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オルガが連行され、静けさが戻った部屋に、オクタヴィアとザカライアだけが残された。


「ザカライア様、お怪我はありませんか?」


「ええ、大丈夫です。オクタヴィアこそ、無事ですか?」


「はい、私も怪我はございません・・・・」


「・・ハロルド様やデービット様も大丈夫でしょうか?」


「ええ、みんな無事です。ナージャも、もうすぐこちらへ来るはずです・・・」


「よかったです・・・・」


オクタヴィアは悲しそうな顔でザカライアを見上げる


「・・・・ザカライア様・・・・オルガは、どうなるのでしょうか・・・」


「・・・死刑は免れないでしょう・・・・」


「そう・・・・ですか・・・」


「・・リンゼン公爵様は・・・・」


「どうやら、街はずれの古びた家に、ご婦人と共に拘束されていたようです。今、騎士が救出に向かっています」


「リンゼン公爵様も、罪に問われるのでしょうか・・・」


「・・・直接手を下してはいないものの、反逆に加担していたのは確かです。公爵家の没落は、避けられないでしょう・・・」


「三大公爵家のひとつが無くなるとなると、ファルマン帝国のバランスは大丈夫なのでしょうか?」


オクタヴィアは、わずかに不安を滲ませて尋ねた。

ザカライアは短く息を吐き、そっと頷く。


「しばらくは混乱が続くでしょう・・」


オクタヴィアはそっと目を伏せた。自分が関わったことで一つの家が没落した。その重さに、胸の奥がひやりと冷たくなる。


「・・・私は、これでよかったのでしょうか?」


その小さな呟きに、ザカライアは静かに答えた。


「オクタヴィアがいなければ、もっと多くの血が流れていた。オクタヴィアは誰よりも勇敢でした」


オクタヴィアはゆっくりとうなずく。

だがその目には、決して消えない迷いの色が残っていた。

そして、部屋の扉が静かに開きナージャが駆け込んでくる。


「姫様!」


その声に、オクタヴィアは顔を上げる。

ナージャはそのまま、彼女に飛びつくように抱きついた。声を震わせながら、ぽろぽろと涙をこぼす。


「姫様・・・! 無事で、本当によかった・・・!」


「ナージャ、あなたを危険な目に合わせてしまって・・・ごめんなさいね」


「いいえっ! 姫様は、とても勇敢で・・・ 一人でオルガさんに立ち向かって・・・すごかったです!姫様こそお怪我はありませんか!???」


ナージャは感情を抑えきれず、わんわん大きな声で泣きながら、必死に言葉を紡ぐ。

その姿に、オクタヴィアは微笑んで応えた。


「ナージャ、ありがとう。私は大丈夫よ。あなたが私の侍女で・・・本当に良かった」


そんな二人の姿に、ザカライアも静かに微笑んでいた。




数日後、ファルマン帝国王城。


玉座の間には、国王アーロンとイザベル皇妃の姿があった。

ザカライアはその前に立ち、深く一礼する。


「反乱軍の首謀者であるメイソンとシーザス、オルガは拘束されました。リンゼン公爵家も関与が明らかとなり、ご命令通り、領地は没収、爵位も剥奪の方向で進めております」


「・・そうか。リンゼン公爵は、残念だったな・・・・。そういえば、デューク王国からも報告があったが、デューク王国に入ったノートリアス盗賊団の残党も根絶やしにしたとか。そちらはオーギュスタン王太子が活躍したそうだ」


「・・・オーギュスタン殿下なら、完璧に処分・・・対処したでしょうね」


苦笑いするアーロンとザカライア。


「ところで、陛下。ルカルド王国からも親書が届いたと伺いましたが?」


「ああ。国はまだ混乱のさなかだが、いずれ落ち着いたらファルマン帝国とデューク王国に謝罪に来るそうだ。それが済んだら、サイラス王は退位するらしい。親戚筋に、頭の切れる人柄のいい者がいてな、王位はその者に譲るとか。それと・・・・ミネルバ王女は、自国の有力な公爵のもとに後妻として嫁ぐそうだ」


アーロンはあくまで軽やかな口調で話す。

その隣でイザベルが静かに頷き、優しくザカライアを見つめた。


「ザカライア、オクタヴィアさんの無事を何より喜びます。そして、あなたもよく無事で帰ってくれましたね」


「ありがとうございます・・・すべて、オクタヴィアの勇気と・・・動物たちの協力があってこそです」


ザカライアの言葉に、イザベル皇妃は目を細めた。


「オクタヴィアさんの帰国が決まったと聞きましたが・・・?」


「はい、来週、国に戻るそうです」


「そう・・少しの間、寂しくなりますね」


「そうですね・・・・」


そう言ったザカライアもイザベルも姉弟で同じような悲しそうな顔をしていた。


明日はいよいよ最終話です。

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