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砂海鉄鋼機バドリーラ  作者: 大石次郎


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26話 ピンクのアンゼリカ 2

先に跳ばれた! 相手はミコやビンとはまた癖は違うが、スラスターと四肢の反動と向き調整だけで、踊るようにオートボットと設置砲のペイント弾を避けつつ、こっち撃ってきたっ。


盾の耐久値判定狙いだ! 今盾失くすとノーアイディアだっ。


俺は極端なくらい後ろに勢いよく下がって避けるっ。そのままコンテナの陰に入る。


「あはっ、ホント臆病ですね!」


着地した途端、後ろから詰めてきたオートボットを即、沈黙させ追ってくるっ。


凄腕で、オートボットも減ってきてる。演習機のバーニアでもこのままピョンピョン飛んでりゃ向こうその内勝てるだろうが、そんなシラけるやり方はしないだろ。


今、すごく優位に感じてるだろし。


相手は地表からターン時のロスがほとんどない挙動で加速して追ってきた! よしっ。


機会は1回、ミスできない。位置取りしつつバレないように角を曲がる際の脚部とマシンガンを狙ってる体で、ちょこちょこ撃つ。


「それ、当たらないからやめた方がいいですよ? ふふ」


そろそろいけそうなポイント!


「近付いてみろよっ? メイティーの方が上手かったぞっ?」


「···気安くメイティー君のこと言うべきでないですっ!」


どんな技術だよ? ていう屈んで回転して避けながらのスライディング挙動からの起き上がり加速でそのまま低空飛行で落下の勢いも足して反動で一回転しながら迫りつつ、正確に撃ってきた! 動き、変態過ぎるだろっ??


回避がキツいキツいっ。盾も使わざるを得ないが、耐久値は残す!


間合い、入った!!


「よっ」


「?!」


俺はコンテナ壁に手放した盾の方に機体を跳ばし、設置クローで裏を掴みながらバーニアとスラスターを利かしてサンドボードのように盾でコンテナ壁を火花を散らして滑って回転し、突っ込んできた相手の機体の頭上に回り込んだ!


「らぁっ!!」


そのまま足の下の盾の面でカバーしながらありったけのペイント弾を撃ち込む。


相手は初めて盾を使い、カウンターでこっちの盾の耐久値をゼロにしながら避け、下がって避ける。


相手の盾の耐久値判定のゼロになり、弾を撃ち尽くし、いくらか被弾した状態で、下がった先で計算してたオートボットにいい感じで囲まれた。


無理な挙動で教官機の脚部関節が歪んでショートしてる。


「実戦じゃないですから」 


悔しげに通信が入り、相手機にオートボットのペイント弾が一斉に撃ち込まれた。



···で、その後速攻で来たグラングリフォンベースの警備隊に俺達は拘束され、同じ拘置室に入れられた。


俺も? 意味わかんないんだけど??


俺は出された水とめちゃ硬いビスケット? を口にしながら、拘置室の端の方で膝を抱えてめ〜ちゃ小さくなってる、信じられないが、上から下まですんごいピンクな同年代くらいの相手と話してみることにした。


「あんたさ、俺まで拘束されんの意味わかんないから、この演習で勝った方の天才の子は無実です。私の方はピンクのミジンコです、て証言してくれよ」


「ホント最大に嫌いなタイプです」


「あんたさ、水くらい飲めよ。死因、脱水症のピンクのミジンコになるよ?」


「次、ピンクのミジンコと言ったら頭蓋骨を握り潰しますから。それから私の名はアンゼリカ!」


言いつつ、ピンクのアンゼリカは水は飲んだ。


ここで看守のギルドスタッフが来た。


「出ていいぞ? それから正装しろ、とさ」


「「は?」」


2人で戸惑った。正装?



約30分後、正装(制服じゃなくて私服のフォーマル服の方!)させられた俺とアンゼリカは迎賓区画のレストランにきていた。


貸切の店内では、わざわざ演奏オートボットが生楽器でっ、クラシカテオミュージックを奏でている。


オートボットの演奏に見惚れていると、隣の青のフォーマルドレスを着たキネマ動画女優みたいなミコに肘で軽く押され俺はテーブルに向き直った。


リュウグウクラン側は俺、ミコ、艦長。


東部側はやっぱピンクドレスのアンゼリカ、とベイソンとかいうアンゼリカの管理主任だった。


全員フォーマル服。生まれて初めて着たわ。


「ミコ・ヒダ氏は件のS型機のパイロットではないのですね」


「ええ、もう彼女はS型機には乗らない心積もりのようでして」


「懲り懲りなんで! てへっ」


おどけて見せたがベイソンは無反応。気まずいミコ。


「マリネリス工房がテストパイロットは非公式で行きたいと」


「そうですか、こちらとしては」


「おためごかしですね」


ムスッとしてたアンゼリカが席から立ち上がった。


「どうせすぐ殺し合うだけ。君も実戦では死ぬだけ···サロンに行ってきます」


アンゼリカは俺に言って、1人でサロンの方に向かった。俺はまだコース終わってないのに、と高い肉を食べていたらミコに顎で(行け)と促された。


俺〜?



俺はやたら生花が飾られてるサロンに軽食と飲み物を乗せたモービルワゴンを連れて入った。


ソファに座ってるピンクのアンゼリカは童話か絵本の人物だ。まぁ童話とか絵本とかあんま読んだことないけど。


適当に飲み物と料理をアンゼリカの前に置いて、俺は俺の分を持ってやや離れた席に座った。


「···こっちの機体のパイロット、俺より強いし、あとあの機体、普通じゃないぜ? もうほっといた方がいい。怒るだろうが、メイティーも戦うべきじゃなかった」


「君とメイティー君との関わりは?」


俺はオアシスでのことを話した。


「そう。メイティー君らしいですね···」


感傷に浸ってる感じだからもうちょいフォローしてみようと思ったが、いきなりアンゼリカは料理をモリモリ食べて、飲み物で飲み下した。


「普通の食べ物久し振りに食べましたわ」


ハンカチで口元を拭い、また立ち上がるアンゼリカ。


「君、名前は?」


「ザリデ・ブルーレイク」


「ザリデ、培養はされていないようね」


培養? ああ、ラボの調整兵士か···


「今の私の! 最大の力で叩きのめしてあげるからっ、脱出缶の中でミジンコは自分だってわかりなさいねっ」


「アンゼリカさ」


俺も立ち上がったが、


「さよなら」


アンゼリカはきっぱり言って立ち去っていった。


「んだよ、たくっ」


東部のS型機って脱出缶付いてたっけ? はぁ···

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