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ザカライアは、一瞬息が止まった。


目の前の王女がとても嬉しそうに笑ったのだ。

可憐で、柔らかく、太陽の光を受けた宝石のように輝く笑顔だった。


その一瞬の光景に、ザカライアは衝撃を受けた。

一瞬の出来事で、ザカライアも気持ちが追いつかず、思考が止まる。


「・・・・・」


(ネオンブルーの瞳がキラキラして・・・)

(暖かな陽だまりみたいな笑顔だ・・)

(これは、以前姉が言っていたアレか?瞬間で恋に堕ちるとか?あるのか、そんな事が?本当に?・・)

(だが・・もう一度、その笑顔を・・)


次々と浮かぶ言葉は、支離滅裂だった。

思考は混乱し、胸がざわつく。


(王女が何か言っている・・会話を理解しろ!返事を返さないと!!)


内心慌てながらも、なんとか気持ちを立て直す。


「・・あぁ・・申し訳ございません・・少々考えごとをしておりました・・。実は、今朝デニス王にお伝えしたのですが、急遽用事ができまして、滞在を数日延ばすことになりました。ですにので、今日は時間がございます」


なんとか返事をし、おかしな事を言わなかったか頭の中で確認し、冷静になれ!と自分を叱咤する。


(なぜ、オクタヴィア王女が気になっていたのか……)


(そうか……私は王女のことを……)


ザカライアは、今まで経験したことのない思いを持て余し、密かに苦悩した。

オクタヴィア王女の笑顔が脳裏に焼きつき、離れない。

それが何を意味するのか、ザカライアはまだ言葉にできずにいた。


孤児院の案内を終えると、アービング公爵様は寄るところがあるのを思い出したと言い、足早に帰って行った。


(どうしたのかしら?先程はお時間あるような事を言っていたのに・・・)


「姫様、アービング公爵様、凄かったですね〜 !!」


ナージャが興奮気味に言う。


「お噂通り、この世のものとは思えない美男でした!シスターもお顔を赤くしたり青くしたり、大変でしたね、あの男前なら仕方がないですよ〜」


ナージャはシスターをそう言いながら慰めている。


「えぇ、本当に。とても誠実そうな方だったわ」


「噂では、女性を近づけさせないと聞いていましたが、そんなことなかったですね。姫様とは普通にお話ししておりましたし!」


「そうね、自分の領地の孤児院のために、わざわざ他国で勉強しようだなんて、なかなかできることではないわ」


「シスター、少し遅くなってしまったけれど、そろそろ皆でお昼ご飯を食べませんか?」


「はい、オクタヴィア王女様。それでは子どもたちと準備してまいります!」


「ナージャ、お願い」


「はい、姫様。シスター、姫様から子どもたちへの差し入れがあります。馬車から持ってきますのでご一緒にご準備させていただきますね」


「オクタヴィア王女様、ナージャ様、いつもありがとうございます」


部屋から二人が出て行ったので、ソファーに座ってひとやすみする。


{コンニチワ}


ふわりと窓から一匹の蝶が部屋に入ってきてオクタヴィアの肩に留まる。

部屋の扉に護衛が控えていたので、聞こえないように小さな声で返事をする。


「こんにちは。今日はいいお天気ね」


{ニワノ レモン ハナ サイタ}


「まぁ、やっとレモンの木にお花が咲いたのね。あとで見に行くわ」


羽を震わせて飛んでいく蝶を目で追いながら、庭の木々を爽やかな風が優しく揺らしていくのを眺める。


(今日は、子どもたちとお庭で遊ぼうと思っていたけれど、公爵様のご案内で予定が変わってしまったわね・・・)


しばらくそうしていると、食堂のほうからナージャの声が聞こえてくる。


「姫様~、昼食の準備が整いましたので、食堂へお越しください~」

「今行くわ」


オクタヴィアは、子どもたちの賑やかな声が聞こえる食堂へ護衛とともに向かった。


初日にある程度まとめて読んでいただけるように10話連続投稿いたしました。

次回以降は一気にアップできませんが頑張って投稿する予定です。

よろしくお願いします。

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