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2話 光る砂漠と空 2

生まれて始めて飛行艦に乗船した俺はドックで大興奮だった!


「凄ぇっ、今飛んでるんだよなっ? 窓はっ?」


「窓? あー、ジェム。ドックに窓あったっけ?」


鉄鋼機のパイロットは東洋人の女で、10代後半? ちょっと年上くらいだった。若っ。亀マークの青いパイロットスーツを着てるけど、軍のじゃないと思う。蟲狩り屋?


この船はたぶんわりと小さい方で、目立つのは鉄鋼機2機と、あとは作業機2機と畳んだエアグライダーが3機くらい。脱出艇はドックに無い。


ゴーグルを外してメカニックの人達が作業する中、俺あちこち見回してた。


「ねーよっ。つか、そのキッズ邪魔だし危ねーから船室かどっか連れてっとけよっ」


ツナギを着た赤い髪の子供が怒鳴ってきた。ジェムだっけ? 口悪い子だなー。


「俺、14だぜ? ジェム。俺、年上!」


と言ったら他のメカニックの人達とパイロットの人が笑いだした。


「オイラは27歳だっ!!」


大激怒のジェム、さん!


「えーっ??」


「取り敢えずこの子、艦長とこ連れてくわ〜」


「弾代の足しくらいは徴収しとけよ? グリルポークはタクシーじゃねーかんなっ。オイ! そこっ、作業中にドーナツ食うなって言ってんだろっっ。それオイラのココナッツココアだしっ、ブチのめすぞぉーっ!!」


ジェムさんは工具を持ってポッチャリしてる他のメカニックを追い回しだした。チビだけど短気だ···


「ジェム子は癇癪持ちで軍やメーカーで働けないからウチに来てんだ」


「へぇ」


「じゃ、行くよ〜」


「おおう」


さっさと船内への出入り口に歩きだしたから俺は慌てた。


狭い通路は不衛生じゃないけど、錆が目立ってて古めかしい感じ。俺は砂まみれのヘルメットを取った。散らかしちまうな。


「軍艦って詳しくないけど古い船だな」


「現役のグリルポークはIVね。この船はII。改造してるけど二世代前の船」


払い下げ、とか?


「は~、ここのみんなは蟲狩りなのか?」


「蟲も狩るけど、鉄鋼機2機とグリルポークできることならなんでもやる。エアギルドの組合員だよ」


「エアギルド! カッコいい〜」


悪く言う人もいるけど、自由なイメージあるっ。


「よかないよ。正業に就けない軍隊崩れのあぶれ者ばかりだし。タチの悪いのもいるから、互助会兼相互監視ってヤツね」


「ええ〜?」


そんな感じなんだ···


「君、あんな砂漠で何してたの? カーキャラバンからはぐれた風でもないけど?」


「俺、個人で砂漠の原石採集業やってるんだよ」


「マジで? エアギルドよりハードだね···」


「そっか? ウチの親族大体この仕事だぜ? もうあんまり残ってないけどさっ、へへ!」


真顔になるパイロットの人。あれ? 採集業者同士だと、身内ほとんど残ってない、って定番のネタなんだが??


「取り敢えず、艦長に会って。それから私はミコ・ヒダね」


「あ、俺はザリデ・ブルーレイク!」


「ふーん。作業機のライセンスとか持ってる?」


「3級は。仕事でたま〜に使うから」


「ふ〜ん」


そんなこと話しながら狭い通路を進んだ。


_________



黒い肌の中年の男の改造グリルポークII艦長は、艦長席から身を捻って入ってきたミコと被救助者を見た。


少年は典型的な採集業者とサンドボード乗りの中間のような格好で、砂まみれであり細身で小柄しかし健康そうに見えた。

目つきもしっかりとしており、良い子供を生かせたとこの時点で艦長は満足していた。


「うおーっ、ブリッジだぁ! 飛んでるっ」


防護シャッターが降りていない為、日差し対策で明度は下げられていたが、窓から空と砂漠が見れ、ザリデは興奮した。


が、ミコに肘で腕を軽く押され、内心とは裏腹に不機嫌顔を作った艦長に、ザリデは慌てて向き直った。


「ザリデ・ブルーレイクです! 個人で原石採集業をやってますっ。叔父と従兄弟2人と···あと遠めの親族が何人か存命ですっ!」


「ガーラン・チャモイだ。このグリルポークIIの艦長とクランの代表をやってる。クラン名はリュウグウだ」


「リュウグウってなんスか?」


「海のおとぎ話さ」


「海···」


内陸の砂漠の住人には縁遠い物であった。


様子を見ていたミコが口を開いた。


「ガーラン。この子、パイロットの適正があるかも? ボードの立ち回りは誰にでもはできないし。取り敢えず雑用と作業機乗りで雇わない?」


「えっ? 俺、スカウトされてる??」


「ちょっと前のオアシスベースで2号機のパイロットが抜けちゃったんだよ。君も生身で蟲と追いかけっこすんのはもういいでしょ?」


「んん〜···」


ザリデは他の生活を知らなかった。


艦長は椅子を回転させてザリデに向き直った。


「ザリデ・ブルーレイク。補給に寄る次のオアシスで降り、採集業も辞めてオアシスの商店で見習いでも始めるのが一番賢いが、どうする? ここに仕事の席はあるが、エアギルドもカタギとは言い難い」


「···窓、見ていいッスか?」


「明度、少し上げてやれ」


ブリッジクルーはブリッジの窓の明度をいくらか上げた。砂漠と空は光を増した。


ザリデは吸い寄せられるように窓まで近付き、そのまま近付き過ぎてヘバり付いた。


「···」


奇異な様子に困惑するブリッジクルー。


ザリデは顔を窓から剥がし艦長に振り返った。


「俺も、空で暮らしてみたい気がする!」


ザリデ・ブルーレイクはエアギルドクラン、リュウグウのメンバーになった。

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