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16話 追撃 2

バーニアユニット装備のゼゥムンが全20機。背後にはグリルポークIIより空戦力の高いベアドーIIIとライドグライダーを仕様したバッズIIIが4機。


ガーラン艦長はすぐには高度を上げず、状況を作ることを選んだ。


(最悪、トレーラータンクは振り切れる。大騒ぎになってもギルド系オアシスベースの領空に逃げ込む手もないではないっ、またオンディーナに叱られそうだが!)


ゼゥムンへの通常一斉掃射。トレーラータンクへの大まかな狙いの電磁爆雷弾を放ち、ミコとビンのリーラ改2機とロニーのエアグライダー、ハルバジャンのゼゥムンII改を出撃させる。


ゼゥムンII改は艦のバランスが崩れ、ハルバジャンが立ち回り難くとも下方攻撃を優先して右舷の脱出艇格納器の上に配置。


ゼゥムン群の猛烈な対空砲火をリーラ改2機は曲乗り、エアグライダーはクレバーな大回りの旋回で回避する中、ドックではエルマーシュ姫のバドリーラとザリデのスラスター強化の重装甲仕様の作業機ミケタマ改が出撃の構えを取っていた。


「姫様お気を付けて!」


「はい」


「ザリデ、ゲームじゃないんだぞ?」


「うッス」


2人はブルーナとジェムに通信で応え、出撃した。


「ほう、やはり」


ベアドーIIIのアーナビリカ中佐は身を乗り出した。


7頭身規格の登場にゼゥムン群も明らかに動揺したが、直後の反応はいかにも無法者の集団であった。


全機我先にとバーニアを吹かして跳躍、砲撃しながらなんの考えも無しに突進しだした。


しかしなにもプランが無いだけに、結果的に早々成立しない極めて直線的な猛烈な対空弾幕がバドリーラと続くミケタマ改を襲った。


(守りなさい、バドリーラ!)


発光現象と共に力場がバドリーラとミケタマ改を覆い、全ての攻撃を逸らし誘爆させる。


冷や汗をかくが、姫の必死な気配も感じるザリデ。


アーナビリカ中佐は目を見張った。と、ブリッジに浮遊するエイ型オートボットを連れた白衣の男が入ってきた。


「光を!」


バドリーラは背部から偏光熱線を4本放ち、8機のゼゥムンの胴を薙いだが、機体は切断できず、その表面を焦がしただけだった。


(耐熱反射剤っ?)


バドリーラの観測結果に驚く姫。


ゼゥムン群は隙を逃さず、力場の再展開が起こす間を与えず、バドリーラを取り囲むように猛攻を開始した。 


「や〜はりっ、大気中での偏光熱線! 装備してましたねぇ」


エイ型ボットを連れた白衣の男は独特なイントネーションで話した。


「彗眼でしたな、マルキ博士。面倒がるゴロツキどもに反射剤を使わせて正解でした」


「当時の流行りなんですよー。()えるでしょう? アレ! ナハハハっ!!」


「···」


マルキと呼んだ技術者らしき男の奇異さにたじろぐアーナビリカ中佐であった。


力場無しでも、大出力高精度のハイレイライフルと鉄壁のハイレイシールドで次々ゼゥムン群を墜としたが、残13機中4機は割に合わないと見てグリルポークII2に向かい、2機はバドリーラの回りをチョロチョロしているミケタマ改に苛立ってそちらを狙いだした。


「うおっ?」


焦るザリデ。


「少年!」


ミコはビン機ロニー機と組んで、近付いて電磁爆雷を撃ち直してレイシールドに穴を開け、実弾で展開器を破壊する段取りで2艦沈めていたが、長く姿を晒し過ぎてデータを取られたのを同じパターンの攻撃であった為、見切られだし、距離もあり、ザリデの救援に向かうことは困難であった。


姫も艦向った4機の内、1機を狙撃で墜としている隙を詰められ、力場に頼らない防御と逆流する断末魔の思念に苦しむ姫は手間取っていた。


「チョロついてんなよっ? チビ!」


「東部のヤツら、新型の噛ませ犬にしやがって!」


苛立ちまぎれにミケタマ改を囲んで仕留めに掛かるゼゥムン2機。しかし、


(···ん? コイツら、遅い??)


最初は焦ったザリデだったが、相手のモタついた、単純な動きに困惑した。


(イカボットの性能上がったからか? 頭オカシイ速度設定のシュミレーターのお陰か? どっちにしろっ)


「いける!」


感覚的な判断で、追加装甲をパージして突進してきた1機にぶつけて怯ませ、軽くなった機体でサンドボードのようにフットバーニアを吹かして自在に旋回し、強力なスラスターで位置修正すると、ザリデは至近距離で作業機用マシンガンを構えた。


「なっ?」


コクピット周辺は外し、脇の装甲の継ぎ目に掃射すると、機体のオート判断で脱出缶を射出して離脱させられるパイロット。時間差でゼゥムンは起爆した。


「脱皮してんじゃねぇ!」


もう1機が激昂してマシンガンを連射してきたが、いかにも射線の通し方が甘かった。ザリデは背面飛びのようにして回避しながら、また脇の継ぎ目のコクピットを外したポイントに掃射し、脱出缶を射出させて機体を起爆させた。


「下、蟲涌いてるから気を付けろよ?」


パラシュートとスラスターで降下してゆく2つの脱出缶を見下ろしながら、ザリデは独り言ちた。


「あのパイロット! いいなぁっ、回収できませんか? トレーラータンクに張り付いてるリーラ改のパイロット達も良い感じですがぁ、伸び代をっ、感じますよぉ?」


「いやちょっと遠いですね。それよりそろそろ撤収しないと、ガスの影響外にドローンだけ飛ばして砂の下行きになりかねませんよ? マルキ博士」


一応、条約違反ながら比較的ペナルティが軽く揉み消し易くもある気化弾は持ち込んでいるが、相討ち狙いやキャリアを懸ける程、情熱を持って本件に臨んでいるワケでもないアーナビリカ中佐。


「ん〜? ま、データも取れたし、いいでしょうー。中々面白い、骨董品、でしたぁ」


ベアドーIIIはバッズIII4機を引き連れ、まだトレーラータンク2艦、ゼゥムンは6機残った状態であっさり引き上げだした。


無法者達は露骨に狼狽したが、停戦信号弾には応じず、結局、ザリデがさらにもう1機脱出缶を使わせた合わせて3名のパイロット以外は、リュウグウクランの攻勢によって全滅した。


逃れたパイロット達の生存確認まではせず、グリルポークIIは素早くエアギルド系オアシスベースの領空へと移動してゆく。


「ふぅっ、姫大丈夫ですか? この機体、その、テレパシーの逆流? みたいなのの調整つーか」


狭いドックで機体から降りたザリデはバドリーラから降りて青い顔をしている姫に話し掛けた。


「あなたは優しいですね、ザリデ君」


「え?」


やや手厳しく言われザリデは戸惑ったが、すぐに姫は駆け付けたブルーナに抱き締められ、ザリデはザリデで駆け付けたミコと、面白がったハルバジャンに続けて抱き締められて揉みくちゃにされそれどころではなくなった。

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