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「イザベル皇妃、リリア嬢が亡くなった経緯について、詳しくお聞かせ願えますか」


わざとらしく目をこすりながらイザベルに質問をするジゼル。


「・・・ええ。詳しいことは今後の調査で明らかにしますが、目撃者の話では、突然倒れられ、ハロルドが支えようとしたが間に合わず・・その時にはもう息がなかったと」


「そうですか・・・あと、先ほど連れていかれた男は、我が国で指名手配しているノートリア盗賊団のドーガンではありませんか?」


「・・・身元はこれから詳しく調べます」


「もし本人であれば、我が国にて処罰を・・・・」


「・・・」


イザベルはその申し出に何も答えず、ただじっとジゼルを見る。

ジゼルは、その目に耐えかねたのか急に大声をあげた。


「おい!お前たちっ!」


そばに控えていた側近がジゼルに呼ばれている。


「リンゼン公爵に、この事を急ぎ伝えなければならない!すぐに準備を!」


ジゼルの命令に男が二人、リリアの亡骸を運ぼうとする。


「お待ちなさい!」


イザベルが制止の声を上げ、男たちの動きを止める。


「調べると言ったでしょう?リリア嬢には誰も触れないように」


「フェイ。劇場内の目があるわ。このまま城に運びましょう」


「承知しました」


騎士たちが慌ただしく動き、リリアを丁寧に運び出していく。

それを見届けたイザベルが、ジゼルに向き直る。


「ジゼル殿下、後ほどご連絡いたします。ここは一度お戻りになられては?」


「・・・そうですね。ではお言葉に甘えて。みんな、リンゼン公爵の元へ向かうぞ!」


側近を引き連れ、ジゼルはその場を後にした。


「で、ザカライア・・・どう言い訳するつもり?」


周りを見渡しながら、イザベルは呆れた顔でザカライアに聞く。


「見ての通りです。オクタヴィアが二度も同じ男にさらわれそうになったのです、必死に止めたらこうなりました・・・」


「ザカライア・・・・・」


「相手は生きていますし、そこまで問題ないでしょう」


なんてことないように、軽く言い切るザカライア。


イザベルは頭を抱え、深くため息をついた。

近くの侍従に目配せし、すぐに清掃の手配を命じる。


「ザカライア、あなた、私と一緒に城に来なさい」


「ええ、もちろん。オクタヴィアとともに参りますよ」


ザカライアは晴れ晴れとした顔で微笑む。


(この子・・・こんな子だったかしら・・・敵討ちができて、ずいぶんとスッキリしてる様子だわ・・・)


「オクタヴィア、ここにいては服も汚れてしまいます。私の馬車で城へ行きましょう」


ザカライアはイザベルやハロルドを置き去りにし、オクタヴィアをさっさとエスコートしていく。


「ザ・・・ザカライア様!私はイザベル様と参りましたので、イザベル様とご一緒に・・・・」


「大丈夫ですよ。あちらの馬車にはハロルドも乗るでしょうし、あなたに怪我がないかも気になりますしね」


「あ、あの・・・!ザカライア様!!」


オクタヴィアは助けを求めるようにイザベルの方を振り返るが、イザベルは首を振って「あとでね」と微笑みながら手を振った。


しばらくして、騎士と従業員の手でホールの惨状が片付けられ、イザベルも自分の馬車に向かおうと歩き出す。


「イザベル様・・・・・・」


しょんぼりした様子のハロルドが寄ってきた。

その姿を見ながら、イザベルは容赦ない一言を落とす。


「言ったでしょう、ハロルド。あなた、あの子に殺されるわね」


「そんな~!!イザベル様、ザカライアを何とかしてくださいよ!結局、俺、お姫様を助けたのに!?」


「その言い訳は、ザカライアになさい」


冷たく言い放つが、イザベルの口元にはうっすらと笑みが浮かんでいる。


「もう、本っ当に最悪だ・・・・」


ハロルドは、しょんぼりとイザベルと共に馬車に乗り込み、城へ向かっていった。


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