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翌日は、またナージャが張り切り、朝日とともに起こされる。さすがに、お風呂は昨日の夜入ったので、今回はその分短縮だ。


(よかった・・・)


「姫様、ドレスの色は何色になさいますか?」


ナージャの明るい声が部屋に響く。


「・・・まかせるわ」


寝起きのため、まだ少しボーっとしているオクタヴィアはベットの端に腰掛けている。


「では、こちらの水色はいかがですか?」


チラリと、ナージャが持ってきたドレスを見る。

飾りが少なく、脱ぎ着がしやすそうだ。

今日は夜会用のドレスの試着も兼ねているのでちょうど良さそうだ。


「ええ、そのドレスで良いわ」


ナージャはドレスに合わせて髪飾りを選び始める。その様子を眺めながら、オクタヴィアは昨日のヤモリとの会話を思い出した。


(そういえば、昨日のドーガンさんの件、すでにお城に入り込んだと言っていたわね・・やっぱり、気になるわ・・なんとか、ザカライア様にお伝えできないかしら・・)


もし、自分が動物や昆虫と話せることをザカライアに打ち明けたら、どうなるのだろう・・。

想像すると、なんとも言えない不安に襲われる。


気味悪がられて、友達でいられなくなるのだろうか?

それとも、この能力を何らかの形で利用しようとするのだろうか・・?


・・・ザカライア様に限って後者はないと信じたい。


そんな考えが頭を巡るうちに、気分が少し沈んでしまう。


(やはり、この秘密は家族だけが知っていればいい・・・)


そう結論づけると、オクタヴィアは小さく息をついた。


(では、どうやって伝えようかしら?・・・)


考え込んでいると、ナージャが声をかけてきた。


「姫様、こちらのお花の髪飾りと、銀の髪留め、どちらがよろしいですか?」


ナージャは二つの髪飾りを手に持ち、悩んでいるようだった。


(とりあえず、今はナージャが頑張ってくれているのだもの。こちらに集中だわ)


「そのドレスなら、派手にならないシンプルな銀の髪留めがいいのではないかしら?」


「わかりました!では、アップにした髪に飾りましょう。姫様、ご用意ができましたので、こちらにおいでください」


オクタヴィアは、ドレスに着替えるために、立ち上がりナージャの元に向かった。




「ザカライア、お姫様、可愛かったね」


「・・・・」


「可憐な花って言うのかな?まるでお人形さんみたいだったね」


「ハロルド、今日は仕事が休みだろ。お前もどこかに遊びに行ってきては?」


「は?なに?追い出すの?お姫様が来るから?」


「たまの休みなのだから、楽しんだらどうかと言っただけだ」


「・・・俺も今日は予定があるから、後で出かけるよ。安心して。でも、今度お姫様に紹介してほしいな」


「なぜだ?」


「なぜって・・・俺ザカライアの片腕なんだけど?そのうち、ザカライアがお姫様と結婚したら、接する機会も増えるだろう?ザカライアの奥さんとは仲良くしたいんでね」


「奥さんっ!?」


「え?お姫様と、結婚したら奥さんじゃん?」


何を想像したのかわからないが、ザカライアは耳まで赤くなっている。


(あんなに、“好き好きオーラ”を放っておいて、この話題で赤面するとか、あのクールなザカライアは一体どこに行ったんだろうか・・・)


「それは・・まあ、もちろん望んではいるが・・・」


「ザカライアは、いい男だよ。俺が保証する。お姫様は可愛いから、早く思いを伝えておかないと、横から攫われちゃうかもしれないよ!」


「わかってる・・」


「そう言えば、あの王太子殿下はどうなの?美術館の時に、一瞬不穏な感じがしたけど、反対とかされてるの?」


(さすがハロルド、あの短時間の握手だけで、それを感じ取るとは・・・)


「よくわからないな・・・邪魔をしてくる時もあるし、協力してくれる時もある。敵なのか味方なのか判断がつかない・・・でも、デニス王は認めてくれてはいると思うが」


「王様が認めてくれているのなら、早めになんとかしないと!ザカライアらしくないよ」


「本当にな、こんな気持ちは初めてで正直戸惑っているんだ。しかも相手は隣国の王女だからな、簡単にはいかない」


「ほんとーっに!貴族って面倒くさいな!」


「そうだな、そこは仕方がない・・ただ、私もゆっくりするつもりはないよ」


「だよな!俺が見るに、お姫様もザカライアのことを好きだと思うぞ」


「うーん・・・そうだといいんだが・・そこの好きは、少し違うような・・」


(オクタヴィアは、たぶん私の事を仲良くなった友人ぐらいにしか考えてない気がする・・良くて親友か・・・)


「とにかくさ、頑張ってよザカライア、俺は早くお姫様と話してみたいよ」


「ハロルド、さっきから可愛いだの、紹介して欲しいだの、話したいだの、何を考えてるんだ?」


「いや、だって本当に可愛いじゃん? あの髪色に、あの瞳の色・・俺あんな色彩の女の子初めて見たよ。・・・なあ、商会でお姫様みたいな人形を作ったら、絶対売れると思わない?」


「いいや、ダメだ」


ザカライアはキッパリと言い切る。

だが、ハロルドは諦めずに続ける。


「それにさ、なんかすごく優しそうだし、かしこそうだし、女性向けの商品も今考えていて、意見聞いたら一緒に考えてくれそうだし・・・」


「王女を商売に巻き込むな」


「王女はね、でも、ザカライアの奥さんならいいんじゃない?」


「・・・」


ザカライアはため息をつきながら、ハロルドに向かってシッシッと手を振る。


「私はそろそろ準備がある。ハロルド、お前はさっさと出かけてこい」


「はーい、じゃあ今度紹介してよね!」


そう言いながら、ハロルドはようやく部屋を出ていった。扉が閉まるのを見届けると、ザカライアは大きく息を吐く。


(昨日は、久しぶりにオクタヴィアにあったが、さらに可愛くなっていたな。確かに、ゆっくりはしていられないな・・)


あの笑顔を思い出すと自然と口元が綻ぶ。


(とにかく、準備をはじめるか・・・)


椅子から立つと、執事のサムエルの名を呼んだ。


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