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18話 東から来たネイティー 2

ボクは高台の4階建ての古びたビルの屋上の砂まみれの塔屋の上にいた。


朝陽が差す。


「ランスロ、いやランスロの兄弟達にも伝えよう。この星は美しい! ああ本当にっ」


両手を広げて日差しを感じる。


城壁と城壁を囲む蟲除けの電磁波塔の向こうに城壁を喰い破ってしまいそうな大砂蟲が姿を現した。


ボクを見ていた。声が聴こえるボクが不思議らしい。


「生きているんだね、世界がっ。零号機のパイロットに会いに来たけれど、美しい物を見れた。ポリカネードまで飲めた! 友達もできた。よ〜し、もう少し、冒険をしよう!」


ボクは塔屋から飛び降り、隣の3階建てビルの屋上に飛び降り、その隣のビルの壁の交互に跳んで路地に降りて、野良犬を驚かせ、


「ごめんね」


と誤って通りに歩きだした。


戦うこと以外のことをしている人達ばかりがいる段々目覚めてゆくオアシスを、ボクは歩いてゆく。


_________



1,15倍速がちょうどいい。黄色と黒の塗装にした。イカボット2体の補助を受けながら、リーラ改のシュミレーターをやっていた。


ハイスコアもいいが、現実でできない動きや起こらない敵の挙動を覚えても返って危ない。


教習所での練習機のリーラ・トレーナーを使った実機演習は2時間ちょいだけだったが、実戦や作業機のミケタマ改での演習の体験と感覚を合わせて摺合せてゆく。


よ〜し、だいぶいい反応に···


とっ、いきなり強制停止させられてシュミレーター開けられた!!


「うわぁっ?! ちょっ? 何? 誰??」


ゴーグルを取って振り返るとミコだった。


「ミコ? あれ? ジェム姐は??」


「とっくにドックだよ。ジェム子は整備長だからね? というか加速設定のシュミレーター1時間以上籠もるとかっ、やめな? 眼球と脳ミソ、ぱーんっ! なるよ? あと」


「あなた! いいですね?」


「興味深いわぁっ?!」


いきなり、初老の白衣の女性2人が割り込んできたっ。ベタベタ触ってくるやらシュミレーターやイカボットのデータを直に取り出すやらっ。


「どぉっ? え? どちら様??」


「左がゼリで、右がキャンデ。脳波感応器の専門家。バドリーラの整備と調整用に派遣されたんだよ。頭オカシイ人達だから少年、気を付けな」


うんざり顔になってるミコ。


「えええ?」

 

「じゃ、キャンデ。タフマ脳活性薬を使ってみましょう」


「ダメよゼリ。ここはリボビ活性薬の方が」


「ちょちょちょ??」


なんか射たれそうですけどっ!


「はいマッドサイエンティズムそこまでー! あんた達、ほんと懲りないよねっ」


ミコにシュミレーターから引っこ抜かれる感じでレスキューされた。


「あ、ミコさん!」


「ちょうど良さそうなのにっ」


「次、この子にちょっかい掛けたら、また火星のマントルにブっ込むからね?」


「「ひぃ〜〜っっ??!!!」」


凄まれて抱き合って悲鳴をあげる2人だった。


そのまままだ見慣れないグリルポークIIIの通路まで運ばれたけど、段々沽券に関わる気がしてきて「降ろして」と降ろしてもらった。


「ザリデ少年さ、結構のめり込むタイプみたいだけど、目薬差してからちょっとは外で気分転換してきな? チュンさんがスパイス買いに出るって言ってたよ?」


「スパイス?」


シュミレーターしないなら実機演習か座学の確認でもしたかったんだけど···ま、いっか。


________



で、適当に私服に耐熱マント羽織ってまたオアシスベースの街中に出てきたワケだけど、


「うひょーっ、そう言えばオイラ、街に出るの3ヶ月ぶりくらいだぞ?」


俺、チュンさん、厨房スタッフ2人に加えてなぜか浮遊するディスクモービルチャリーに乗ったジェム姐さんも来ていた。


「整備長、忙しいんじゃないんッスか?」


「新しく交換した機体、どれも基本は整備済みだったし、バドリーラは婆さん達がやってくれるし、新しい艦の方は艦整備班も来たから、今はちょっと手が空いたんだぞ?」


私服、耐熱マント、日傘、サングラス、耐熱グローブの重装備の姐さん。


「ふぅん?」


「じゃ、あたしら市場に言ってくるから日が暮れるまでに勝手に船に帰るんだよ?」


スタッフ2人と護衛ドローン2機と市に去ろうとしだすチュンさん。


「え? 手伝いますよ?」


「アレよ」


チュンさんは市の入り口に掲げられた『モービル機乗り入れ禁止』の電子看板を差してきた。


あ〜···


結局、姐さんを1人にできないから護衛ドローン2機を連れ、2人で観光することになった。


「今度は姐さんと観光かぁ」


「丁重におもてなしするんだぞ?」


がっ、


「友達!」


「おおっ?」


いきなり実体看板の上から話し掛けられた。ニッコニコのこの男はっ、


「なんだ、無職のネイティーか」


「不審者デス」


「東から来たネイティーだよ! エヘヘっ」


「ザリデ。お前、交友関係パンチ利いてるな」


「うッス···」


まぁ、また出会したからにはしょうがない。


ハロージョブに行く気配がないのと、ジェムの財布の紐が緩かったから3人で観光することになった。


アイスを買い、パーツ店を冷やかし、フルーツドリンクを買い、中古作業機店を冷やかし、バーガーセットを買い、射的場を冷やかし(ネイティーのヤツ、百発百中!)、服屋にも寄った。


3人とも、最新のサンドボード乗りファッションに、3人とも行ったことなかった(気が合うと思ったぜっ)全日学校の制服に、砂漠の伝統衣装を試着!! 着替えただけなのに謎に3人で爆笑しちまった。

なんか、フォークが転がっただけでも笑っちまいそうっ。


夕方近く、3人でポリカネードを買って公園の東屋で、家族連れや年寄りが多い公園を眺める。


「この間、姫を観光に連れてった時も面白かったけど、目的無いから今日の方が気楽ではあったなぁ」


「え? お姫様がいるのかい?」


「いるんだよー」


「極秘デス!」


「···ネイティー、ハロージョブは家畜の世話とか、工芸職人とか、あまり人と関わり過ぎない仕事にしとくんだぞ? お前はきっとそれがいい」


ネイティーはしばらくジェム姐さんの顔を不思議そうに見詰めて、


「うん、ありがとう。ジェム、南のザリデ、ありがとう。僕が、外の友達と逢えると思ってなかった」


「「痛たたたっ??」」


ネイティーは格闘技か? てくらい強く俺と姐さんを抱き締めてきた。威嚇する護衛ドローンっ。


「じゃあね!」


でもって元気よくどこかに走り去っていった。


俺とジェム姐さんは、なんだかとても寂しい気持ちで船に帰ることになったんだよ。参ったぜ···

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