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「アーロン、信じがたいけれど、でも・・あの場で私が助かったのは事実です。オクタヴィアさん、この部屋の窓を開けたら、会話のできる動物など呼ぶことはできますか?」


「はい、可能です・・」


「ザカライア、どうかしら?」


イザベルは難しい顔をしているザカライアにも一応聞いてみる。


「オクタヴィア・・本当にいいのですか?」


「はい・・」


イザベル自ら窓を開けに行き、それに続いてオクタヴィアも窓辺へと歩み寄る。

窓が開かれると同時に、鮮やかなブルーの羽をもつ鳥が部屋に飛び込み、オクタヴィアの手にふわりと止まった。


「こんにちは、鳥さん」


{コンニチワ}


「ここに来る途中、薔薇園を見た?」


{トオッテ、キタ}


「今そこにいるのは誰?」


{ヒゲノキシ、チイサイキシ、セノタカイキシ、サイショウ}


「髭の騎士と背丈の小さい騎士と背の高い騎士、それと宰相様ね」


オクタヴィアの手の上でピチュピチュと鳴いている青い鳥を見ながら、アーロンは扉へと向かい、外に控えていた騎士に何かを告げていた。


「ありがとう、あとは・・・そうね・・このお城で、何か面白いことはなかったかしら?」


{シカ、イタズラシテ、ニワ、キ、カジッタ、オジイサンニ、オコラレ、オイカケッコ、アソンデタ}


「いつ頃のお話?」


{アサ}


「今朝、庭に現れた鹿が木を齧っていたそうです。お爺さんに見つかって追い出されたそうです」


「まぁ、そんなことが?庭に鹿が入り込むなんて珍しいわね」


{オクタヴィア、ミニキタ}


「鹿さんが?私を?」


{ハナシ、アッタ}


「そう・・何かしら?」


青い鳥はピピッと一声鳴いてから羽を広げ、ふわりと窓の外へ飛び立っていった。

その入れ替わりに入ってきたのは、虹色の輝きを放つ大きな蝶だった。


「まあっ!」


イザベルは驚きのあまり大きな声を上げ、自分の口を慌てて手で塞ぐ。

ザカライアに向かって小声で説明しているのが聞こえてくる。


『あの蝶はドリームバタフライといって、数百年前に絶滅したと言われといるの・・』


戻ってきたアーロンも、オクタヴィアの手のひらに止まった蝶を見て目を見張る。


「こんにちは。蝶々さん」


どうやらオクタヴィアは、動物や虫にもまず挨拶をするスタイルらしい。


{ココ、イイ、バラ、サソワレテ、キタ}


「とてもいい香りですよね?イザベル様の、ご自慢の薔薇園なんですよ」


{ハナモ、ヨロコンデル、コンヤ、アオイバラ、サク}


「まあ!青い薔薇が今夜咲くのですね?」


「っっ!!!!!」


イザベルは両手で口を押さえ、声が漏れるのを懸命にこらえる。

アーロンがそっと肩を抱いて落ち着かせていた。


(お二人ともどうしたのかしら・・?)


不思議に思いながらも、オクタヴィアは蝶との会話を続ける。


{オトコノコ}


「男の子?」


そう言うと、イザベルはアーロンに抱きつき声をあげながら泣き始めた。


「ザ・・ザカライア様?イザベル様は大丈夫でしょうか?」


さすがに気になったオクタヴィアは、蝶との会話を中断し、心配そうにアーロンとイザベルの方を見つめた。

ザカライアは、二人の様子を見守りながら穏やかに微笑んでいる。


「ええ、大丈夫です。あれは・・・・嬉し泣きです」


「嬉し泣き・・?」


「王族は、結婚すると青い薔薇を植えるのです。不思議なことに、その薔薇が咲くと、新たな王族が近々誕生すると言われています」


「まあ!それでは・・・!!」


「・・・そういうことでしょう。伝承では、その薔薇の知らせは決して外れたことがないそうです」


イザベルは感情が昂ぶっている様子で、アーロンに椅子へと導かれていた。


「イザベル、今夜ふたりで薔薇を見に行こう・・・」


アーロンもまた、穏やかな笑みを浮かべてイザベルに語りかける。

そんなふたりを微笑ましく見守っていると、蝶がふわりと羽を動かしながら話しかけてきた。


{アナタ、ネラワレテル、キヲツケテ、オウゴンノオンナ、クル}


「え・・私が?」


蝶は静かに羽ばたき、再び窓の外へと飛び立っていった。


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