電磁爆雷弾のミックス缶を解放して、ガスで大まかな狙いになっても器用に谷に拡散して撃ち込むミコっ。
撃って即、加速!
光と電磁球が炸裂する中に突入するっ!
中では光と電磁球にショックを受けたり丸焦げにされたりして蜻蛉型の砂蟲、スナヤンマがバタバタ落ちてくの激突してベシャベシャ潰れてく! ぐわ〜っ。
でもって谷の中に蟹型オートボット、ディザートガナータラバ系の機体が7機! 俺はシュミレーション通り、後方の4機に光学センサーの照準をなるだけ精確に調整する。
速攻、固めて熱した砂を電磁界射出する熱塊砲を射ってくる前方の3機への対応と、まだ当然中空で展開したままの電磁球の回避はミコ任せっ!
「よっ」
曲芸みたいな動きで電磁球を盾にしつつ、結構引き付けて、右手のマシンガンで数発くらいの短い射撃で3機をノーミスで仕留めてくっ。
ミコ、普段ふにゃふにゃしてるけど凄ぇ!!
_________
ミコは自分の見立て通り、ザリデが度肝を抜かれてる風ながら加速と曲乗りの中でも目と、三半規管が追い付いて光学センサーでしっかり後方4機の詳細データを取り切ったことに満足を覚えつつ、向こうも詳細認識を終えて精度を増した熱塊砲掃射をフットバーニアを利かせて回避した。
谷の壁面側に飛び、一瞬射線を外し、再攻勢に転じる。データ取得後は機体のオートサポートが増す。
マシンガンによる一方的な攻撃で2機を撃墜。そこからは相手も反撃してくるが、ザリデが教えた通りに少ない掃射で的確に威嚇したので、ミコにはイージーな対応となった。
回避突進しながら1機を撃破し、近付き過ぎた最後の1機は左手首に格納されているレイキャリバーを展開してエネルギー刃で切断し仕留めた。
「ふうっ、いいじゃんザリデ少年!」
「そりゃどうも、あんた曲芸だな。舌噛むぜ」
「むふふ。もっと褒めていいよ?」
ミコ達は初期対応完遂の信号弾を撃ってから、機体の有線探知機を出して、改めて谷の構造とオートボットの残機や大型の砂蟲の有無を調べ、問題無いとみると、一旦、谷の真上に上がった。
スプライト散布を切り、だいぶ近付いていたリュウグウのグリルポークIIと通信する。
「いけたよ〜。奥にあんのはシェルター船っぽい。オートボットと同じ80年前後前の型だね」
「ここらでその時代だと、モガリア紛争末期か。地元の自警団やカーキャラバンには報せない方がよさそうだな···」
「船の探査隊組むならオイラも行くぞ! いいパーツありそうだ。イヒヒっ」
「俺、このままミコ機に乗ってていい感じッスか?」
「問題無い。水分を取っておけ」
「乗っとけ乗っとけ〜、オイラも行くぞー」
リーラ・改の2人が経口補水液を取る中、グリルポークII内では谷のシェルター船の探索の準備が慌ただしく行われだしていた。