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挨拶を終え席に戻ると、次々に料理が運ばれてくる。

どの料理も美しく盛り付けられ、オクタヴィアが感心しながら眺めていると、斜め前に座るジゼル王太子が声をかけてきた。


「オクタヴィア王女、今夜の夜会にはいらっしゃいますか?」


「はい、出席いたしますが?」


「エスコートは、オーギュスタン殿下が?」


「?・・ええ、そうです」


未婚の女性を正式な夜会でエスコートするのは、家族か婚約者ぐらいだ。他に誰がいるというのだろう?不思議な質問だと思っているとジゼル王太子が驚きの発言をする。


「そうですか、では今夜は私があなたのエスコートをして差し上げます」


エラそうな態度で、まるで当然のことのように、誇らしげに言い放つ。


(え?噓でしょ!???何言っているの!?この方は・・・)


驚きすぎて言葉が出なかったが、横からザカライアが口を挟んだ。


「ジゼル王太子殿下、この国でも、エスコートを許されるのは家族か婚約者のみとされています。オクタヴィア王女に対して大変失礼なご提案かと存じますが?」


ジゼルは急に横から入ってきたザカライアを睨みつける。


「では、オクタヴィア王女を伴侶にすればいいのではないか?その顔と体つき、とても気に入った!」


ニヤニヤと笑いながらそう言う。

三カ国の会食の場で、一国の王女に対してこのような発言をするなど、あまりに無礼極まりない。隣に座るオーギュスタンも、穏やかな表情を捨て、険しく眉をひそめた。


「ほう、ジゼル殿下・・・それは、どういう意味ですか?・・・」


あまりにも、オクタヴィアをバカにした発言に、普段は温厚なオーギュスタンだが、本気で怒っている。

オクタヴィアは、兄の怒りが限界に達しつつあるのを感じた。


(この場で、喧嘩にでもなったら大変だわ!!どうしましょう!)


助けを求めるようにザカライアを見ると、彼もまた静かに怒りを滲ませているのがわかる。


(えええっ!これでは・・・・)


焦ったオクタヴィアは咳払いをし、まず兄に向き直った。


「ジゼル王太子殿下は、冗談でおっしゃっているのでしょう?

オーギュスタンお兄様、お料理を見てください。こんなに素敵なお料理、見たことがありませんね!!」


焦りながらでも、何とか場を収めようと必死のオクタヴィアを見たオーギュスタンは我に返る。


「そうだったな・・ああ、美味しそうだね・・」


と、微笑んだ。


(兄は大丈夫そうね、次は・・・)


「アービング公爵様、ファルマン帝国のお城に初めて入りましたが、お話以上にとても大きくて驚きました!イザベル皇妃様も思った通りとても素敵な方ですね!」


今度はザカライアに話を振る。


「オクタヴィア王女・・・・」


斜め前に座るジゼル王太子を完全に無視し、場を立て直そうとするオクタヴィア。

すると、今度はジゼルの横に座るミネルバ王女が、ザカライアに話しかけた。


「ザカライア様、今夜のファーストダンスは、ぜひ私と踊ってください」


突然の申し出に、オクタヴィアは驚愕する。

ふと、ザカライアが小さく舌打ちをしたような気がしたが、聞き間違いだろう?


「・・・ですからミネルバ王女、先ほども申し上げた通り、その時間は私にも公務があり、踊ることはできません。残念ですが、お断りいたします」


残念と言いつつ、きっぱり断るザカライア。


「まぁ、そんな・・・でも、イザベル皇妃に頼めば、公務の予定などすぐに変えられるでしょう?

大丈夫です、私からイザベル皇妃にお願いしてまいりますわ!」


(これは・・・私が口を挟むべきことではないわね。それにしても、ザカライア様、すごく困っているわね・・強引な王女だわ・・・)


オクタヴィアは、一旦会話から身を引くことにし、目の前の料理に手を伸ばす。

美味しい料理を楽しみながら様子を窺っていると、ミネルバは席を立ち、イザベル皇妃のもとへ向かった。

ザカライアを見ると、深いため息をつきながら俯いていた。


(ザカライア様はこれほどの美男なのだから、女性に言い寄られるのは仕方ないわよね。

私もザカライア様とのダンスを楽しみにしていたけれど・・お忙しいのなら仕方ないわね。

今回はスタン兄様とのダンスだけを楽しみましょう!)


あっさりザカライアとのダンスを諦め、食事に集中し始めたオクタヴィアだったが、またジゼルが再び声をかけてきた。


「オクタヴィア王女、何だか回りが煩いので、後ほど別室でお話でも?」


(またとんでもないことを言い出した!)


さすがに我慢できず、オクタヴィアはきっぱりと答えた。


「ジゼル王太子殿下。私は今回が初めての公務で、兄について学んでいる最中です。

お気持ちはありがたく頂戴いたしますが、そのような時間は全くありませんので、お断りさせていただきます」


「ふ~ん、断るんだ・・デューク王国の小国の王女が?よく考えたほうがいいよ」


確かに、ルカルド王国はデューク王国と比べれば国土がはるかに広い。本来なら、断る選択肢はないのかもしれない・・・。

そう考えていると、オーギュスタンが口を開いた。


「ジゼル殿下。そろそろオクタヴィアを揶揄うのをやめてくれないか?オクタヴィアは、我が国の国王が決めた相手としか踊らない。どうしても踊りたいのなら、王に許可をもらってくれ」


吐き捨てるように言う。

国王の許可が必要となれば、今から許可を取るのだけでも7日間はかかるだろう。このオーギュスタンの発言は、"絶対に踊らせない"という意味を持っている。


「ほう、オーギュスタン殿下もそんなことを言っていいのかな?」


ジゼルはオーギュスタンを睨みつけが、オーギュスタンは一歩も引かずに応じた。


「ええ、もちろんです。私は間違えたことは言っていませんし、すでにオクタヴィアの今夜のダンスの相手は決まってますからね」


「・・・そうか。人の親切心をそういう風に言うなら、わかった。後悔しても遅いからな」


そう捨て台詞を吐き、「すこし席を外す!」と言い捨てて、ジゼルは苛立たしげに席を立った。


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