表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/101

12

翌日の昼過ぎ、庭に一匹のツノ鹿が現れた。

オクタヴィアはベンチから立ち上がり、その鹿へと歩み寄る。


「こんにちわ、ツノ鹿さん」


{オクタヴィア、ドーガン、ナカマトイル}


「・・・まだ、ドーガンさんの仲間がいるのね。何人ぐらいかしら」


{イッショニイルノハ、ゴニン}


「五人・・」


{ファルマンノシロニ、ムカッテイル}


「・・ファルマン帝国のお城へ?」


なぜ?


「・・何のために?」


{ファルマンニモ、ナカマ、タクサンイル}


「・・・!」


(ファルマン帝国に仲間がいる? 何かを企んでいるの?)


胸がざわつく。


何か、嫌な予感がする。


(どうしよう・・?)


この情報をスタン兄様に伝えたところで、すでにデューク王国の手を離れた問題だ。

だが、もしファルマン帝国で何かが起こるとしたら・・・?


(私にできることは・・)


ふと、頭に浮かぶのは昨日出会ったばかりのアービング公爵。


(・・・でも、公爵様にこの話を伝える理由がないわ)


手紙を書く?

けれど、情報の出どころを明かせないのに、ただ「ドーガンが動いている」と伝えても信じてもらえるはずがない。

それに、まだ「何が起こるか予測できる段階」ではない・・。


{オクタヴィア、ダレカクル、モウイク}


耳をピクピク動かして人の気配を察知したツノ鹿は森に向けて駆け出す。


「来てくれてありがとう。気を付けて」


(どうしましょう・・・何か良い方法はないのかしら)


オクタヴィアはベンチに座ってひとり悶々と考えていると、剣を携えて庭に出てきたオーギュスタンに声をかけられた。


「ヴィア、何を悩んでいるんだい?」


「スタン兄様、それが・・」


先ほどのツノ鹿との会話と、昨日偶然会ったアービング公爵様の話をする。


「驚いたな、アービング公爵の滞在延期は聞いていたけど、ヴィアと孤児院で会ったとは」


「アーヴィング公爵様は自領での孤児院の運営のために、熱心にこちらの孤児院を視察されていましたわ」


ふと、オーギュスタンを見るとなにやら考えている。


「・・・・」


「ヴィア・・・」


「どうされましたスタン兄様?」


急に真面目な顔でオクタヴィアを見るオーギュスタン。


「ヴィアの気持ちもわかるが・・・・ドーガンの件は、すでにデューク王国の手を離れている。これ以上干渉しない方がいい。」


「それは・・わかっています。けれど、私はファルマン帝国で、ドーガンさんが何かをやろうとしていると知っています・・・。放っておくことができません」


オーギュスタンは、そっとオクタヴィアの肩に手を置く。


「ヴィア、これ以上は駄目だ。兄としてこの件にこれ以上ヴィアが関わるのは許容できない。ヴィアの特殊な能力が他者に知れてしまう事も避けたいし、何よりも盗賊団と関わるなんて危険すぎる」


彼の言葉に、オクタヴィアは手をぎゅっと握りしめた。

オーギュスタンの意志は固い。


(・・スタン兄様がこう言う以上、これ以上はどうしようもない・・)


「ええ、わかったわ。・・・ごめんなさいスタン兄様」


「・・わかってくれて嬉しいよ」


(仕方ないわ・・ナージャは特別な力だと言ってくれるけど、こうなっては私は何もできない・・なんて歯がゆいの)


オクタヴィアの悲しそうな顔をオーギュスタンもまた、辛そうに見る。


(オクタヴィアの不思議な力は、時にオクタヴィア自身を追い詰めてしまう・・あの時のように・・・)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ