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「スタン兄様・・・」


オクタヴィアは不安になり、兄の名前を呼ぶ。


「全く問題ないよ。ジゼル殿下はいつも、ああなんだ。どうせ国に帰れば忘れるさ」


オーギュスタンに続き、隣のザカライアもオクタヴィアを安心させるように微笑みながら言った。


「大丈夫ですよ。全く気になさらないでください。仮に何かあったとしても、私がデューク王国に手出しをさせません」


その言葉は、穏やかながらも確固たる信念に満ちていた。


「ザカライア様・・・・」


オクタヴィアが思わずその名を呼ぶと、ザカライアはふっと微笑む。

そんなやり取りをしていると、先ほどイザベル皇妃と話していたミネルバが肩を落として戻ってきた。

どうやら、彼女の願いは聞き入れられなかったらしい。


落胆した様子のミネルバは、バーバラ王妃になにやら泣きついている。

バーバラ王妃は、娘の訴えを静かに聞き、何かを囁いた。


ふと、バーバラ王妃と目が合う。

オクタヴィアを睨むような鋭い視線が一瞬向けられたが、すぐに正面を向き、バーバラは何事もなかったかのように食事へと戻った。


(・・何か言われたのかしら?)


バーバラ王妃と何やら話したミネルバは、先ほどよりは元気を取り戻した様子で席に着く。

しかし、それ以降はザカライアに話しかけることはなかった。



昼食会が終わり、ルカルド王国の面々は一旦城を後にする。

もちろん(?)帰りの挨拶もなく、オクタヴィアたちには最後まで尊大な態度だった。


「ヴィアは、お城の一部屋をお借りして準備するのだったね?」


「はい、ドレスに着替えるのはこちらでと言われておりますので」


「では、私は一度帰るが、後ほど迎えにくるよ」


「はい、スタン兄様、お待ちしてます」


そこへ、先に部屋で準備をしていたナージャが迎えに来る。


「姫様、お待たせ致しました!マリアさんたちは、すでにいらっしゃってます!参りましょう!!」


「では、スタン兄様、のちほど・・・」


ナージャの案内で、客間に案内される。

扉を開けると驚いたことに、部屋の中でイザベル皇妃様がトルソーに掛けられたドレスをまじまじと見ていた。


(まさか皇妃様がいらっしゃるとは!)


予想外の訪問にオクタヴィアは慌てて礼を取った。


「イザベル皇妃様、本日は着替えのためのお部屋をお貸しいただき、ありがとうございます」


オクタヴィアが深々とカーテシーをすると、イザベルはくるりと向き直り、その様子をじっと見つめる。


(綺麗な品のあるカーテシーね。さすがデューク王国の王女だわ・・・先ほども思ったけど、とても可憐な王女ね)


イザベルは面白半分に、弟ザカライアが作らせたドレスを見に来たつもりだったが、思いがけずオクタヴィアの所作に感心してしまった。


「お顔をあげてください。お忙しいのにごめんなさいね。ザカライアが用意したドレスに不備がないか、念の為確認しにきました。」


「そうでしたか・・・あの・・・イザベル皇妃様・・このドレスは派手ではないでしょうか?少し気になっておりまして・・・」


主役より目立つドレスではまずいと、ずっと気になっていたオクタヴィアは率直にイザベルへ聞いてみる。


「そうですね・・・・」


イザベルは再びドレスに視線を移す。


「このドレスは、今ファルマン帝国で流行しているものです。色も落ち着いていますし・・確かに飾りの宝石は少し派手かもしれませんが・・・まぁ、いいのではないかしら? オクタヴィア王女の地位なら、これくらいで丁度いいと思いますよ」


イザベル皇妃はにっこりと微笑んだ。その優しい笑顔に、オクタヴィアもほっと胸をなでおろす。


「イザベル皇妃様がそうおっしゃるのでしたら、安心してこのドレスを着させていただきます」


「ええ、ぜひ帝国式のドレスで夜会にご出席くださいね」


そう言った後、ふと思いついたように続けた。


「ところで・・少し時間があるのですが、オクタヴィア王女。今からお茶でもいかがかしら?」


「えっ!? ・・あ、はい・・今ですか? あ、ありがとうございます! ぜひ!」


あまりに突然の誘いにオクタヴィアは一瞬たじろいだが、慌てて失礼のないように答える。

イザベルは近くに控えていた侍女へ軽く指示を出し、すぐにお茶の準備が整った。


「では、こちらでお話ししていましょう?」


「は、はい! もちろんです!」


オクタヴィアは緊張気味に返事を返した。

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