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「ジゼル王太子殿下、ミネルバ第三王女様はじめまして、オクタヴィアと申します。よろしくお願いいたします」


ジゼルはふーん、と気の抜けた声を漏らし、ミネルバに向かって言った。


「・・・ミネルバ、挨拶を」


「はじめまして、オーギュスタン王太子殿下、ミネルバと申します。今夜の夜会で踊っていただけたら嬉しいですわ!」


オクタヴィアとオーギュスタンは二人とも目を見開く。


(えっ? 今、ミネルバ王女は私を完全にスルーしたわよね?しかも、スタン兄様をダンスに誘った!? こんな公の場で!?)


貴族社会では、女性からダンスに誘うのは禁忌とされる。まさか王族で、それを破る者がいるとは思わなかった。


「ハハハハ!!!ミネルバ、きっと後でお誘いいただけるだろうから、心配するな!」


サイラス国王がミネルバを指摘することもなく、愉快そうに笑う。

オクタヴィアがオーギュスタンを見ると、彼もまた引きつった笑みを浮かべていた。


(いろいろと失礼でおかしな王族だわ・・・スタン兄様からは自分が相手するから大丈夫と言っていたのは、こういうことだったのかしら・・・)


そう考えていると、奥の扉が開き、ファルマン帝国の皇帝陛下とイザベル皇妃が入室した。

その後ろから現れたザカライアの姿を確認し、オクタヴィアはほっとする。


(ザカライア様、夜会だけかと思ったけれど昼食会にもご参加されるのね。何だか安心するわ・・・)


ルカルド王国の面々と話していていろいろ削られた気がしたオクタヴィアは嬉しそうな笑顔を浮かべる。

それに気づいたザカライアも、穏やかに微笑む。


オクタヴィアは改めてアーロン皇帝陛下とイザベル皇妃に視線を向けた。


(二人とも、オーラが違うわ。想像していたより何倍も素敵なお二人だわ!)


イザベルは、まばゆい黄金の髪を高く結い上げ、胸元の開いたバラ色のドレスを纏っていた。シンプルながらも彼女のスタイルを美しく引き立てるその装いに、高貴とはこういうことかと納得させられる。


一方、アーロン国王陛下は、黒地に金の刺繍が施された豪奢な衣装を纏い、スラリとした優雅な佇まいながらも、国王としての威厳に満ちていた。


この場にいるのは皆、一国の王族である。しかし、国の規模によって序列が存在する。

近隣諸国の中でも最も大きな国の皇帝が最上位となるため、全員が立ち上がり、皇帝陛下と皇妃を迎えるべく一斉にお辞儀をした。


上座には皇帝陛下と皇妃が座り、横の列にオーギュスタン、オクタヴィア、その横にはザカライア、さらにその隣にはファルマン帝国の宰相が席に着く。


「本日は遠方より皇妃を祝うため、ファルマン帝国へお越しいただき感謝する。ひとときではあるが、近隣の国々との交流を深めてもらえればと思う」


アーロン皇帝陛下の言葉を合図に、昼食会が始まった。


オーギュスタンがオクタヴィアに目くばせをする。

オクタヴィアはすぐにオーギュスタンとともに皇帝陛下と皇妃のもとへ歩み寄り、恭しく頭を下げた。その途中、ルカルド王国の王族のほうに目をやると、ザカライアに何やら話しかけている様子が見えた。


「アーロン皇帝陛下、イザベル皇后様、デューク王国王太子オーギュスタン・リフタスと第一王女オクタヴィア・リスタスがご挨拶させていただきます」


「おお!オーギュスタン殿下、久しいな!益々凛々しくなって、デニス国王もさぞ自慢の息子であろう!王も王妃もお元気か?」


皇帝陛下は人懐こい笑顔で迎え、立ち上がると、オーギュスタンと固く握手を交わした。


「はい、変わらず元気でございます。本日は二人からイザベル皇妃様への祝いの品を預かってまいりました。直接お会いできないことを残念がっておりました」


その言葉に、皇帝陛下の隣に座っていたイザベルが微笑む。


「オーギュスタン殿下、お久しぶりですね。そして、オクタヴィア王女。今日は私の願いを叶えてくださってありがとう」


「とんでもございません。昼食会と夜会へのお誘いありがとうございます。イザベル皇妃様、この度はお誕生日おめでとうございます」


「まあ!ありがとう。オクタヴィア王女は昨日、ザカライアの邸で過ごされたそうですね?」


「はい、イザベル皇妃様のティールームで寛がせていただきました。重ねて御礼申し上げます」


「ふふ、あの部屋は私のお気に入りだったの、オクタヴィア王女が使ってくれてうれしいわ」


「森や川があるティールームなんて初めて拝見しました。とても素敵なお部屋でしたし、貴重な体験をさせていただきました」


「オクタヴィア王女は、ザカライアとは仲良くしてくださっているのでしょう?」


「仲良く・・・はい、そうですね。友人として側に置いていただいております」


「友人?」


「はい。いろいろな機会をいただき、私は友人になれたと思っております!」


オクタヴィアは胸を張って言い切る。


イザベルは驚いた表情を浮かべ、ふと視線をルカルド王国の王女と話しているザカライアへと向けた。


「そ・・・そうですか・・オクタヴィア王女。もしよろしければ、今夜の夜会でザカライアと踊ってあげてくださいね」


言葉を詰まらせながらも、イザベルは夜会でのダンスを促す。


「はい、そのように約束をしております」


ニコニコしながら答えるオクタヴィアを困惑の表情で皇帝陛下と皇后は見つめた。


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