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ドレスの着替えが終わり一人でひと休みしていると、どこかで聞き覚えのある声がした。


{ドーガン、キタゾ}


壁に同化しているヤモリを見つけ、オクタヴィアの目が輝く。


「あの時のヤモリさんね!」


{ナカマアツメテ、キタゾ}


「夜会の参加者の中にいると言うこと!?・・何のために来るのか聞いた?」


{オオキナ、ツボ、モッテル}


「大きな壺?それは何?」


{ナニカ、イレル、ドコカ、イク}


「・・・何か盗むつもりかしら。今どこにいるのかわかる?」


{ヘヤノナカ}


「この時間でお部屋の中ってことは、貴族の控室?・・ってことは、招待された人・・・?」


{イクカ}


「ここから近い場所にいるかしら?」


{トオイ}


「遠いのね・・・今は時間がないから行けないわ。今夜また来てくれる?」


{マタ、クル}


ヤモリが出口へ向かうと同時に、オーギュスタンが部屋の扉を開けた。


「ヴィア、お待たせ。準備はできてるかい?」


「はい、よろしくお願いいたします」


オクタヴィアがソファーから立ち上がると、ナージャが近寄ってドレスの裾を直してくれる。


「あぁ、そういえば・・・国に帰る予定なんだが・・・」


「はい、3日後の予定でしたよね?」


「その予定だったんだが・・・急遽、仕事が入ってね。明日帰ることにしたよ」


「明日ですか?・・・それは、急ですね・・・」


一瞬、困った顔をしてしまったので、オーギュスタンはオクタヴィアに聞く。


「ヴィアは、どこか行きたい場所でも、あったのかい?」


(まずいわ・・・明日ですって?まだ日程があると思って情報収集を怠ってしまった・・・さっきのヤモリの話は後でザカライア様に伝えるとして、何も分かっていない状況で帰るなんて!どうしましょう・・・・)


「・・いいえ・・特には・・・」


「そうか・・・ナージャそういうことだから、私たちが夜会に出ている間に、オクタヴィアの荷造りを進めておいてくれ」


「はい、かしこまりました。いってらっしゃいませ」


ナージャは扉の前でお辞儀をし、二人を送り出す。


「ところで、ヴィア、今日の装いは素晴らしいね。・・・なんというか、とても豪華だ・・・」


オーギュスタンの視線が頭の先からつま先まで流れていく。そして、次の瞬間、わずかに目を見開いた。


(すごいな・・胸元のダイヤもそうだが、ドレスに縫い込まれている黄色い石・・これ、イエローダイヤか? しかもアービング公爵の瞳の色にそっくりだ・・・牽制が凄まじいな。・・・髪飾りにも宝石がぎっしり・・一体全部でいくらかかってるんだ?)


「・・・とても豪華ですよね。豪華すぎて少し心配になったので、イザベル皇妃様に伺ってみたんです。そしたら、この装いで問題ないとおっしゃっていただきました」


「・・・あのあと、イザベル皇妃様に会ったのかい?」


「はい、昼食会後にこのお部屋に来られまして・・・ビックリしました」


「・・へぇ・・何の用事できたんだろうね?」


「なんでもザカライア様のデューク王国での活動を知りたかったようですよ」


「ふうん・・・そうなんだ」


「とても弟想いの方で、私にザカライア様との友達関係をずっと続けてほしいとおしゃってました」


「友達・・・?」


「ええ、ザカライア様が私と気が合うので側にいてあげてほしいと」


「なるほど・・・」


オーギュスタンは顎に手を添えて、なにやら考えている。


「ですから、今日の夜会ですがスタン兄様が他国の方と話している間に、ザカライア様がお暇そうでしたら、お声をおかけしようと思っております。よろしいですよね?スタン兄様」


「うん、いいよ」


オーギュスタンは優しくにっこりと笑い、腕にかかるオクタヴィアの手を軽くぽんぽんと叩いた。


「ヴィア、約束だよ。今日は僕かアービング公爵と必ず一緒にいて。一人にはならないで」


「スタン兄様?」


「約束ね」


優しい笑顔ながらも、きっぱりとした口調にオクタヴィアは素直に頷く。


「ええ・・・はい、わかりました」


「あぁ、あと、今日もジゼル殿下が絡んできたら無視するようにね」


「そういえば、そんな方もいらっしゃいましたね。正直、あの態度は驚きました」


「ここだけの話だけど、ルカルド王国の面々はプライドが高いからね。うちみたいな小国は、いつも見下してくるんだよ。父上も母上も、いつも、まったく気にしていないけどね」


「他国の人に良い印象を与えた方が、何かと良さそうなものですけど・・・」


「本来はそうだよね。でも、あの方たちがどうしてあんな態度に出るのか、正直、謎でしかない」


「いろいろな人がいるという事ですね・・・勉強になります」


「そうだね、ただ、今回のジゼル殿下のヴィアに対する発言は見過ごせない。帰ったら父上と母上に相談して、抗議の手紙を送ろうと思っている」


「私はまったく気にしていません・・そんなことをして、国同士の軋轢になりませんか?」


「ジゼル殿下の発言には他国からも抗議が届いていると聞いている。抗議くらいなら、そこまで大きな問題にはならないよ。でも、今を見過ごして、また同じような事をされたら今後ヴィアの公務に支障が出るかもしれないからね。念には念を入れておくべきだと思う」


「・・・あの国は、私たちとは常識が少しずれているのかもしれませんね」


「国なのか人の常識なのかはわからないけどね。それも合わせて、今日は絶対に一人にならないように」


「はい、わかりました!」


(さぁ、いよいよ私の初めての公務としての夜会だわ!いろいろあるけど・・・まずは夜会に集中しましょう!)


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