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15話 追撃 1

初陣後、発熱したエルマーシュ姫は自室で寝込んでいた。


(キャラオケぇええーーっっっ!!!)


(せっかくも霜降りミートがぁ~〜〜!!!)


(エアギルドの運び屋等にっっ)


(なんだあの機体???)


(母さぁああんん!!!)


(脱出艇をっっ)


(もうすぐ退役、プロポーズを···)


(艦砲? 距離を取ったんじゃ??)


(あぁああーーーっっっ!!!)


(死にたくないっっ!!!!)


遮断の要領を得ていないこともあり、バドリーラの感応器を通じて流れ込んだ断末魔の思念の記憶が、姫を苦しめていた。


「はぁっっ!」 


汗だくで、姫は目覚めた。


律儀にブルーナとボミミの用意した古風な寝巻きを着ていた。


部屋のティーテーブルの席には、テーブルに眼鏡を置き、メットは上げていたが万一に備え保護スーツを着たブルーナが、姫の為のパイロット用ではない一般乗員用の保護スーツを抱えて座り眠りこけていた。


「···ありがとう、ブルーナさん」


エルマーシュ姫は微笑んで、泣いた。


_________



俺は1,25倍速の戦闘仕様の作業機のシュミレーターから黄色のイカボット2機と飛び出し、胃の中身をリバースしたっ。


「オロオロオロオロッッッ」


「ちょっ?! ザリデっ、汚いなぁ!! しっかりするんだぞっ? あと1時間は」


整備が忙しいだろうに初期対応が済むと、なんでかジェム姐さんは仮眠してた俺を叩き起こしてシュミレーターの鬼軍曹と化してきたっ!


「いやっ、1,25倍速のシュミレーターとかっ、そんな何時間もするもんじゃないッスから!」


「あ〜ん? オイラ、3級作業機ライセンスしか持ってないけど、これ、ミコの次にハイスコアだぞ?」


「それは姐さんがゲーマーってだけでしょ?!」


「んだよぉ···まぁいいや。そこそこのスコアだし、データ取れたし、イカボットも学習させられた。ちょっと借りるぞ?」


ジェム姐さんは作業機用のイカボット2機と自分の整備用オレンジイカボットを連れて、さっさと立ち去る構え。え〜?


「ザリデ、スラスター回り速くしといてやる。今の反応ならいける。あと、床掃除しとくんだぞ?」


「···うッス。あざッス」


対人の初戦、あんま役に立たなかったし、心配してくれたのかな? 中々、ゴマメ扱いから抜けられないなぁ、俺。


_________



ボトル等は固定された、グリルポークIIの艦内ラウンジのバーで私服のミコはカクテルを飲んでいた。店員等おらず、バーテン役はビンであった。


ラウンジ内に客の乗員はまばら、ローテで休めるなら仮眠を優先する乗員が大半である為だった。


その少ない客の中に手酌で「だからさっさと西部連盟とシークレットサービスに丸投げしておけばっ」と愚痴って悪酔いしているオンディーナもいたが。


「イケる口になったね、ミコ。でもまだ大半の国であんたも未成年だろ?」


「ざんねーん、ザハキアの砂漠地帯はどこも無政府状態でーす!」


「あ〜こりゃ、タチ悪いわっ、あはは!」


酔ったミコはグラスを置いた。


「···今、宇宙、どんな感じ?」


「火星は相変わらず荒れてる。月は人工減り過ぎて、なし崩しで休戦。スペースベースの復旧はどこも停滞してるね。人工足りないから、そんなことにリソース使う意味あるか? みたいな、ね」


「私、結構頑張ったけど、そんなもんかぁ···」


ミコがテーブルに突っ伏すと、連れてきていた青のイカボットが頭に乗って頭皮マッサージを始めた。


「スーパーエースパイロットが頑張っても、その航路で敵兵がたくさん死んだって、だけよ? 結局、全体の戦況と、政治やってる人達が本気にならないとさ」


「···地上で大冒険して暮らすつもりだったんだ」


「あら〜楽しそうねぇ。ビン姉さんも混ぜてよ?」


「あんた、嫌い」


「あはははっ」


ミコはしばらくラウンジで酒を飲んでいた。


_________



約4時間後、なるべく危険地帯を避け複雑なルート取りで、もうすぐで目当てのエアギルドの規模のある拠点付きのオアシスベースの領空に入れる、という所で、リュウグウクランのグリルポークIIは敵襲を受けた。


警報に1時前に仮眠に入れたばかりのジェムも兎のぬいぐるみを抱えて飛び起きた。


襲ってきたのはいずれも周辺の自警団崩れやマフィア崩れが所有する大型トレーラータンク5艦。


いずれも改修艦だが、画一的に東部連合仕様のレイシールド展開器の補強が見られた。地上艦がレイシールドで固めると甲羅に籠もった亀のようになり、いかにも厄介であった。


しかも、交戦の細かな駆け引きを無視して艦砲距離外の段でそれぞれの鉄鋼機を全機出撃させてきた。


いずれも東部連合の陸戦機のゼゥムンの初代機の砂漠地帯仕様。バーニアユニットを装備しつつ、まずは砂漠の地表をホバーで滑走し、驚いた砂蟲スナオオカミキリモドキ達が飛び上がって逃げ惑わせていた。


「ゴロツキを派手に雇ったかっ。いやそれよりも」


ガーラン艦長は拡大画面の、考え無しに前進する風なトレーラータンク5艦のさらに後方のガス散布下で索敵ギリギリの上空に控えて沈黙する、東部連合の小型偵察艦ベアドーIIIの姿を睨んでいた。


ベアドーIIIは前面に鉄鋼機高速移送用ユニット、ライドグライダー4機に1代前の凡用機、バッズIIIを乗せて展開していた。全て高出力のレイシールド展開器と狙撃用ロングレイライフルを装備している。


ベアドーIIIには艦長として東部連合のアーナビリカ中佐がいた。


「無駄飯喰らいのキャラオケ少佐を簡単に片したそうだが、噂のS級機。観測させてもらおうか?」


楽しげにアーナビリカは独り言ちた。

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