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17話 東から来たネイティー 1

リュウグウクラングリルポークIIは艦自体に被弾し、満身創痍で目当てのエアギルド系のオアシスベースにたどり着いた。


エアギルドの中でもオールドフォックス閥の関係者以外からは何事かと訝られながら、屋外待機スペースで誘爆リスクのチェック等を受けた後、貸切の小型艦ドックに移された。


「検疫はごまかすな! オアシスの保険局とモメると面倒になる。一段落つくまではとにかくバドリーラは隠せ! イカもだっ。無駄に人を入れるなよ、もうオールドフォックス氏のシークレットサービスが来ている。彼らは簡単に手に掛け過ぎるっ。無駄な真似をさせるな!」


ガーラン艦長はこうフル稼働ではさすがに副艦長無しでは回らないと思いつつ、檄を飛ばした。一方、


「あ、ロニー、お疲れ〜」


「このオアシスは牛肉が食えるようであるっ」


「あんたよく働くね」


「オイ〜、エアグライダー、1号機はもう限界だなぁ、フレームがガタついてるぜぇ」


姫以外のミコ、ビン、ザリデ、ハルバジャンは全員いたパイロット用待機室にロニーがやってきた。


艦の警護の為、エアグライダーは出したまま入港していたが、エアグライダーは艦に張り付いてるワケではないのでロニーは遅れていた。


「なんかさ」


ポリカネードを飲みながら、スティック端末でビンと対戦ゲームをしていたザリデが不意に口を開いた。


「俺、姫に嫌わたかも?」


「ええ?」


「オイ〜?」


ミコとロニーはどちらかと言えば面白がる風であった。


_________



東部連合の中型多目的戦艦ウルデェンはリュウグウクランが逃げ込んだエアギルド系オアシスベースにそれなりに近い空域を低速航行していた。


「我々から出せるモガリア工学遺物と見られるS級機のデータは以上です」


画面上のベアドーIIIのアーナビリカ中佐は淡々とウルデェン艦長であるイェン大佐に言った。


縁は薄かったが、元々苦手な印象の男であり、遠隔地にいたはずにも関わらず平然と手早く噛んできたことに少なからずたじろいでいた。


東部連合は全体主義社会ではあるが階級社会でもあり、奨学制度で学を得た下級党員の出自の者特有の鼻持ちならなさを改めて感じ、不快であった。


「随分派手な真似をした割には端的な報告だな。アーナビリカ・ロッククロス中佐殿」


「いえ、現時点での確定情報のみを。勿論、未確定データ等もお送りしましょう」


(どうせそれ自体、抜粋であろう。本営の自分の閥以外には鉄面皮を決め込むつもりだな)


「イェ〜ン大佐!」


「おおっ?」


唐突に画面にマルキ博士がエイ型オートボットと共に現れ、イェン大佐とアーナビリカ中佐双方を驚かせた。


「あ〜の機体は初号機のデータにあった零号機ぃ! バドリーラでしょうっ。ロクに調整されず大昔の装備そのままな上に、パイロットも起動はできても素人ぉっ! しかし、ギルド系オアシスベースで機体と装備は多少補完されるでしょぉう。そのつもりでぇっ、頼みますよぉ?」


「え、ええ、マルキ博士もいらっしゃるとは、はは」


「いますともぉっ、ナハハハハっっ!!!!」


「···は、はは」


イェン大佐はアーナビリカ中佐に間接的に難癖つけることを考えていたが、思わぬ保険であった。マルキ博士は東部連合工学省の重要人物であり、イェンの立場で手出しは不可能であった。


そもそも怪人の類であり、これ以上絡まれたくはなかった。イェン大佐が当たり障りなく通信を終えようと思っていると、


「大佐! ネイティーが情報部の潜入艇に潜り込んだようですっ。あのバカめ! すぐに回収班をっ、ん?」


ブリッジに飛び込んできた肩にサポーターを付けたランスロの技術者任ムラタは画面のマルキ博士に気付いた。


「マルキ博士! お久し振りですっ」


「ムラタく〜ん、ネイティー君はウチのラボの優良個体なんだから大事にしてね〜」


「ハッ! 搭乗データの方は」


「それではっ、立て込んでおりますので、失礼させて頂きましょう! マルキ博士、ロッククロス中佐、御武運御健勝をっ」


イェンは無理矢理通信を切らせた。


「···どーなってるムラタぁーっっ!!!」


「私のせいではありませんっ、私はランスロの技術主任なのです!!!」


激昂するイェン大佐にムキになって反論するムラタ。本来の当事者である、情報部とネイティーの管理者達は遅れてブリッジに現れ、鬼の形相のイェンに仰け反るばかりであった。


_________


修理するのかと思ったけど、なんだかんだでリュウグウクランはグリルポークIIから1世代新しいグリルポークIIIに移ることになった。

30年くらい時代が違うから基本性能はダンチ! 差積載力は元々過積載対策したグリルポークIIより上。ドック激狭問題解決っ!


修理から引っ越しにいきなり作業内容が変わって、リュウグウクランのメンバーは大忙しになってた。


俺も検疫なんかの後、仮眠もそこそこに鉄鋼機の2級ライセンスの勉強に入ることになった。


作業機じゃ、もう死ぬぞ? と。


作業機2級の時と違って正規試験までは受けてられないから付け焼き刃でも、実戦で乗れるレベルまで引き上げるって感じだ。


午後に港に着いて、夕方から真夜中まで続いた鉄鋼機2級訓練、どうにか完遂!


厳しくなってきて、イカボットは本格的に持ち出せなくなったから護身用の普通の小型浮遊ドローンを連れて、私服の俺はギルドの教習所から出た俺はサンドボードに乗って港に帰りだす。


「実技はともかく座学ヤバいな···というか対人、いけんのか? 俺??」


ブツブツ言いながら真夜中の街灯の続く舗装道路をボードで滑走する。

このルートはギルド関係者しか使わない上に夜中だからほとんど他に車両や駱駝はいない。と、


車道の真ん中に寝転がってる人発見!


「不審者デス。するー推奨」


薄情なAIだなっ、俺は停まってみた。


「おい、あんた、ぺしゃんこになっちまうぜ?」


寝ているのは砂まみれの寝巻きみたいな服に耐熱マントを着た男だった。20代後半くらい? 鍛えてはいる感じ。


「君! 星が綺麗じゃないかっ、何年ぶりだろうこの目で直に見たのはっ」


「ええ?」


見上げてみると確かに星は綺麗だった。エアギルドのケツモチでもある宇宙公社がパンク気味らしい、星の世界だ。


確かに綺麗だ。そして、男の腹がぐぅ〜となった。


「腹、減ってんのかよ、しょーがない。普段からはしないけど、たまたま引っ掛かっただけだぜ?」


念押ししながら俺は棒状糧食とポリカネードを差し出した。


「ポリカネード! これに憧れてたっ」


男は引ったくるように2つを取ってゴクゴクガツガツ完食した。


「ぷはっ、ありがとう君! 君は友達だっ、ボクはネイティー! 東から来た」


「お、おう。俺はザリデ。まぁ、南? から来たよ。じゃ、な」


「うん! ザリデっ、またね!」


「ああ、車道、危ないかんな? ここのハロージョブは交番で聞けよ?」


「ん?」


ほんとに20代後半かな? と思いつつ、俺はボードで去った。


「不審者デス!」


「はいはい」


ま、いろんなヤツがいるさ。

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