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アーロンは歩きながらフェイに視線を送る。

それだけで、騎士団長は軽く頷き、扉の向こうに控える騎士たちに指示を出した。


ザカライアが部屋を出ると、すぐに隣の応接室の扉が開けられた。

アーロンが椅子に座ると、フェイが静かに扉を閉める。

ザカライアは立ったまま、静かに問いを待った。


「ザカライア」


アーロンが、低く静かな声で口を開く。


「お前が王女を見つけた時の状況を、詳しく話してくれ」


ザカライアは一つ頷き、思い出すように一瞬目を伏せた。


「・・・デューク王国から逃げ出したノートリアス盗賊団の一味が、この国で活動していると情報を掴みましたが全貌もまだわからず、私の方で情報を集めている途中でした。そんな折、オクタヴィア王女が攫われ、ハロルドから、この件とノートリアス盗賊団が関係している可能性があるとの報告を受けました」


「ノートリアス盗賊団が・・・・?」


「はい、間違いないでしょう。最近、イザベル皇妃が面会した商会が関わっているのではないかと考えています」


「・・・リンゼン公爵のあれか・・」


「夜会当日、彼らは招待客として城に来ていました。しかし、しばらくすると全員が姿を消していたようです」


「公爵自身はどうだ?」


「公爵がどこまで関与しているかは不明です。ただ、騙されている可能性もありますが、彼が城へ招き入れたのは事実です」


「そうか・・・・・」


アーロンは、目で話の続きを促した。


「ハロルドがその動きを察知し、彼らが向かった先が北のルカルド王国との国境付近であることを特定しました」


「ルカルドだと? 彼らはルカルド王国から逃げてきたのではなかったのか?」


「そこもまだ不明ですが、怪しい動きですし、オクタヴィア王女と関連がある可能性が高いと判断し、追跡しました」


「・・・・」


「途中、荷馬車を発見しました。大量の割れた花瓶か壺の破片が散乱しており、王女はその中に隠されて運ばれたのだと思われます」


「それほど大きなものであれば、いつ城に運び込まれたか調べれば、すぐに分かるな」


「破片はそのままの形で残してあります。場所を教えますので、のちほど騎士団を送って確認してください」


「わかった、フェイ、頼んだぞ」


「畏まりました」


「そこから、別の馬車に乗り換えたようで、車輪の跡を辿ると、無人の状態の幌馬車を発見しました。馬車の中には・・・・・・争ったような跡と・・・血痕がありました・・・」


アーロンは、言葉に詰まるザカライアを見ながら静かに次の言葉を待つ。


「周辺に人の気配はなく、小さな足跡を見つけたので辿ると、崖で途切れていたので、崖を下り、そこで、あの状態のオクタヴィア王女を見つけ・・・急ぎ連れ帰ってきました」


ザカライアは、白いフクロウや山羊、猿、キングホースなどの動物については触れず、簡潔に報告をまとめた。


そこで、ふと思い出したようにアーロンに聞く。


「そういえば、皇妃の侍女たちは見つかったのですか?」


「六人とも、城の裏の林で殺されていた・・それに、正体不明の女も一人同じ場所で殺されていたよ」


「・・・そうですか」


(正体不明・・・盗賊団の者か・・・?)


アーロンはフェイを呼ぶ


「フェイ、今の話を聞いたな。オクタヴィア王女が目を覚ますまでは詳細が分からない。我々でノートリアス盗賊団の動向と、リンゼン公爵周辺の捜査を進めてくれ」


「かしこまりました、陛下。アービング公爵様、のちほどハロルド様にも話を伺いたいのですが、許可をいただけますでしょうか?」


「ああ、ハロルドには伝えておこう。今は商会の本部にいるはずだ」


「ありがとうございます。では、陛下失礼いたします」


「フェイ、頼んだぞ」


フェイが退出すると、アーロンとザカライアは二人きりになった。

アーロンが口を開く。


「ザカライア、犯人の捜索は我々が行う。お前は手を出すなよ・・・」


「・・・・・・」


「気持ちは分かるが、相手は三カ国をまたぐ盗賊団だ。こちらの国で行方不明になられては困る」


アーロンの言葉は、遠回しに「勝手に殺すな」と釘を刺していた。


「私が手を下さなくても、事故ということもありますからね・・・」


「・・・くれぐれも、事故が起きないように注意をする・・」


二人の視線が鋭く交差する。

先に視線を逸らしたのは、ザカライアだった。


「では、陛下。私はオクタヴィアの元へ戻りますので」


「王女が目を覚ましたら教えてくれ」


「ええ・・・」


ザカライアは厳しい顔で、オクタヴィアの寝ている部屋に戻った。



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