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その日は朝から、ナージャの気合の入れようは尋常ではなかった。


「姫様、本日はどちらのドレスにいたしましょう!!」


すでに部屋には訪問用のドレスがずらりと並べられている。


(すごい量だわ・・・どこからこんなに出してきたの?・・私が寝ている間に準備したのよね・・・?)


「ナージャ・・・まだ夜明けにもなっていないのだけど・・・・」


窓の外はまだ暗く星も見えている。


「姫様、本日は公爵様のお屋敷にご招待されているのですよ?お昼にはお迎えが来られるのですよね?でしたら、この時間から準備いただかないと間に合いません!」


「・・・そんなわけないでしょう?先日の夜会の時だって、ここまで朝早くなかったわよ?」


「それは、開始時間が違うからです!」


「夜会用のドレスを着るわけでもないし、私はもう少し眠るわ・・・」


そう言って再び布団をかぶろうとしたが、ナージャは容赦なくそれを引っ張り剥がした。


「ナージャ・・・」


「姫様、これは、いわゆるデートです」


「デート?違うわ、ただのお互いの国に対する勉強会のようなものよ」


「いいえ!立派なデートです!」


ナージャは朝から興奮気味に声を張り上げる。


「もう、ナージャったら・・・本当に違うのよ・・」


「何をおっしゃいますか!昨日いただいたネックレスを見てください!こんなに大きな宝石ですよ!?殿方が気のない方にこんな素晴らしい宝石をプレゼントすることなんてありません!」


ナージャの声がどんどん大きくなっていく。


「色々違うけど・・・・まぁ、いいわ。わかった、もう起きるから」


髪をかき上げ、ふわぁ〜っと欠伸をしながら起き上がる。


「はい、では、お風呂の準備が整っておりますので、どうぞ」


オクタヴィアは驚愕する。


「こんな早い時間からお風呂・・・・・・?」


ナージャは準備のため、鼻歌を歌いながら風呂場へ消えていった。


(・・こうなると、ナージャは止まらないわね・・・昨夜だって急に、ナージャが張り切るものだから、眠るのが遅くなってしまったのに・・ナージャは言い出したら聞かないし。仕方がない、ナージャが楽しいならいいか・・・)


オクタヴィアはまだ暗い外をちらりと見てため息をつき、サイドテーブルの水を一口飲んでから、ナージャの後を追った。



「おはよう!オクタヴィア!!」


「おはようございます・・・・スタン兄様・・・」


「なんだ、元気がないな?」


「ナージャが張り切りすぎて、夜は遅く、朝はとても早かったんです・・・・」


ふらふらと食堂に入ってきたオクタヴィアを見て、オーギュスタンは驚いた。


「・・・それは・・・うん、かわいそうに・・・」


笑いをこらえながら呟く兄を、オクタヴィアはじっとりと睨みつけながら席に着く。


「お父様、お母様、おはようございます」


正面に座る父と母に挨拶をすると、二人とも穏やかに返した。


「おはようオクタヴィア」


それを合図に、侍女たちが動き出し、朝食の準備が始まる。


「今日は、オクタヴィアにとって初めてのご訪問ですね」


ベロニカが微笑みながら言う。


「はい、そのおかげで夜が明けないうちに起こされました・・・・」


ナージャの上機嫌な顔を思い出し、恨めしく思いながら答える。


「ふふふっ・・・・」


そんな娘の様子に、ベロニカは楽しそうに笑った。


「お母様、笑い事ではありません!」


憤慨したオクタヴィアが抗議すると、ベロニカは微笑を深める。


「昨夜、私が執務室から寝室に戻る時には、すでにナージャはあなたの部屋にドレスを運んでいたようよ・・ふふっ・・」


「え・・・昨日から?・・・ナージャ寝ていないのでは!???」


「・・・そうかもしれないわね。ナージャは、主思いの良い侍女ね」


「えぇ、まぁ・・・・それはありがたいことなのですが・・・」


(それと、これとは話が別だけど・・・)


パンをちぎりながら、オクタヴィアは深いため息をつく。


「それはそうとして・・・オクタヴィアはいつからアービング公爵と仲良くなったのですか?」


「仲良くなったかどうかはわかりませんが、夜会で踊ったのと、孤児院をご案内したぐらいです」


「昨日は、随分と立派な贈り物をいただいたとか?」


「はい、正直困ってしまいました」


「あとで見せてもらえる?」


「はい、なんならお母様が持つ方がふさわしいかと・・・・」


「あら、それはダメですよ、贈り物は贈った方の気持ちが込められているのですから、無下にするようなことになります」


「冗談です・・・・」


本当は冗談ではなかったのだが、まだ笑っている母を恨めしそうに見ながら、パンをちぎった。


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