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ザカライアが部屋に戻ると、イザベルとオーギュスタンは黙ったまま、ベッドの横の椅子に座っていた。


「イザベル皇妃、代わります」


ザカライアはイザベルを立たせ、控えていた侍女に彼女を自室へ連れて行くよう指示する。

オクタヴィアが攫われたと知ったアーロンは、すぐに盗賊が出た。と夜会をお開きにした。


イザベルは、扉を出る直前、振り向いた。


「・・ザカライア、オクタヴィア王女が目覚めたら、すぐに教えて」


「ええ、陛下にも言われています。目覚めたら、お二人にお知らせします」


イザベルはまだここに留まりたそうだったが、ザカライアとオーギュスタンの様子を見て、侍女とともに部屋を後にする。


部屋に残ったのは、眠るオクタヴィア、オーギュスタン、部屋の隅に控えているオクタヴィアの侍女ナージャ、そしてザカライアの四人。


「・・・オーギュスタン殿下。この度は申し訳ありませんでした」


ザカライアはオーギュスタンの横に行き、深々と頭を下げる。


「・・・・・」


オーギュスタンは黙ったまま、じっとオクタヴィアを見つめていた。しばらく沈黙が続いた後、視線を彼女に向けたまま、ようやく口を開く。


「・・・私も、あなたも・・・・結局オクタヴィアを守れていないな」


「申し訳ございません・・」


「オクタヴィアが余計な事に首を突っ込むのではと心配していたが・・・まさか、私たちの鼻先で、攫われるとは・・・」


ザカライアは何も言えず、ただ頭を垂れる。


「生きていただけ、マシなのかも知れないが・・・・ヴィアは、この国での初めての公務を楽しみにしていたんだ。それなのに、こんな大怪我を・・・かわいそうに」


オーギュスタンは、そっとオクタヴィアの指先を握る。


「・・・・それで、犯人は?」


「・・ノートリアス盗賊団が、関わっている可能性が高いです」


「ノートリアス・・・・・そうか・・・我が国で逃がしてしまった奴らだな。貴国にも迷惑をかけた・・・・」


オーギュスタンは悔しげに顔を歪める。

自分のミスで逃がした盗賊団が、オクタヴィアを傷つけた。

後悔しないわけがない。

そんなオーギュスタンに、ザカライアは少し躊躇いながら口を開いた。


「・・助けに行ったとき、オクタヴィアは崖下に転落していました。男二人で運び上げるのは厳しい立地でしたが、どこからともなく山羊が現れ、そこにいた猿と協力してオクタヴィアを引き上げてくれました・・・」


「・・・・」


オーギュスタンは依然としてオクタヴィアを見つめたまま、動かない。

ザカライアはさらに話す。


「崖を上がると、今度はキングホースが現れ、街の入り口まで我々を運んでくれました・・・」


「そうか・・助かったな・・・・」


オーギュスタンは、ポツリとつぶやく。


「・・・オクタヴィアは・・・何者ですか?」


「・・・・・ヴィアは・・・」


それ以上は語るまいと、オーギュスタンは沈黙する。

しばしの静寂の後、彼は口を開いた。


「・・・アービング公爵、私もヴィアが目を覚ますまで、こちらの部屋に泊まりたいのだが、手配してもらえるか?」


どうやら、オーギュスタンは、先ほどの話を続けるつもりはないらしい。


「・・・わかりました。手配いたしましょう」


ザカライアは席を立つ。


「・・・オーギュスタン殿下、私の部下が盗賊団を探しています。一度、私も出かけてきますが、何かあればそちらに控えている騎士に申しつけてください」


扉の前の騎士に視線を送る。


「・・・ああ、わかった。ありがとう」


オーギュスタンは、一度もザカライアを見ずに彼を送り出した。


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