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「デューク王国、オーギュスタン・リフタス王太子殿下、並びにオクタヴィア・リスタス王女殿下のご入場です!」


歓迎の声が上がる中、オクタヴィアは大きなホールへと足を踏み出した。


「ねぇ、ご覧になって!デューク王国の王女様のあのネックレス!本物だと思います!?」


ファルマン帝国の令嬢が、いち早く目を付けたのがオクタヴィアの大きなダイヤのネックレスだった。


「まさか! デューク王国なんて小さな国でしょう? 宝石も産出されないって聞くわ。デューク王国の王妃様ですら、あそこまで大きなダイヤモンドのネックレスを着けているのを見たことがないわ」


「じゃあ、偽物ですね。あれが本物だったら、王都にいくつも家が建てられますわ!」


「王女様なのにイミテーションなんて、それもあんなに大きな・・・・見栄を張りすぎですわよね!」


クスクスと笑っているのは、三大公爵家のに一つ、リンゼン公爵の令嬢リリア。

そこに集うのはリリアを中心にした取り巻きたちだ。

リンゼン公爵は輸入業で財を成し、最近勢いのある貴族である。

そのため、リリアの周りには常に取り巻きの令嬢たちが侍っていた。


「・・それにしても、アービング公爵様が、あの王女を婚約者候補にしていると言う噂は本当なのでしょうか?」


リリアは口元の扇をぎゅっと握り、目を吊り上げる。

リリアは、ザカライアを一目見た時から「自分に似合うのはこの完璧な人しかいない」と信じ込み、ずっと追いかけているのだ。


「そんなわけないでしょう? アービング公爵様があんな小国の王女を娶る理由がないわ。きっと、あの王女からザカライア様へアプローチして付きまとっているに決まってるわ! あのドレスに縫い込まれた宝石を見て! ザカライア様の瞳の色よ。わざとらしいわ!」


「本当ですね!あんなにいっぱい黄色い宝石を!可愛い顔をしてなんて下品なんでしょう!」


取り巻きの言葉を聞きながら、リリアは遠くから来賓席に座るオクタヴィアをじっと見つめる。


(もし、あのネックレスが本物の宝石だったとしたら・・あのクラスの宝石はこの辺りでは、ザカライア様の領地でしか産出されないわ。あそこまで大きなダイヤモンドは私でも手に入れるのは無理・・・だとしたら・・・・)


自分の考えにイライラし、オクタヴィアを睨みつける。


(ザカライア様があの王女と関わるのは、外交官として仕方なく来賓をもてなしているだけ・・・でも、あの黄色い宝石は本当に許せないわね・・・)


リリアは、いたずらを考え付いたようにニヤリと笑った。




やがて、アーロン皇帝陛下とイザベル皇妃様の入場で夜会が正式にスタートした。


イザベル皇妃の装いは、深い紅色のドレスに金色の細かな刺繍が施され、腰から裾まで細い金色のチェーンが幾重にも重なって流れるように飾られている。その姿は、一目で主役だと分かるほどの輝きを放っていた。派手ではなく、ただただ圧倒的に豪華だった。


(さすがイザベル皇妃様ね。とっても素敵な装い!会場の中で誰よりも輝いているわ)


オクタヴィアが皇妃の姿に感動していると、オーギュスタンに従者が近づき、そろそろダンス会場へと促している。


「ヴィア、皇帝陛下と皇妃様に続いて来賓の私たちのダンスだ。行けるかい?」


「こんなにたくさんの人の前で踊るのは緊張しますが・・・頑張ります!」


「では、お手をどうぞ、お姫様」


オーギュスタンは緊張をほぐそうとウインクし、ふざけるようにオクタヴィアの手を取る。


「ふふ、スタン兄様ったら!またからかおうとして」


二人は笑い合いながら、スタンバイの場所へと向かい、目の前で踊っている皇帝陛下とイザベル皇妃を見つめる。


(本当に素敵だわ!お二人とも堂々としていて、お召し物もお揃いでとってもお似合い。偉大な王族だわ・・私も将来こんな風に踊ってくれる伴侶ができるのかしら・・・)


目を輝かせて皇帝夫妻を見つめるオクタヴィアを、オーギュスタンは微笑ましく見守っていた。しかし、その視線の端に、ずっとこちらを睨んでいる令嬢がいることに気づく。


(間違いない。こちらを睨んでいる令嬢が見ているのはオクタヴィアだ。もうネックレスの意味に気付いたのか? それともドレスの宝石の色か? 盗賊団も気になるが・・あの令嬢も気になるな。あとで、諸悪の根源であるアービング公爵に相談だな。責任は取ってもらわないと・・・)


オクタヴィアを睨む令嬢に気をとられていたオーギュスタンは、すぐ横に現れたジゼルとミネルバに気がつくのが一瞬遅れた。


「そのドレスを着る君は美しいな。センスが良い。僕と君はお似合いだと思わないか?」


ジゼルは平然とオクタヴィアの手を取り、口づけを落とす。


「ジゼル殿下、昨日も言ったが、オクタヴィアを揶揄わないでくれ」


すかさず、ジゼルの手を払うオーギュスタン。


「失礼だね。私は挨拶をしただけだ。しかも君より目上の私からね」


ジゼルは尊大な態度で応じる。


「挨拶だけなら、わざわざ手を取る必要はないでしょう」


(私もびっくりしたけど・・・スタン兄様、かなり怒っているわね・・無視するように言われたけど・・・)


「あの、ジゼル王太子殿下、ご挨拶が遅れて申し訳ございません」


オクタヴィアは深々と頭を下げ、美しいカーテシーで礼をする。


「ははは、妹のほうは私たちの力関係をわかっているんじゃないか?」


愉快そうに笑うジゼルに呆れながら、オクタヴィアは静かに体を起こした。


「・・・ジゼル王太子殿下。しかしながら、レディーの許可なく手を取るのは、失礼ですわ」


「はっ!また、口答えか!オクタヴィア王女も小賢しいな!」


ジゼルは憎々しげに吐き捨て、オクタヴィアを睨んだ。


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